登場人物(ダブり含む)
神谷芳雄,アフロディテのウエートレス弘子,アフロディテのボーイ,アフロディテの別のウエートレス,人間豹・恩田,犬,恩田老人,豹,江川蘭子,浜町の待合の女中,レビューの見物たち,買収された道具方の男,コーラスガールの花売り娘たち,身軽な若者道具方の兄い,劇場の係り員,劇場の道具方など七人の宿直員,神谷家女中,蘭子のお母さん,熊井,蘭子の親友のレビュー・ガールS,吉崎はな,高梨家執事,高梨家のお嬢様,運転手,小林少年,明智小五郎,明智文代,高梨家運転手,柳屋,神谷家書生,運送屋,明智の犬のS,トラックの運転手みたいな男,乞食みたいな男,吉公,他のルンペンたち,明智家女中,恩田の手下の運送屋たち,警視庁捜査一課の恒川警部,恒川夫人,名犬シャーロック,お医者さん,二天門の敷石の乞食,浅草公園のルンペンたち,ロイド目がねの白ひげの大道易者のお爺さん,浅草公園の人々,大山理髪店の主人,土佐犬の熊,牝豹,「花やしき」の支配人,Z曲馬団のチンドン屋虎男,黒いハッピを着た男,浅草付近の仕出屋の主婦など,恩田の手下の大男,大山ヘンリー,Z曲馬団の人たち,Z曲馬団の見物たち,その他警察関係者など
主な舞台
京橋に近いとある裏通りのカフェ・アフロディテ,荻窪と吉祥寺の中ほどの森と怪屋,浜町の待合,大都劇場,蘭子の家,築地の高梨邸,警視庁,麻布区竜土町,神谷芳雄邸,芝浦の鉄管長屋,九段の濠端,浅草公園周辺,六区の交番,映画街,大東京西南の一隅のM町三つまたのほこりっぽい,古道具市で有名な広場のZ曲馬団,相模半島の沖遙かの海上
作品一言紹介
人か獣か。猫属の舌と眼球を持つ恐怖の怪物、人間豹。これは決して比喩ではない。まさに実際なのである。外見を客観的に判断して豹の血が入っているようにしか見えないのだ。この恐るべき怪物・人間豹恩田と名探偵・明智小五郎の闘いがメインステージ。さしもの明智小五郎も、この人間を超越した怪物相手では、自身のルンペン地獄、屈辱監禁、そして新妻の文代さんを奪われ、怪奇熊の恐怖を味わわせてしまうなどまさに敗色も同然の失敗の連続という屈辱。やはり名探偵と言えども、本格的要素のある人間の犯人と闘うことは出来ても、相手が文字通り怪物ではいつもと勝手が違ったというのだろうか! さて、このSFチックな難敵に我らが明智夫妻の運命は如何になったか!? なお、この物語は全然本格探偵小説的要素はないが、単なるスリラー+SFファンタジーとしては充分すぎるほど面白い作品だ。特に文代さんファンはある意味『魔術師』『吸血鬼』以上に必見である。
ネタばれ感想
小笠原功雄さんが「ネタばれ感想掲示板」に書き込まれた記事をリンクしておきます。「創元推理文庫版「人間豹」を読む」です。作品を読まれた方のみご覧下さい。
加えて、(ネタばれ感想コーナーの「「恐怖王」が残したもの前編と同後編」です。「恐怖王」、「妖虫」、「人間豹」のネタバレを含みます。未読の方は読まないようにして下さい。)
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【猫属の舌】【闇にうごめく】【怪屋の怪】【檻の中】【猫と鼠】【二匹の野獣】【怪屋の妖火】【江川蘭子】【仮面時代】【消え失せる花売娘】【暗黒劇場】【花吹雪】【舞台裏の怪異】【虎】【悪魔の足跡】【屋根裏の息遣い】【蘭子の女中奉公】【覆面令嬢】【明智小五郎】【名探偵の憂慮】【奇怪なる贈り物】【第二の棺桶】【獣人対獣人】【鉄菅の迷路】【裏の裏】【黒い糸】【名犬シャーロック】【都会のジャングル】【公園の怪異】【豹盗人】【虎男】【熊】【恐ろしき借家人】【喰うか喰われるか】【金口の巻煙草】【恐ろしき猛獣団長】【Z曲馬団】【美しき半人半獣】【大空の爆笑】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【闇にうごめく】→【やみにうごめく】,【檻の中】→【おりの中】,【猫と鼠】→【ネコとネズミ】,【消え失せる花売娘】→【消えうせる花売り娘】,【花吹雪】→【花ふぶき】,【虎】→【トラ】,【屋根裏の息遣い】→【屋根裏の息づかい】,【第二の棺桶】→【第二の棺おけ】,【虎男】→【トラ男】,【熊】→【クマ】,【喰うか喰われるか】→【食うか食われるか】,【金口の巻煙草】→【金口の巻タバコ】
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「講談倶楽部」昭和九年五月号より翌十年五月号まで連載したもの。人間が人間に化ける話はいろいろ書いてしまったので、今度は人間がけだものに化ける怪異談を書こうとしたのであろう。例によって一貫した筋が熟していないまま書きはじめたので、全体としてチグハグな感じだし、毎月執筆しているうち、或る月はちょっと面白い筋が浮かんだかと思うと、或る月はひどくつまらないという、例の私のくせが露出している。しかし、当時の娯楽雑誌はこういう子供らしい読みものをも要求していたので、私の長篇はたいへん需要が多かったのである。