登場人物(ダブり含む)
妖虫,相川守,相川繰一,相川珠子,殿村京子,ソロモン食堂の二人の紳士(青目がねのひげ男ともう一人),谷中天王寺町の煙草屋のおかみ,空家の鳥打帽子の目がね男,山印,春川月子,桜木町?の派出所の二人の警官,本署の捜査主任と二人の私服刑事,金杉の曲芸団の一寸法師の小娘、木戸番の老人などの団員たち,相川家老女中含む三人の女中と三人の書生,三笠竜介,三笠家の拳闘選手のような助手の男のトム,にせ探偵など赤サソリの一味たち,老練の四人の警官たち(私服二人と制服二人),伝馬船の船頭の女房とその亭主,水上署の警官二人,木挽町の人たち(老ルンペン,野良犬,両側の商家の主人やおかみさん、小僧さん、交番の警官など),銀座裏の黒山の人だかりと若い一人の警官,新橋近くの工夫三人,R洋服店前の案山子のようなインパネス男と紳士などの黒山の群集,Rの店員二人,桜井品子,麹町外科医院の関係者(事務員,看護婦,院長の医学博士),桜井栄之丞,桜井品子の母夫人,警視庁の箕浦捜査係長(警部),桜井家書生や女中たち,Sビルディング事務員,新聞配達夫,Sビルディングの小使い爺さん,他丸の内オフィス街に集まった人々,桜井家に来た警視庁捜査課の警官四人,品子の猫,他警察関係者など
主な舞台
日本橋区の或る川沿いの淋しい区域にあるソロモン食堂,谷中の天王寺町,上野公園,桜木町,谷中天王寺町の墓地の北側にある煉瓦塀の空家,その近くの派出所,金杉の大通りの見世物小屋周辺,相川邸(銀座近くか??),麹町区六番町の三笠竜介の事務所兼邸宅,赤サソリの自動車内,三河島近くの幽霊屋敷及び八幡の藪知らず,大川の浜町河岸に近い或る倉庫の岸,木挽町の裏通り,銀座裏のとある横町の旭湯周辺,銀座通りの新橋に近いとある横町のマンホール周辺,銀座通りのR大洋服店,四谷の桜井邸,麹町外科医院,丸の内のオフィス街,渋谷の向こうのS町
※(ちょっとした“うんちく”)
1.谷中天王寺町とは、現在で言う谷中7丁目周辺。ちなみにその近くの派出所は、天王寺町の北側ということから推定して、荒川区との区境に当たる御殿坂派出所と考えられる。
2.桜木町=上野桜木1丁目、2丁目周辺。
3.乱歩のちょっとした記述間違いだと思うが、省線の三河島駅は大宮方面ではなく、水戸方面である。これは現在でも同様のこと。
4.三笠探偵事務所の麹町区六番町は、現在の千代田区六番町であり、番地自体は同じである。
作品一言紹介
なぜかどういうわけかミス・ニッポン、ミス・トウキョウなど美女ばかりを狙う恐怖の殺人鬼、妖虫こと赤サソリの一味。まっ赤なサソリの死骸を悪魔の紋章として使用し、全国を恐怖の渦に巻き込む恐るべき自己顕示欲。その、時にはゾッとするような人並サイズの赤サソリまで持ち出すその猟奇犯罪の悪魔、赤サソリ一味に、主人公の「探偵さん」の相川守青年、そして老探偵三笠竜介が挑むのだが、これが、これが、箱の秘密などを駆使する賊の前に大苦戦。さて、この奇々怪々の「妖虫殺人事件」の恐るべき真相に到達出来たのか、そしてそれは如何なるものだったか!?
ネタばれ感想
(ネタばれ感想コーナーの「「恐怖王」が残したもの前編と同後編」です。「恐怖王」、「妖虫」、「人間豹」のネタバレを含みます。未読の方は読まないようにして下さい。)
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【青めがねの男】【恐ろしき覗きカラクリ】【赤いサソリ】【悪魔の紋章】【毒虫の餌食】【闇に浮く顔】【名探偵】【人罠】【闇を這うもの】【七つ道具】【妖虫の触手】【魔法の杖】【絶体絶命】【藪の中の美少女】【魑魅魍魎】【罠と罠】【動く岩】【燃える迷路】【八つ裂き蝋人形】【銀座の案山子】【サソリの胸飾り】【第三の犠牲者】【病探偵】【秘密函】【サソリが! サソリが!】【怪しの物】【ビルディングとサソリ】【もぬけの殻】【大魔術師】【怪老人とトランク】【この部屋に犯人が】【怪しの者】【悪魔の正体】【滴る血潮】【老探偵の勝利】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【恐ろしき覗きカラクリ】→【恐ろしきのぞきからくり】,【毒虫の餌食】→【毒虫のえじき】,【闇に浮く顔】→【やみに浮く顔】,【人罠】→【人わな】,【闇を這うもの】→【やみをはうもの】,【魔法の杖】→【魔法のつえ】,【藪の中の美少女】→【やぶの中の美少女】,【罠と罠】→【わなとわな】,【銀座の案山子】→【銀座のかかし】,【秘密函】→【秘密箱】,【もぬけの殻】→【もぬけのから】,【この部屋に犯人が】→【このへやに犯人が】,【滴る血潮】→【したたる血潮】
※※創元推理文庫版では、第一章が、角川版の「青めがねの男」ではなく、「青目がねの男」だった。
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「キング」昭和八年十二月号より九年十一月号まで連載したもの。相変らずの荒唐無稽小説だが、真犯人とその動機はちょっと珍らしい着想であった。赤いサソリが怪犯人の象徴として登場する。しまいには人間がその中へはいれるほどの巨大なブリキ製の赤サソリが、丸の内のビル街や、富豪邸の日本座敷に横たわるようなことになる。この小説を書き出して間もなく、満州の読者からかさばった封書が届いた。なんだろうとあけてみると、中から本物のサソリの死骸があらわれて、ギョッとさせられたものである。「当地のサソリの現物をお目にかけます」というのであった。この作は映画になっていないが、戦後、「妖虫」の着想を取り入れて少年もの「鉄塔の怪人」を書いた。それにはサソリの代りに巨大な黒いカブトムシを登場させたが、昭和三十二年、東映でこれを映画化し、巨大なカブトムシの作りものを、幾つも画面に登場させたものである。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『黒蜥蜴』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『妖虫』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『妖虫』
創元推理文庫・乱歩傑作選『妖虫』
(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・