「江戸川乱歩原案の映画3作品を連続公開「RAMPO WORLD」」の第三弾「白昼夢」を観てきました。関連サイトは、
こちら や
こちら「湖畔亭事件」と「白昼夢」原案。
内気で、他人が外では見せない裏の顔を覗き見ることに無上の喜びを感じる、塾で物理の講師をしている青年が、彼の住むマンションの真下の階に、物理学者の夫婦が越してくると、いかにしてか、床から階下に穴をあけ、監視カメラと盗聴装置でその行動を覗き続けます。カメラのズームを切り替える「カチカチ」という音がBGM。ありふれたメロドラマが展開していると、やがて修羅場となり、夫が妻を殺してしまう。しかし一夜明けると、部屋には妻だけがいて、階上の主人公の部屋にやってきて「見つけて」と。
そして湖畔に誘い、ボート上で「探して」と告げて、彼が気付いた時は、消えてしまっている。そして「白昼夢」というタイトルカットが入ります。
しかし、夫婦の部屋に駆け付けるとそこには、また妻がいました。そこでキスをされ、その時、やはり彼女は死んでいる、と直感します。彼が眠り込んでしまい、目覚めるとまた彼女は消えてしまう。彼女がなぜ夫に殺されたのか「探す」べく彼は、あちこち走り回り、歩いている夫を見つけ出し、理由を問います。夫は、妻から「逃げられない」と思ったからだ、と。主人公は、それが理解できない、自分は見ていただけだから、ただ「奥さんがあなたを愛していたことだけはわかります」と言うと、夫は大笑いし始めます「なんだそれ」と彼をあざ笑い続けるのです。アップになった彼は監視カメラを覗く時のように片目を手で塞いで、笑い続ける夫を見つめるのです。
これで終わりです。まさにインディーズムービー?現実か真実か幻想か、一切分からないままで、終わりです。
只今、youtubeの「公式」日活フィルム・アーカイブで乱歩原作、井上梅次監督、渡辺剣次脚本(※原作「十字路」の原案者であることは皆さんご存知ですよね)の「死の十字路」プレミア公開と称して無料で観れます。
私も以前神保町シアターで観たことあるんですが、井上梅次監督の演出が素晴らしい。当時の世相、風俗をリアルに再現しているだけでなく、絵作りが、現代のサスペンスドラマ、平たく言えば、今は無くなったようですが、二時間ドラマ、火曜サスペンス劇場と比べても全然遜色ない見応えがありますよ。
先にお伝えした「江戸川乱歩原案の映画3作品を連続公開「RAMPO WORLD」」の第二弾「蟲」を観てきました。関連サイトは、
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こちら AIらしき女性ボイスのナレーションでドラマは始まります。
十年間引きこもり同然の映画監督、柾木愛之助は、話し相手はAIだけ。
所謂芸術家肌で他人の前では内気なのに、気を許した相手には、芝居や映画について理屈っぽい毒舌を吐く(※つまり傍目にはめんどくさい奴です)。彼の親友でフリーの映画プロデューサー?らしい池内光太郎に誘われて、ある小劇団の芝居を観て、その主演女優、木下芙蓉に一目惚れ、自分のミューズだと思い込んで新作のシナリオを書きます。
しかし、池内にはこれでは一般受けしないと書き直しを要請され、さらに、自分の気持ちを語り、シナリオを見せた木下にも嘲笑されてしまいます。
そこにさらに、池内のストーカーだと自称する「小林」となのる女性が現れ、池内と木下は関係している、と暴露し、池内にあの女は邪魔だ、何とかしろ、私は池内にいつも楽しくいてほしいのだ、と奇妙な要請をします。
小林に背中を押されるように、再度木下と会った柾木は、自分の映画と俳優としての木下への気持ちを理解されず、揶揄され、勢いで彼女を絞殺してしまい、その死体を、自分の家に運びます。
そして柾木は、木下の死体を相手に、一人芝居のように、撮影を始めます。死体に化粧を施し、演技をつけ、やがて、ミレイの「オフィーリア」の絵のように装飾し、ときに行き詰まると、AIボイスが彼を促し、やがて絵の具を何色も使って毒々しい色使いで死体を塗りたくりました。
すると柾木と木下(実はAIか?)が心を通い合わせた対話をし、柾木は姿を消します。
一方、柾木がいなくなり、失意に陥る池内、実はストーカーの存在にも気付いていました。隠しカメラ?に向かって「こんな僕を見てもつまらないだろう?」
小林は、池内の前に姿を現し、そんな寂しいあなたを見たくなかった、と叫んで、ナイフで彼を襲います。
場面変わって、柾木の家に、腹にナイフが刺さったままやってきた池内は、木下の死体を見て、倒れました。
※、原作の狂気を「ストーカー愛」で現代に脚色しつつもリアリズムではなく、閉鎖的で幻想的抽象的な表現で描いた空間劇だと思いました。柾木の家「だけ」が、いかにも昭和を彷彿とさせる木造建築でレトロ趣味を漂わせたのも、他の場面は、現代であるのと対照的で、視覚的に面白いものでした。