悪魔の紋章


登場人物(ダブり含む)
宗像隆一郎博士,木島助手,小池助手,復讐者?,中村捜査係長(警部),川手庄太郎,川手雪子,川手妙子,川手家の若い女中,衛生展覧会の主任,川手家書生,お化け大会の営業主たち,お化け大会の近くにいた老人,近藤,山本始,Nの老人夫婦,佐藤恒太郎(ある平凡な下級社員),あるカフェの女給,北園竜子,お里,林助手,須藤,明智小五郎,捜査課の徳永,小林少年,山本京子,刑事部長,捜査課長,その他警察関係者など

主な舞台
丸の内〈宗像研究所,大平ビル〉,麻布区〈川手邸,神社の森,竜土町:明智邸〉,U公園(上野公園?),吾妻橋近くの隅田川(浅草近く),麹町区内の屋敷町,東京駅,保土ヶ谷駅,(東神奈川駅,八王子駅),山梨県甲府近くのN(韮崎??),青山高樹町〈17番地,その近くのある神社〉,日本橋区のM大百貨店(三越あるいは松屋か!?),京橋区のF―レストランなど

※(ちょっとした“うんちく”)
明智小五郎宅のある麻布区竜土町の現在の住所は港区六本木七丁目の一部(6,7,8,9,10,11,12,13番地周辺)である。
また青山高樹町はこのお話の時点では赤坂区であり、麻布区と渋谷区の区界に位置していた。なお現在の住所は港区南青山六丁目,七丁目の大部分に当たる。

作品一言紹介
物語の冒頭で、明智と並び称される名探偵の宗像博士の木島助手が三重渦状付きの指紋の靴ベラと白紙の封書を残して、謎の毒殺を遂げてしまった。それは川手氏への脅迫状事件の犯人の仕業に相違なく、また小池助手の活躍もあり、犯人(復讐者)の特徴も小柄で華奢な黒目がねということも突き止めた。しかし復讐者の川手氏一家への復讐は残虐かつ留まるところを知らず、当初川手氏が依頼しようとした明智小五郎名探偵が朝鮮へ出張中ということもあり、後発の名探偵宗像博士と謎の復讐者が熾烈な闘いを演じていく。事件のたび事に三重渦状という悪魔の紋章を残していくこの怪事件の解決はあるのか!?これは壮絶な復讐物語である。

ネタばれ感想
(ネタばれ感想の「悪魔の指紋地獄の独自性」です。当然ですが、未読の方は読まない方がいいです。あと、「蜘蛛男」と「双生児」のネタばれもしているので、絶対に未読の方は読まないように)

章の名乱舞(講談社の推理文庫参照)
【劈頭の犠牲者】【三重渦状紋】【生ける蝋人形】【黒目がねの男】【第三の餌食】【魔術師】【名探偵の失策】【掃除人夫】【お化け大会】【立ち上がる骸骨】【千人の宗像博士】【轢死者の首】【黒い影】【迷路の殺人】【鏡の魔術】【復讐第三】【異様な旅行者】【恐怖城】【地底の殺人】【生体埋葬】【錫の小函】【怪人物R・K】【妖魔】【暗闇にうごめくもの】【女怪】【明智小五郎】【眼帯の男】【生きていた川手氏】【明智小五郎の推理】【悪魔の最期】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【黒目がねの男】→【黒めがねの男】,【第三の餌食】→【第三のえじき】,【掃除人夫】→【そうじ人夫】,【立ち上がる骸骨】→【立ち上がるがいこつ】,【暗闇にうごめくもの】→【くらやみにうごめくもの】

著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
 新潮社から出ていた娯楽雑誌「日の出」の昭和十二年九月号より十三年十月号まで連載したもの。いつも言うように、私の連載長篇は、完全に筋ができていないまま執筆をはじめ、月々の面白さを主として、書きついで行ったもので、今読んでみると、ところどころ面白い着想がないでもないが、全体として整った感じを受けないのは、そのためである。私は探偵が犯人であったというトリックをたびたび使っている。ルルウの「黄色い部屋」とルブランの「813」の、あのずばぬけたトリックの快い記憶が、いつまでも大きく私の心を占めていたからであろう。こういう純娯楽雑誌の連載ものは、ルブランと涙香を混ぜ合わせた味でというのが、私の狙いであったから、したがって、ルパンものの着想を借用しているような個所も少なくないのである。
 この巻では、そういう純娯楽読みものはこの一篇だけで、あとの五篇の中、短篇は、私の作としては力作に属するもの、またはそれに準ずるようなものばかりが集まっている。

※(註)上の乱歩による作品解説は、昭和36年からの桃源社版江戸川乱歩全集に載っていたものを、河出文庫が再録してるもので、ゆえに「この巻〜」の「この巻」とは昭和37年12月発刊の第14巻のことである。ちなみにこの第14巻に収録されている残り5つの短篇というのは『石榴』『赤い部屋』『踊る一寸法師』『灰神楽』『疑惑』である。

比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『悪魔の紋章』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『悪魔の紋章』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『悪魔の紋章』


(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・


長篇小説作品集に戻る乱歩の世界トップへ戻る