屋根裏の散歩者


登場人物
郷田三郎,明智小五郎,遠藤,北村など

主な舞台
東栄館など

作品一言紹介
本作は奇妙な味。主人公の郷田三郎は、一種の精神病、何に対しても生き甲斐を感じず、すぐに退屈を感じてしまうような男であった。それが明智小五郎と知り合いになって興味を持つようになった探偵小説的犯罪嗜好的遊戯にも結局は長持ちせず飽きてしまっていた。その郷田がふとしたことから、押入から上に昇り屋根裏を徘徊する趣味を持つようになってしまったのだ。しかしその屋根裏の散歩に取り憑かれた郷田の進む道はカタストロフィー……。奇妙な世界から現実への導き人・明智の名推理が冴え渡るのである。よくいえば、屋根裏の怪奇変格+名推理という本格、悪く言えば、水と油のアンバランスな作品とも言えるのだろう。

ネタばれ感想
ネタばれ感想掲示板で書き込んだ「屋根裏の散歩者」は純粋怪奇小説として発表された方が傑作だった?」です。黄光明さんとななこさんの書き込みも含んでいます。当然ですが、未読の方は読まないで下さい。あと、「人間椅子」のネタばれもしているので、絶対に未読の方は読まないように

章の名乱舞(参照はちくま文庫)
1から8まで

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
異章題は無し

著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「新青年」大正十四年八月増刊に発表。いわゆる初期の短篇に属するもので、「人間椅子」などと共に、奇抜な着想で好評を博した作品。当時の批評家平林初之輔さんは、自分の家の天井裏を歩きまわって、その体験を小説に書いた作家なんて、古今東西に例がないだろうと、私が不思議な作家であることを強調したものである。そういう意味で古い読者の記憶に残っている作品の一つだから、私の代表作の短編集には、いつも入れられている。しかし、英訳短篇集にははいっていない。西洋人には天井裏というものがわからないだろうと思ったからである。


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