登場人物
殿村昌一,大宅幸吉,仁兵衛爺さん,お花,山北鶴子,国枝検事,絹川雪子,児玉博士,北川鳥子
主な舞台
長野県S村,N市
作品一言紹介
S村において、殿村と大宅は血塗れの犬を数匹見かけた。それだけでもギョッとするというのに、しかもそのうちの一匹が人間の右腕をくわえていたのだ。そこで尾行して見つけたのが、犬に食い荒らされためちゃくちゃな女の死体で、それが顔のない死体……。さて、呪いの藁人形が謎の一端を担うこの事件、そして物的証拠、アリバイ不成立、動機、これらの点からある男が容疑者になったが、真相は如何なるものだったか……!? トリックはドイルからの借り物ながらも、恐るべき陥穽だ。
章の名乱舞(参照はちくま文庫)
【生腕】【顔のない死体】【アリバイ】【藁人形】【恐ろしき陥穽】【雪子の消失】【真犯人】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【藁人形】→【わら人形】
著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「キング」昭和六年十一月号及び七年二月号の二回連載。非常に不自然な一人二役トリックが使われているけれども、ともかく本格探偵小説の形式を採っている。この作の中の貨車の屋根のトリックは私の発明でなく、シャーロック・ホームズの「最後の挨拶」の中の「ブルース・パーティントン設計書」のトリックを借りたものである。このトリックはのちにブリアン・フリンという作家が「途上殺人事件」で、貨車を二階つき乗合馬車に変えて使っているし、または横溝正史君の戦後の短篇「探偵小説」にもこのトリックが主題として使われている。
※(注)「鬼」は、実際には、3回分載で自注自解の2回の間に、1月号(新年号)にも載っている。