登場人物
柾木愛造,木下芙蓉(木下文子),池内光太郎,柾木家の婆や,警察関係者など
主な舞台
向島の吾妻橋より少し北のK町,築地,宮城(現在で言う皇居のこと),上野公園,吾妻橋,本郷,
※(ちょっとした“うんちく”)敗者の弁
吾妻橋より少し北のK町は見つからなかった。
作品一言紹介
柾木愛造は自由であり金も持っていたが異様なほどの内気者で厭人病者だった。その柾木が昔恋慕を抱いた木下芙蓉にフトしたことから再会したものの、その後彼女への当たり前の世界の恋が破れるや始めた人でなしの所業とは・・・・・・・・・、その悪魔の恋とは如何なるモノだったか!?
章の名乱舞(参照はちくま文庫)
一から十二まで
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
1から12まで
著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「改造」昭和四年九,十月号に分載。この作は最初、蟲という活字をタテ十字幅三行に、ベタに組んだ風変わりな表題にして、「新青年」に予告したことがあるが、実際書いたのは「新青年」ではなくて「改造」であった。この虫はウジではない。目に見えない極微の虫である。それが死体を、スロー・アンド・ステディに腐蝕して行く恐怖が、この小説の中心題目であった。殺人の動機は、主人公が恋をうちあけたとき、相手の女がおかしそうに笑った。相手が笑っただけならまだいいのだが、それに合わせて、こちらも笑った。その羞恥と屈辱は殺人に値するものであった。この着想は、私が青年時代に読んだ、アンドレーエフの短編(英訳名「私は狂人か」)の深い印象から来ていたようである。
※(注)腐蝕の「蝕」の字は、本当は旧字体の「食偏」である。
※※(注2)実際には、「虫」は「改造」六月号と七月号分載である。