空気男(二人の探偵小説家)


登場人物
北村五郎,柴野金十,河口,お琴

主な舞台
明示なし(東京)

作品一言紹介
未完小説であり、前半との繋がりが全くわからないところで終了している。話の展開を間違ったゆえではないかと思うくらいだ。その本当の最後の方以外は二人の探偵小説作家(作家になる前も含めるが)の犯罪嗜好的、探偵趣味的についての話であり、記憶についてから「空気男」と言うキーワードも出てくる。しかしこれがやや長めの短篇でまとめられていればなぁ、と思わずにはいられなかった。最も類似作品として、後に「ペテン師と空気男」が書かれてはいるのだが。
なお、初出時のタイトルは「二人の探偵小説家」で、旬刊「写真報知」の大正十五年一月から二月(第四巻一号、二号、三号、五号)にかけての四回連載で中絶している。

章の名乱舞(参照はちくま文庫)
一から十一まで

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
1から11まで

著者(乱歩)による作品解説(春陽文庫(探偵小説十年)引用)
この小説は『空気男』のことを書くつもりで始めたものだ。空気男といふのは、鳥羽造船所時代の同僚で、現在はやつぱり文筆のことに従つてゐる井上勝喜君(と名前を出すと怒られるかも知れないが)のことで、同君のすばらしい健忘症に、私が命名した渾名である。(私自身も随分健忘症だが、迚も彼には敵はない。)つまり、非常に物忘れをする男が、自分の健忘症に恐怖を感じるといふ話を、犯罪事件と結びつけて、一つの物語を書いてみようと思つたのだ。


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