一枚の切符


登場人物
左右田五郎(モジャモジャ髪の青年),松村(青年紳士),(富田博士,富田博士夫人,黒田清太郎,ジョン)

主な舞台
××町

作品一言紹介
デビュー前の江戸川乱歩が『二銭銅貨』と共に「新青年」編集部の森下雨村に送りつけたのが作品であり、骨格優れた本格である。富田博士夫人が礫死体となり、これは当初遺言もある事から自殺と思われたが、名探偵と言われた黒田氏の推理により警察では夫の博士による犯罪と推理した。片道足跡だが、その靴が家にある事等からである。しかし左右田は松村に語った内容はそれを否定する理知的な内容だったのだ、犬の心理、そして石塊下のPL商会の切符から得たその推理とは!? 結末の笑みも何やらゾッとする効果だ。さてさて、左右田の空想は何を語るか!?

章の名乱舞(参照はちくま文庫)
【上】【下】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
無し

ネタばれ感想
松村武さんが「ネタばれ感想掲示板」に書き込まれた記事をリンクしておきます。「「二銭銅貨」と「一枚の切符」が決定付けた日本ミステリ界の方向性・私見」です。作品を読まれた方のみご覧下さい。

著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「新青年」大正十二年七月号に発表。処女作「二銭銅貨」と同時に書き上げて、森下雨村さんに送ったもの。やはり「二銭銅貨」の方がいろいろな意味で面白いので、この「一枚の切符」はその蔭に隠れてしまったが、書いたときには、私はこの二作に甲乙をつけていなかった。謎解きとしては「一枚の切符」の方が複雑で読みごたえがあるとさえ思っていた。しかし、これは普通の意味の小説的要素(この場合は身辺小説的要素)が乏しいので、結局、「二銭銅貨」にかなわなかった。探偵小説の評価にも、普通の小説的要素というものが大きく影響するものである。


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