灰神楽


登場人物
彼(河合庄太郎),奥村一郎,奥村二郎

作品一言紹介
河合庄太郎は衝動的に奥村一郎を殺害してしまった衝動的な銃殺事件。銃音も誤魔化せる状況で指紋等の物的証拠は皆無。とは言え、動機ある者とて彼一人、ゆえに起こる犯人の疑心だった。すぐ外では被害者の弟が野球遊戯を楽しんでいた。そのボールが家の側まで飛んできた事が、彼に灰神楽を利用しての一案を思いつかせたのだったが……。それにしても考えれば考えるだけこの灰神楽トリックは恐るべき物を秘めていたではないか!?

章の名乱舞(参照はちくま文庫)
一から五まで

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
1から5まで

著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「大衆文芸」大正十五年三月号に発表。これは大衆文学というものの創始期に報知新聞から出ていた同人雑誌。同人は大衆文学の名づけ親である白井喬二氏をはじめ、直木三十五、長谷川伸などの諸氏十一名、その中に探偵作家としては、小酒井博士と私とが加わっていた。同人の義務として毎月小説を一篇寄稿しなければならなかったのだが、私は通巻二十号ほどで廃刊になるまでに、たった三篇しか寄稿していない。それはこの「灰神楽」のほかに、「お勢登場」と「鏡地獄」であった。三篇のうちでは「鏡地獄」が最も好評で、「赤い部屋」などと同じく、のちのちまでも人の口の端にのぼった。「お勢登場」も発表当時はなかなか好評であったが、「灰神楽」だけは全く黙殺されてしまった。これは本格ものであって、私の妙な持ち味が少しも出ていなかったからであろう。そういうことが私をますます変格ものへはしらせたのである。


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