《第2話 「革張りの天地」》のネタバレ感想
出典:(コミックバンチ2004年26号(6月18日号(実際は6月4日発売日)))
本話では人間椅子の役割と奇妙な快感を味わうと同時に、人間椅子の憔悴と現実的苦労をも描く。急展開過ぎるのが、今一つかも知れないし、また第2話にして人間椅子から外に出てしまったのも展開的に不安を覚えさせる。ただ人間椅子の異常な感触のみの快楽に溺れる桐畑と、当たり前の男女の営みを行う野上&佳子との激しい対照を見せつけられるのが面白い。何より見せつけられたのが桐畑自身であるのも面白い。以下、ネタバレレビュー。
佳子の扱う小説には犯人が出て来るらしい。変格作家ではないのだろうか? ともかく桐畑は自ら改造した椅子の中で佳子と肉薄している状態だ。佳子の安楽のために人間椅子桐畑は高等生物特有の優しさで佳子に安らぎを提供する。その結果、桐畑は意識することになる。佳子は並々ならぬ愛着を椅子に抱いてきている事実。桐畑は奇怪な快楽に陶酔した。
その頃、野上は桐畑に会社として正式契約を結ぶために、桐畑の椅子工房を訪れていた。そもそも彼こそが桐畑の椅子の素晴らしさを理解していたのだから、当然といえば当然の行動だ。だが、桐畑は佳子の椅子に入っているので、当然弟子しかいない。野上は諦めてとりあえず引き揚げる。その先には佳子邸。佳子の好物だというクロワッサンと梨持参でやってくるところをみると、彼もまた佳子には相当の
熱のいれようだとわかる。その野上、桐畑椅子ぶ腰掛けるのだが、意外や意外、桐畑は痛快な気分を味わっていた。伊達男で婦女子の憧れの的だという野上が魔の感触の世界では単なる肉塊ポマードだと認識されたのだ。その愉快さは非常のものだったのだろう。しかし桐畑の愉悦は一瞬のものに過ぎなかったのは悲劇だ。人間椅子最初の悲劇。それは野上の上に佳子がお姫様のように乗っかってきたのだ。重圧が桐畑を襲う。そもそも佳子は野上に抱っこされている状態に過ぎないので、桐畑には感触というボーナスすらもない悲劇。しかも男女の戯れをされてはかなわない。人間椅子大丈夫か? と心配してしまったのは読者たる私アイナットである。その後、ふたりは部屋から消えていく。野上と佳子、彼等は恋人なのだ。椅子の上では満足できなかったのである。ベットが待っている。
桐畑はふたりが部屋を出て行った後、椅子から脱出し、人間界に舞い戻る。ふたり分の重圧は相当辛いようで、また脱水症状になりかけていた。ちなみに数日の人間椅子期間中も夜中などに抜け出し水分補給などはしていたようだ。また腱鞘炎らしき佳子の鉛筆削りに使う小刀を見て、刃物の専門家らしき椅子職人たる感想をもらす。
水を求めて台所へ来た桐畑の悲劇はまだ続く。蛇口をひねろうとした時、近くに置いてあった梨の袋触れてしまい、梨を転がしてしまったのだ。この梨はおそらく野上が持ってきた物なのだろうが、その梨がために、桐畑は鼠捕り器に指が挟まれてしまう。繊細な作業を必要としそうな桐畑の親指を除く4本の指の付け根から出血。かなり痛そうな状況になってしまっている。この失態の前に桐畑は水どころではない。いったん椅子のある書斎の窓から逃げだそうと考えるが、その途中で野上と佳子の生々しいベットシーンを目撃(視覚の世界だ)してしまい、何を思うか? 佳子家を何とか脱出した所で第2話は終わった。
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