《第1話 「念願の注文」》のネタバレ感想
出典:(コミックバンチ2004年26号(6月11日号(実際は5月28日発売日)))
精一杯真面目に生きてきた椅子職人の桐畑、その彼が耽溺したのは魅惑の世界が椅子の中というようなトップカラーでの煽り文句で始まる本物語。
原作好きからすれば、乱歩原作をどう脚色したのか不安でいっぱいの瞬間だ。
腰痛で苦しむしがない椅子職人の親方の桐畑は、弟子の作り上げた椅子に一言、面白味がないと感想をこぼす。しかしそれは弟子に応えられるまでもなく桐畑も知っている仕方のない現実。低予算内で客から求められる椅子。安くて手頃な家具の注文しか来ない現実。椅子職人が資本主義の中で生きるのには仕方がないのかもしれないが、桐畑は芸術家だった・・・。
そこに救いの手が現れる。高級家具商でお金持ちの野上がやってきたのだ。家具屋街にあるBAR「ドルチェ」に置いている桐畑の椅子に惚れ込んだという野上。その野上の依頼は女流作家・佳子のための安楽椅子で、予算や納期の制限もしないという夢のような注文を持ちかけてきた。驚喜乱舞した桐畑はまさに芸術家の精神で理想の椅子を作り上げていく。そして椅子の虜になり、完成したときも離れがたき魅惑を感じてしまう。椅子には華々しい未来、自身には灰色の骸のような面白味のない日常の未来。そのあまりの対照が囁かせたのだろう、少々の改造で椅子に入り込めることに気が付く。もっともその時点では狭い椅子の中は墓場とも意識していたのだったが・・・。
一方、野上は佳子と男女の仲。注文した椅子を話題に艶やかに盛り上がっていた。その後、到着する桐畑の椅子。文字通り人間椅子。佳子は腰掛ける。その安楽ぶりに佳子も満足したが、よもや人間椅子で、中身の桐畑の方も至極の感触の世界に入門していたとは夢にも思わなかったであろう。
と、このように人間椅子の世界に入門したところで、第1話は終わった。
と、第1話は、私を充分に満足させる内容だった。この掲載紙のコミックバンチ。原作をとんでもなく脚色しすぎて、原作の世界観を滅茶苦茶に破壊するケースが多々見られただけに本当に不安だったのだ。それが女流作家の佳子も出て来るわ。早くも佳子の椅子に潜り込むわ、と、いきなり核心に触れる展開には、今後も期待させてくれる。むしろ今後のネタは大丈夫なのかと思ってしまうくらいだったが。さて、次は第2話だ。
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