登場人物(ダブり含む)
喜多川治良右衛門,木下鮎子,諸口ちま子,大野雷蔵,人見折枝,湯本譲次,原口麗子,三谷二郎,餌差宗助,木島刑事,ジロ娯楽園雇い人たち,ゴンドラの船頭の少年と少女,炊事場の婆さんとそのせがれ,花火係のK,その他の警察関係者,カーニバルのために全国から集った猟奇の紳士淑女たちなど
主な舞台
M県南部のY市郊外にあるジロ娯楽園
※(ちょっとした“うんちく”)敗者の弁
調査の結果、M県Y市は三重県四日市市しか存在しないことが判明した。だが、ここは当時かも市であるも(四日市市は明治三十年八月に市政)、三重県北部、しかも旧街道沿いであるので、残念ながら全然該当しない。そこで苦しまぎれに試しに「ゐ」「ゑ」
もY行と考え、無理に「い」「え」にまで対象をのばすと、四つだけ見つかった。一つ目は南西部に位置する宮崎県えびの市、しかし昭和四十五年十二月に市政なので問題外である。二つ目は宮城県南部にある岩沼市、だがこれも昭和四十六年十一月に市政なので全然駄目。三つ目の宮城県石巻市は昭和八年市政でギリギリアウトな上、北部。四つ目は三重県伊勢市で南の方であるし、市政も古いが、当時の名称が宇治山田市(※市政は明治三十九年九月、大拡張による名称伊勢市への変更は昭和三十年一月)、ということで根本的にY市でなくNGだった。ということで、昭和六年に市
政を取っていたM県Y(や行と「い」、「え」)市は皆無であった。
作品一言紹介
園主の喜多川治良右衛門のジロ娯楽園は大自然の中に観覧車あり、メリー・ゴー・ラウンドあり、パノラマ館あり、十二階のような摩天閣あり、そして大迷路あり、・・・・・・という遊戯的猟奇世界であった。だが、そのラビリンスのような大迷路で凄惨な殺人が起こり・・・・・・、そしてついには恐るべくも美しい地獄風景を現出させるのだ。
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【奇怪なる娯楽園】【大迷路】【第一の殺人】【迷路の鬼】【木島刑事】【怪短剣】【黒い影】【青ざめたモデル】【殺人三重奏】【日記帳と遠目がね】【被疑者】【大鯨の心臓】【餌差宗助】【地底水族館】【大砲買入れ】【ゴンドラの唄】【地上万華鏡】【地獄谷】【恐ろしきランニング】【メリー・ゴー・ラウンド】【悪魔の昇天】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【日記帳と遠目がね】→【日記帳と遠めがね】,【大砲買入れ】→【大砲買い入れ】,【ゴンドラの唄】→【ゴンドラの歌】
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
(昭和三十六年〜三十八年刊行の桃源社版全集の自作自解)
平凡社「江戸川乱歩全集」の付録雑誌「探偵趣味」昭和六年五月の号から翌七年三月の号まで連載。全集読者へのサーヴィスとして執筆をはじめたもの。その上、犯人探しの懸賞までつけたのだが、小説はファースみたいなふざけたものになってしまって、犯人当てにはまことに不適当であった。これもまた「パノラマ島」の幻想のくり返しで、いわば「道化パノラマ島奇談」である。
おまけ(岩谷書店から昭和二十五年二月刊行の短篇集『芋虫』自作自解)
「地獄風景」は昭和六年五月から翌七年五月にかけて平凡社から出版された「江戸川乱歩全集」十三巻の附録として、毎巻「探偵趣味」という小雑誌を添えたが、その雑誌の連載小説として毎月即興的に執筆したもの。私のパノラマ島趣味のカリケチュアというべきであろうか。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『緑衣の鬼』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『白髪鬼』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『月と手袋』
創元推理文庫・乱歩傑作選『盲獣』
(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・