登場人物(ダブり含む)
明智小五郎,玉村妙子,進一少年,湖畔の子供たち,ホテル関係者たち(小使い,支配人など),波越警部,福田得二郎,上野駅の運転手とその助手,玉村善太郎,福田家召使いたち(婆やと女中二人),玉村二郎,福田氏警護の警官,玉村二郎の書生,まっ赤な猫,玉村一郎,新聞記者たち,独身老車夫,福田家自動車運転手と助手,白鬚橋付近に集った人々,賊の一味(文代,覆面の大男,道化師の怪人物),年寄りの小父さん,音吉(掃除夫の爺や),他玉村家の雇い人たち(書生,運転手など),玉村商店の店員五、六名,花園洋子,小劇場の奇術師たち(道化姿の座長,燕尾服の説明者,助手二人,文代など),小劇場奇術の見物人たち,小劇場の道具方二人,軽業師の木野,牛原耕造,牛原家召使い,奥村源造,三次など魔術師の部下八人,元看護婦のお婆さん,(奥村源次郎,玉村幸右衛門)など
主な舞台
上野駅,中央線S駅近くの湖畔のホテル周辺,東京市西北郊外の福田邸,隅田川の白鬚橋,東京湾上品川沖の賊の巣窟船,隅田川口の月島海岸,大森の山の手にある玉村邸,大森外科病院,小劇場(大森区内?),見知らぬ町はずれの林の中(大森区内?),小劇場近くの東海道線踏切,森ガ崎に近い海岸(大森区内?)の木造洋館,小石川区の牛原邸,お茶の水の開化アパート,隅田川川口の月島海岸,本郷区Y町
※(ちょっとした“うんちく”)
1.中央線のS駅近くの湖畔のホテルというのは、私的調査の結果、以下の二つに絞られた。
S駅=相模湖駅の相模湖の湖畔のホテル(神奈川県)、S駅=下諏訪駅の諏訪湖湖畔のホテル(長野県)
この2つの候補のうち、私がささやかに調べた範囲では、戦前の下諏訪駅は確認できたが、相模湖駅は未確認に終わってしまった。というわけで、まだ調査が甘すぎるとは言え、現段階では、下諏訪駅の方が有力ではないかと思われる。
2.白鬚橋とは、今も昔も浅草区(現台東区)と荒川区の区境と向島区(現墨田区)を接続する橋である。
3.森ガ崎とは森ヶ崎のことだろうが、現在の大田区大森南の海沿い側。「魔術師」事件の当時は、森ヶ崎海水浴場として有名だった。
4.本郷区Y町とは、本郷区にY町多くあれども、《肴町の停留所から団子坂の通りを右へ、三つ目の細い横町を左へ折れて、生垣にはさまれた道を一丁ほど行くと、石の門のある古い西洋館》という明智のセリフに合致するY町は、ゐゑや旧旧町含め、全く皆無であった。
作品一言紹介
『蜘蛛男』事件の解決で明智小五郎は湖畔のホテルで休養していたのだが、明智がそこで知り合ったのが美しき令嬢玉村妙子だった。その湖畔の出会いを嚆矢にして、明智は玉村家を巡る恐るべき復讐物語に巻き込まれていく。そして不覚にも事件前早々いきなり賊の虜となってしまった明智は、そこで更なる新たな衝撃的な出会いを果たすことにもなるのだ。さてさて、この魔術師の恐るべき復讐の目的は!?
またエッセンスたっぷりの各種の悪魔所業的復讐手段は如何なるものだったか!?
、そして名探偵の恋の行方は!? 更には事件の解決の意外性にも注目大だ。
ネタばれ感想
きーすさんが「ネタばれ感想掲示板」に書き込まれた記事をリンクしておきます。「「魔術師」」です。ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」と合わせて、両作品読んだ方のみご覧下さい。
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【美しき友】【早業】【幽霊通信】【まっ赤な猫】【無残絵】【巨人の手】【獄門舟】【窓なき部屋】【肉仮面】【水、水】【名探偵の溺死】【怪文字】【殺人第三】【幽霊塔】【断頭台】【花園洋子】【大魔術】【麻の袋】【明智小五郎】【屋根裏の捕物】【五色の雪】【奇妙な取引】【ダイヤモンド】【殺人映画】【恐ろしき遺書】【燃える骸骨】【深夜の婦人客】【地底の滝】【地上と地下】【消え失せた令嬢】【魔術師の激怒】【八対一】【断末魔】【まだら蛇】【悪夢】【奇中の奇】【異様な捕物】【緋色のカーテン】【真犯人】【壁の穴】【意外な共犯者】【大団円】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
準備中
※※創元推理文庫版(5版)では、【巨人の手】ではなく【巨人の手型】、【水、水】ではなく【水
水】、【五色の雪】でなく【五色の雲】・・・前二つはともかく最後の【五色の雲】は明らかな誤植と思われます。
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「講談倶楽部」昭和五年七月号より翌六年五月号まで連載したもの。「蜘蛛男」についでの通俗長篇である。この昭和五年には「魔術師」のほかに、「猟奇の果」(文芸倶楽部)「黄金仮面」(キング)吸血鬼(報知新聞)などの長篇を連載、私としては非常に多作な時期の一つであった。いよいよ通俗読みものの売文業に転向したという気持で、大いに書き飛ばしたのであろう。私は通俗ものの手法としては、涙香ものとルパンものを混ぜ合わせたような味を狙ったのだが、どうもうまく行かなかった。しかし、「蜘蛛男」や「魔術師」や「黄金仮面」には、そういう意図がいくらか感じられる部分もある。また、通俗もののプロットは西洋の作品などから借りても構わないという考え方だったので、この「魔術師」にも、そういう箇所が幾つもある。たとえば、大時計の針に頸をしめられる話、煉瓦の壁で人間を生き埋めにする話などは、いずれもエドガー・ポーの短篇の着想を通俗化したものである。「魔術師」は動機の不自然が目立つけれども、しかし、プロットとしては、私の通俗長篇のうちでは、やや纏りのよいものの一つではないかと思う。
この「魔術師」は当時ハルビンで発行されていた露字新聞『ハルビンスコエ・ヴレーミア』の昭和六年五月二十九日号から五十回、露訳連載された。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『魔術師』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『魔術師』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『魔術師』
創元推理文庫・乱歩傑作選『魔術師』
(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・