登場人物(ダブり含む)
雨宮潤一(=潤ちゃん,山川健作),黒蜥蜴(=黒天使,黒衣婦人,緑川夫人),北島,咲子,Kホテル関係者,岩瀬庄兵衛,明智小五郎,岩瀬早苗,明智の部下たち,警察関係者,S町の老紳士,桜山葉子,岩瀬邸使用人たち(婆や,書生の倉田,他の書生,小間使い,女中などなど),岩瀬夫人,売店の夫婦,明智を乗せた運転手,その他の黒蜥蜴の部下たち(北村,合田,松公,コックなどなど),香川,K子さんなど
主な舞台
東京:G街(銀座?),G街から十分以内の京橋区内,U公園(上野公園?),T大学(東京帝大?),帝都第一のKホテル,東京湾沿いのTという埋め立て地の海岸近くの工場街に位置するある廃工場(黒蜥蜴のアジト)
大阪:南海電車沿線H町(岩瀬邸),盛り場のS町,T公園(天王寺公園?)の通天閣,大阪市を南北に貫くSという幹線道路(堺筋??),S橋の河岸
作品一言紹介
暗黒街のダークエンジェルでもある女賊、黒蜥蜴対我らの誇る名探偵明智小五郎の対決!舞台は東京→大阪→船上→再度東京にまで及ぶ熾烈な戦いだ。その妖婦・黒蜥蜴のアジトの蒐集品、それは美しいものばかりなのだが、これを見ると誰もが驚きを隠しきれないであろう、その趣味たるや想像を絶するばかりの恐ろしきものなのだ。あとラストシーンも注目度は高い!
ネタばれ感想
きーすさんが「ネタばれ感想掲示板」に書き込まれた記事をリンクしておきます。花崎マユミさんの記事も含みます。「黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では?」です。作品を読まれた方のみご覧下さい。
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【暗黒街の女王】【地獄風景】【ホテルの客】【女魔術師】【女賊と名探偵】【一人二役】【暗闇の騎士】【名探偵の哄笑】【名探偵の敗北】【怪老人】【クモと胡蝶と】【令嬢変身】【魔術師の怪技】【「エジプトの星」】【塔上の黒トカゲ】【奇妙な駈落者】【追跡】【怪談】【恐ろしき謎】【水葬礼】【地底の宝庫】【恐怖美術館】【大水槽】【白い獣】【人形異変】【離魂病】【二人になった男】【再び人形異変】【うごめく黒トカゲ】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【一人二役】→【ひとり二役】,【暗闇の騎士】→【くらやみの騎士】,【クモと胡蝶と】→【クモとコチョウと】,【「エジプトの星」】→【『エジプトの星』】,【塔上の黒トカゲ】→【塔上の黒蜥蜴】,【奇妙な駈落者】→【奇妙な駆け落ち者】,【恐ろしき謎】→【恐ろしきなぞ】,【二人になった男】→【ふたりになった男】,【再び人形異変】→【ふたたび人形異変】,【うごめく黒トカゲ】→【うごめく黒蜥蜴】
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「日の出」昭和九年一月号より十二月号まで連載したもの。文中の蜥蜴はトカゲと改めたが、表題はいろいろな意味で漢字のままにしておく。この小説については最近に書いた短文をのちにのせるので、すぐにこの作の劇化についてしるす。三島由紀夫君は子供のころ、この小説を愛読された由で、その記憶から、これを基いた劇を書く気になり、最初は今から四,五年前、小牧正英舞踊団のために劇にするからという話があり、私は承諾しておいたのだが、それは舞踊団の都合で中止となったので、三島君はその約束を果たしたいという気持もあったらしく、今度は演劇プロデューサーとして名声をはせている吉田史子さんのために「黒蜥蜴」劇を書きおろされた。江戸川乱歩原作による三島由紀夫作という肩書きである。その脚本は私も一読したが(後に「婦人画報」三十六年十二月号に掲載された)、「なるほど、こうすれば奇抜な面白い劇になるな」と感じられるようなものであった。私は吉田女史にたのまれて、宣伝ビラに印刷する短文を書いたので、それを次にのせておく。この小説そのものと、今度の劇とについて、私の寸感がしるされているからである。
「『黒蜥蜴』は戦前の私の多くの通俗連載長篇の一つで、私の小説では唯一の女賊ものである。美しい女賊と明智小五郎との、恐ろしくトリッキイでアクロバティックな冒険物語だが、この二人、追うものと追われるものの、かたき同士が愛情を感じ合う。三島由紀夫君はその女賊と探偵との恋愛に重点をおいて脚色されたようである。筋はほとんど原作のままに運びながら、会話は三島式警句の連続で、子供らしい私の小説を一変して、パロディというか、バーレスクというか、異様な風味を創り出している。主演者も水谷、芥川両氏の初顔合わせということで、非常に風変わりな面白い劇になるだろうと、私も上演の日を待ちかねている」
演出は松浦竹夫、装置は伊藤熹朔、俳優は水谷八重子(女賊)、芥川比呂志(明智小五郎)、田宮二郎、大空真弓、賀原夏子の諸氏、劇場はサンケイホール、昭和三十七年三月三日から二十五日まで上演。この文章を書いている一月はじめから前売りがはじまっている。
吉田史子さんは幾度も私のうちへ来てくださったが、この劇の映画化の申込みが数社からあり、結局、大映にきめたいという話があり、むろん私には異議はなかった。この映画は劇の上演と同じ三月の中旬封切りの予定らしい。監督は井上梅次(私の「死の十字路」を作った人)、主演俳優は京マチ子(女賊)、大木実(明智小五郎)。久しぶりの京マチ子である。劇の方の水谷と芥川は全くの初顔合わせだし、こういう珍らしい企画ができるのも、フリー・プロデューサー吉田女史の腕前であろう。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『黒蜥蜴』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『黒蜥蜴』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『黒蜥蜴』
創元推理文庫・乱歩傑作選『黒蜥蜴』
(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・