登場人物(ダブり含む)
蜘蛛男,稲垣平造,里見芳枝,他稲垣美術店の女事務員に応募してきた若い娘さん達17人,平田東一,他稲垣美術店セールスマン5人,関東ビルディング関係者(事務員,掃除女)
,畔柳友助,野崎三郎,里見絹枝,畔柳邸使用人達(書生,三人の女中,運転手),警視庁捜査課の波越警部,D中学三年A組E,警視庁鑑識課S警部補,
D中学図画教師G氏,帝大F博士,里見姉妹の母,江の島の水族館の番人のお爺さん,水族館の青年画家,富士洋子,
K撮影所関係者達(監督のN,女優のY,天才子役のK子,K劇場支配人,K撮影所所長のT氏,カメラマンのS,
男優のB君,映画館の先輩のI俳優,S女優など),農夫の作,お婆さん,白髪白髯の医師,H病院院長,H病院看護婦,K撮影所所長のT氏夫人,
支配人のK夫人,警視庁M警部補,麹町署のU君,赤松警視総監,刑事部長のO氏,明智小五郎,
警視総監室の給仕,M銀行員,S店の番頭,大場道夫,助さん,H村老人,他のH村人々,田舎親爺,福山鶴松,園田大造,人形工場の職工,E女学校の四年級、和田登志子,不良青年,最上家の嗣子という男,他のアウル団員,他警察関係者など
主な舞台
麹町区Y町の関東ビルディング,(その東にある)両国橋近くのS町,麹町区R町(蜘蛛男巣窟),
神田区S町K額縁店,麹町区G町(畔柳邸),巣鴨の里見家,D中学,麻布のS中学,神田T女学校,神田のO画塾,青山のB中学,江の島及び湘南片瀬,K劇場,O町山の手の森の中(O町=京浜間の鉄道沿い、O駅有り),K町のT氏邸,K町H病院(K町京浜間or横浜か!?
) 警視庁,M銀行麹町支店,本郷のSという店,郊外Mの物淋しい火葬場,奥多摩青梅鉄道沿線のH村,浅草区S町,神宮外苑,目黒駅近くのカフェ,新宿区H町,鶴見遊園パノラマ館
作品一言紹介
美術店の広告から世間を震撼させた怪事件は始まった。好みのタイプの女ばかりをその悪魔的毒牙にかける恐怖の青ひげ怪人蜘蛛男に民間の犯罪学者畔柳博士が挑む傑作通俗探偵小説長篇。更には外遊中の明智小五郎の帰国に及んで事件の様相も大転回。さてさて、蜘蛛男の妖艶怪異な野望は現実のものとなったのであろうか?
講談社の「講談倶楽部」に昭和四年八月号から昭和五年六月号まで十一回の連載。
ネタばれ感想
(ネタばれ感想コーナーの「「蜘蛛男雑感」です。当然ですが、未読の方は読まないようにして下さい。)
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【蜘蛛男】【十三号室の借主】【空っぽの邸宅】【浴槽の蜘蛛】【獣人】
【小悪魔】【義足の犯罪学者】【美しき依頼人】【陳列棚の蟻】【石膏像の正体】【青年消失】【第二の石膏細工】【青ひげ】
【毒蜘蛛の糸】【水族館の人魚】【第三の犠牲者】【劇場の怪異】【七月五日】【裏の裏】【湧き起こる黒雲】【挑戦状第二】
【撮影中止】【白髪の老医】【袋の鼠】【最後の一秒まで】【幽霊部屋】【魔術師の怪技】【意外の人物】【畔柳博士の負傷】
【野崎青年の危難】【桁はずれの悪計】【ポスター美人の眼】【滴る血潮】【深夜の電話】【失望した波越警部】【異国風の怪人】
【刑事部長の旧友】【ズバ抜けた欺瞞】【欺瞞の数々】【蜘蛛男対明智小五郎】【M銀行麹町支店】【一足違いに】【離れ業】
【骸骨の用途】【死体の変装手術】【二老人】【格闘】【通り魔】【奇怪な情死】【パノラマ人形】【蠢く触手】【非常誘拐】
【悪魔の美術館】【探偵人形】【大団円】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
準備中
※※創元推理文庫版では、【湧き起こる黒雲】でなく、【湧き起る黒雲】だった。
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
初めて講談社の雑誌に書いた小説である。そのころの講談社ものは、野間清治社長の主義で、老幼婦女だれにでもわかるものという条件がつき、また、しばしば書き直しを命ぜられるという噂が流布していたので、作家のあいだに講談社忌避の風潮があった。私も忌避組の一人であったが、「講談倶楽部」の編集員の瀬川正夫(故人)という人が、長いあいだ、たびたび私の家へやってきて、実に辛抱強く口説きつづけた。私はその並はずれて忍耐強い編集者魂に打ち負かされて、とうとう執筆を承諾し、初めて同誌に連載したのがこの小説であった。
通俗を主眼とする講談社ものだから、ルパンものと涙香ものの書き方を混ぜ合わせたようなものをめざしたのだが、思うように行かなかった。結果として、その後の私の講談社ものも、私流のエログロになってしまったけれど、最初はそういう心組みだったので、「蜘蛛男」の初めの方には、いくらか涙香ふうの書き方が残っている。
しかし、噂に聞いていた書き直しを命ぜられるということも、私の場合には一度もなかったし、編集者の応対も、他社に比べて丁重をきわめ、原稿料も格段に高いので、つい私は講談社党になってしまって、同社の諸雑誌に連載ものを書きつづけるようになった。「蜘蛛男」はその先駆をつとめたわけである。
この小説は昭和三十二年に映画化されている。映画界のヴェテラン篠勝三氏が新映画社という会社を作り、その第一回作品として制作したもの。藤田進、岡譲司、宮城千賀子、河上敬子などの出演であった。その年から翌年にかけて、関東、関西別々に、たしか大映系の映画館で上映された記憶である。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『蜘蛛男』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『蜘蛛男』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『蜘蛛男』
創元推理文庫・日本探偵小説全集2『蜘蛛男』
(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・