白髪鬼


登場人物(ダブり含む)
わし(語り手)=大牟田敏清=白髪の鬼=里見重之,教誨師,速記者,朱凌渓(※朱凌谿)(シナ人の海賊団首領),川村義雄,北川(大牟田子爵家執事),瑠璃子,お豊(瑠璃子の婆や),佐田医学士,古着屋の主人,Yホテル給仕,シナ警官たち,山田(朱凌渓の手下),ルイズ(朱凌渓の妻),志村(大牟田敏清の助手),Sホテルボーイ,T氏夫妻,老牧師など

※旧角川文庫版では《朱凌渓》。桃源社版全集講談社版(全集と文庫)及び春陽版(文庫)、初出では《朱凌谿》。つまるところ旧角川文庫版だけがおかしいようです・・・。

主な舞台
九州西岸のS市(佐世保市?)<地獄谷(S市南のG川上流にある),大牟田家墓場,Sホテル,S駅>,東京,Y町(S市近郊)〈Y温泉,大牟田家別荘〉,シャンハイ〈Yホテル〉など

※(ちょっとした“うんちく”)敗者の弁
調査の結果、当時の九州西岸のS市は佐世保市(市政は明治35年4月)以外あり得ないことが判明した。しかし、にもかかわらず旧佐世保市近郊にはY町という行政区画は存在しないようだ。G川も該当河川は見つけることは出来なかった。

作品一言紹介
大牟田敏清子爵は美しい妻の瑠璃子と無二の親友川村義雄、それにお金もあり、幸せの絶頂だった。その大牟田敏清が白髪の鬼にと化して、怒りと恨みの復讐の徒となったのは如何なる理由からだったのか?その世にも恐ろしいゾッとするような経緯、そしてそれすらも越えかねない壮大な悪魔の復讐計画、これは恐怖と戦慄を誘う地獄の鬼物語である。

章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【異様な前置き】【極楽世界】【いまわしき前兆】【生き地獄】【暗黒世界】【大宝庫】【餓鬼道】【肉食獣】【白髪鬼】【恐ろしい笑顔】【二重の殺人】【美しきけだもの】【朱凌渓(朱凌谿)】【奇妙な遺産相続】【五つのダイヤモンド】【奇妙な主治医】【地中の秘密】【二匹の鼠】【巨人の眼】【不思議なる恋】【瓶詰めの嬰児】【黄金の秘仏】【幸福の絶頂】【奇怪なる恋愛】【十三人】【白髪の花婿】【陥穽】【秘仏の正体】【死刑室】【奇妙な約束】【卒倒】【穴蔵へ】【三つの棺桶】【恐ろしき子守唄】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
二匹の鼠→【二匹のネズミ】,巨人の眼→【巨人の目】,瓶詰めの嬰児→【びん詰めの嬰児】,陥穽→【おとしあな】,三つの棺桶→【三つの棺おけ恐ろしき子守唄→【恐ろしき子もり唄

著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
 講談社発行の「富士」昭和六年四月号から翌七年四月号まで連載したもの。原作はメアリ・コレリの「ヴェンデッタ」。黒岩涙香がこれを意訳して「白髪鬼」を書いたのにならって、舞台を日本に移し、わたし流に書き改め、原作にない筋もつけ加えている。涙香と同じ題をつけたので、黒岩家をお訪ねし、涙香の長男、日出雄さん(故人)に会って諒解を得た。原作が世界的名作なので、これはたいへん受けたようである。戦前、春陽堂の文庫本に、涙香の「白髪鬼」も、私の「白髪鬼」も、両方ともはいっていたので、区別するために、私のには「乱歩白髪鬼」という題名がついていたものである。

比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『白髪鬼』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『白髪鬼』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『白髪鬼』

(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・


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