登場人物(ダブり含む)
伊志田鉄造,伊志田一郎,伊志田綾子,伊志田鞠子,伊志田君代,伊志田家の祖母(一郎らの祖母),明智小五郎,小林少年,伊志田家使用人(書生たち〈斎藤など〉,女中たち),インバネスの黒い怪人物,警視庁の北森捜査課長(北森警部),有本医師(明智),篠田外科病院看護婦,越野,荒川庄太郎,三島刑事,宮本せい子,その他警察関係者など
主な舞台
麻布区(K町の怪西洋館こと伊志田屋敷,R町の明智探偵事務所,篠田外科病院),芝区(京浜国道沿い,高輪周辺,品川駅周辺など)
※(ちょっとした“うんちく”)
麻布区R町の明智探偵事務所のR町とは、まず間違いなく竜土町のRであろう。この住所の詳細は『悪魔の紋章』の作品説明を参照すべし。
麻布区K町の候補は私の調査によると次の4つの番地であった。
・霞町:現在の港区西麻布一丁目全体と西麻布3丁目の北西部(17番地〜24番地位)あたり
・北新門前町:現在の港区東麻布2丁目の21番地〜33番地(但し29番地は除く)あたり
・北日ヶ窪町:現在の港区六本木6丁目の中部(8,9,10,13番地と4,5,6,7番地の南側と11,12,14番地の北側)あたり
・笄町:現在の港区西麻布3丁目の南西部(7番地及び9〜16番地と4,5,8番地の西側半分)あたり
確証は出来なかったが、京浜国道とはだいたい現在の国道一号線のことと思われる。
作品一言紹介
伊志田家は奇人資産家として知られていたが、その家族が映写機で上演会をしていると、どういうわけかスクリーンに写された家族の顔がドロドロになる事件が勃発した。そして伊志田家長男の一郎がこの件を含めた近時の怪出来事らを名探偵明智小五郎に電話で相談している最中にまたもや事件が勃発!?これを嚆矢にして起こる連続事件は名探偵明智小五郎をも苦戦に陥らせるのだ。
章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【恐ろしき前兆】【悪魔の声】【人間コウモリ】【写真の怪】【妖雲】【塔上の怪】【美しき嫌疑者】【名探偵の奇禍】【空を歩く妖怪】【壁の穴】【名探偵の盲点】【第三の銃声】【謎又謎】【麻酔薬】【綾子の行方】【狂気の家】【最後の犯罪】【闇を這うもの】【地底の磔刑】【狂人の幻想】【誰が犯人か】【暗黒星】【論争】【執念の子】
※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
【謎又謎】→【なぞまたなぞ】,【綾子の行方】→【綾子の行くえ】,【闇を這うもの】→【やみをはうもの】,【地底の磔刑】→【地底のはりつけ】,【誰が犯人か】→【だれが犯人か】
著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「講談倶楽部」昭和十四年一月号から十二月号まで連載したもの。昭和十四年といえば、戦前の私の作家活動の末期に属する。この年に書いたこれと、「地獄の道化師」(富士)と「幽鬼の塔」(日の出)の三つが戦前連載ものの最後であった。翌昭和十五年あたりから探偵小説が書けなくなった。十五年六月にはドイツ軍のパリ占領、九月には日独伊三国同盟の成立、そして十六年十二月には真珠湾急襲と進展したのである。戦争中探偵小説が禁圧を受けたか、そのあいだ私が何をしていたかは、「探偵小説四十年」に詳しい。これはそういう時期にはいる直前に書いたのだから、まことに熱のない、長くもないくせに冗長な感じの拙作だが、いわば動機を探す探偵小説で、犯人の隠し方にくふうをこらした跡が見える。
比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『暗黒星』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『暗黒星』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『暗黒星』
創元推理文庫・乱歩傑作選『何者』
(注意)残念なことに講談社文庫は品切・絶版中・・・