新青年 (第二十六卷)十月號
めつきり白髪の殖えた母の腕に、
今、還つて来て、しつかり抱かれてゐる。
兩人は何も喋り合ひはしないが、
さうしてゐるだけで十分滿足であつた。
いまさら何をいふことがあらう。
生きて兩人が再び會へたといふこと。
そして明日から睦じく共に働けるといふ
こと、
その喜びがお互ひによく分つてゐるのだ
から。
母の腕の中にあるもの、
それは息子であり、
娘であり、
また誰でもいゝ。
われわれの誰かであり、
そしてまた、
「平和」それ自身である。
蕃茄・・・・・・・・・大下宇陀兒
草堰・・・・・・・・・乾信一郎
舞扇・・・・・・・・・三木蒐一
詰將棋新題・・・・・・・・・八段 塚田正夫
編輯後記
新原稿募集
新しき平和の女神・・・・・・・・・川端勇男
誰が名優・・・・・・・・・渡瀬敬作