新青年 大正十五年第十四號(十二月號)=一册六十錢
「越後獅子」/羽志主水/9ページ(2001/1/18読了)
火事の跡から死体が一つ、しかしその死体にの首には手ぬぐいが巻き付いていた、という事件。推理的には面白いものもある。
「開いた口」/春日野緑/13ページ(2001/1/18読了)
のんきな男が思わず売ってしまったボロ机、これを中心とした焦るような話。ラストは開いた口が塞がらないとは言え、主人公は救われたことだろう。
巻末の「◆編輯日誌」より乱歩関連記事を一部引用する。なお、署名は全文(一記者)となっているが、文面から判断すると、森下雨村の文章で間違いなさそうだ。
(前半省略)
◇二十七日 報知新聞夕刊に江戸川亂歩、平林初之輔、甲賀三郎、森下雨村など探偵趣味の會同人で鬼熊探檢に出掛ける由の記事が出る。計畫はありたれど、確定したるわけに非ず、前日報知記者中代君に會い、つい口をすべらしたが爲なり。新聞記者は恐ろしと雨村生こぼすこと頻り。夜、銀座「やまと」にて趣味の會の慰勞宴。
(中略)
◇十日 江戸川亂歩氏、親戚の法事や病氣のためパノラマ島奇譚思ふように執筆捗らずとのこと。十五六枚は出來てゐるとのことなれど、申譯けに四五頁掲載するのは却つて興なし。斷然休掲といふことにす。
◇十二日 江戸川氏熱海より長文の謝罪電報を送り來る。末尾に「スグ一ガツゴウニチヤクシユ」とあり。
(以降省略)
新青年 大正十五年第十三號=一册六十錢
獨逸作家短篇集
乱歩の「パノラマ島奇譚」(二)の号(八)〜(一四)で二十二ページ。
またチョットした発見だが、乱歩の『「五階の窓」 所感』も載っている『「五階の窓」 執筆に就いて』の国枝史郎の『不滿二三』で作家を指した横溝正史の名前のルビが、よこみぞ、ま・さ・し、やはり先月号から本人が編輯をしている関係だろうか、当時は、恐らく、せ・い・し、と間違えて覚えられていることに気がついていなかったのだろう。一応言っておくが、横溝正史の本名は「まさし」、筆名が、勘違いされていることに気がついたために「せいし」になったとのことであったと思う。ちなみに新青年は総ルビ。
「童貞」/山本禾太郎/15ページ(2001/1/18読了)
探偵小説でもないし、大したものにも思われないが、恋愛不能者の主人公の哀れな話。
「藻くづ」/山下利三郎/7ページ(2001/1/18読了)
悲しくも浪漫的話と思われたが、実は・・・だったという話。
巻末の「◆編輯局より」の乱歩関連記事を一部引用する。
森下雨村らしき(雨村生)署名の文章はまず全部省略。
まず(神部)署名の文章から下記に記す。
◆十月増大號の評判はすばらしいものだつた。多数の讀者諸君から激賞賛美の手紙を寄せられたことを爰に厚く感謝します殊に江戸川亂歩氏の「パノラマ島奇譚」は、第一回目にしてすでに讀者を魅了したかの巻がある
◆それにしても一讀者からの投書には、パノラマ禮讃のあまり「この名作全篇を一度に掲載しないような、物惜しみの編輯者よ!地獄へ行け!」とあるにはいさゝか驚いた。
◆事實、原稿が記者の手許にあるのなら、腹も切らうが、續稿は作者亂歩氏の幽玄はかり知れぬ頭の中にあるのだから仕方がない。マア極樂へも行かずにすむ譯だが、何にしても亂歩氏近來の大力作だけに、號を追ふて、定めし諸君を魅惑せしめずにはおかぬだらう。
(後半省略)
では最後の(横溝)署名の文章も下記に引用する。
◆「パノラマ島奇譚」は最初百五十枚三回分載の豫定だつたけれど、作者の都合で、或ひは少しのびるかも知れないとの話である。のばせるものならのばして貰ひたいとは、蓋し編輯同人の願ひばかりではなからう。
(後半省略)
と、このようなわけで江戸川乱歩の新青年初の中篇『パノラマ島奇譚』はやはり出だしから圧倒的に大好評で迎えられたようである。ちなみに横溝正史の編輯後記の文の願いは美事に叶えられた。連載は全五回もに及んだのである。とはいえ、じきに昭和二年の項に触れるとおり、さらにもう一回休載があるのだが・・・。また神部編輯者のにも触れられてるような有様だから、次の新青年十四號(十二月号)で乱歩は休載していることに、当時の読者の皆さんはさぞガッカリしたものだろうと思う。なお、休載に触れた文章は十二月号の編輯後記にも載っている。そこで引用させて頂くことにしよう。
新青年 大正十五年第十二號・秋期特別増大號=一册六十錢
探偵と隨筆選集
乱歩の「パノラマ島奇譚」のスタート号(一)〜(七)で21ページであり、また興味を惹く話としては、この號の編輯作業の中途から横溝正史が博文館、新青年の編輯部に入ったとのことだ。巻末の編輯局よりの文章の後ろ半分に、(横溝生)とした署名付き初挨拶の言葉がある。ちなみに前半はいつものように(雨村生)の署名付き文章である。
「祕密」/平林初之輔/19ページ(2001/1/16読了)
相方二人の秘密がうまい具合に絡み合い、更なる悲劇を生んだ話。ご都合主義的感は免れないだろう。
「殺人映畫」/宇野春/14ページ(2001/1/16読了)
映画を撮らせた中で大胆不敵に現実の犯罪を実行!恐るべき犯罪である。
「急行十三時間」/甲賀三郎/16ページ(2001/1/16読了)
名探偵の木村清シリーズ。心理的本格探偵小説とも言うもので、なかなか面白い。
「五階の窓」/小酒井不木/24ページ(2001/1/16読了)
合作探偵小説の第六回目にして、最終話である。小酒井不木が美事にうまい具合に混沌としていた事件をまとめ上げて、解決を付けている。
「五階の窓(甲種回答)」/緒方愼太朗/6ページ(2001/1/16読了)
この合作は懸賞付き小説であった。そのうちの第四回甲賀三郎の終了後から独自に結末をつける小説を募集したのがこの甲種である。いわば、國枝史郎を抜かしているものの、小酒井不木との競作と言えるであろう。で、感想であるが、枚数が圧倒的に少ないことから考えても、小酒井氏には及ばないだろうが、それでも上手い解答を付けていて犯人も充分意外なものであった。何より甲種二等の人も似たような解答だったとのこと、しかも森下雨村等編集部はこの二人以外には失望に近い感じだったとのことだ。(それでも甲種三等は五人、しかし計画では甲種一等から三等まで十七人予定だったのである。)つまり、第四回終結から繋げると、これしかないという程の解答だったと言えるのだろう。
「あやかしの皷」/夢野久作/48ページ(2000/?/?読了)
新青年復刻版で最初の方に読んだ作品である。確か、2000年の10月くらいの読了だったろうか。懸賞二等當選作であり、詳しくは同年七號の「窓」の感想を見られたし。幻想小説であり、皷を中心に美しさをも感じる作品である。
新青年 大正十五年第十一號=一册六十錢
ラヂオと探偵號
「現場不在證明(アリバイ)」/角田喜久雄/14ページ(2001/1/15読了)
その名の通り、アリバイによる完全犯罪を扱った倒叙的探偵小説であり、アリバイ作りにはラジオ、電話などのアンテナが用いられている。
「山野先生の死」/大下宇陀兒/10ページ(2001/1/15読了)
小学校教諭の山野先生及び生徒二名の事故死に関して、不審な事実が持ち上がり・・・、という話。
「五階の窓」/國枝史郎/12ページ(2001/1/15読了)
合作探偵小説の五回目である。艶子を尾行した長谷川は驚くべき新事実を知ることになった。
新青年 大正十五年第九號=一册六十錢
「隅の老人」物語號
「神ぞ知(しろし)食(め)す」/城昌幸/4ページ(2001/1/13読了)
子守唄の出てくる感傷的普通の小説が最後の一行で一気に全ての意味を悟らせ「ハッ」と思わせる効果が素晴らしいショートショート
「第一義」/山下利三郎/18ページ(2001/1/13読了)
ある第一義を信とする教師がいたのだが、期せずしてそれに裏切られてしまった。その男の混迷極める不思議な脳内世界での話が主体になっている。ご都合主義的感が強いのが最大の欠点であろう。
「五階の窓」/甲賀三郎/(2001/1/13読了)
合作探偵小説四回目。瀬川艶子についての話とそれにも関わる長谷川探偵小説家の夢判断で事件はいよいよ収束へ向かいつつありそうだ。
新青年 大正十五年第八號=一册六十錢
探偵ユーモア集
「卒倒」/小酒井不木/5ページ(2001/1/12読了)
意地悪な女教師の話であり、最後は一応に痛快とも言えなくはないが、その痛快味も甚だ弱い物のように思われた。
「代表作家選集?」/久山秀子編/13ページ(2001/1/12読了)
これはユーモア探偵小説に相応しすぎる贋作集である。面白すぎるのだ。まず、「はしがき」で隼お秀が原稿を手に入れた経過の文章に始まる。で、第一作は(春の部)と称した『闇に迷く』だ。“隅田川散歩”作となっている。もちろん江戸川乱歩の『闇に蠢く』を意識したタイトルだろう。内容は《奥様》に始まる手紙を閨秀作家の住子がもらうという探偵小説で、「人間椅子」の贋作である。内容も乱歩テイストで押しは足らないものの面白い。ペーズ数は約五ページ。第二は(夏の部)は“鎗先(やりさき)潤一郎”作の「櫻湯の事件」だ。ペテンを扱ったもので二ページ。第三は(秋の部)の“興(きょう)が侍(さぶら)ふ”作の「畫伯のポンプ」だ。中身に「大下君の掏摸」「ニッケルの運賃」などの贋作タイトルも出てくるが、本格派だの、ウツチヤリ派だの、コントだの出てきて、対話型評論らしいのだ。三ページ弱。第四は(冬の部)“お先へ捕縛”作の「人口幽霊」はユーモア怪奇小説で二ページ強だ。
「悲しき郵便屋 =The Tale of Love Cipher=」/横溝正史/9ページ(2001/1/12読了)
音符を使った暗号に好奇心+その送り先のお嬢さんに恋してしまった郵便屋の可哀想なユーモア話。ちなみに私は再読であった。
「或るロマンス」/大下宇陀兒/13ページ(2001/1/12読了)
ユーモアが行きすぎて嘘つきの主人公佐利君とその反目グループの話。さて、ギャフンというのはどちら。
「百日紅」/牧逸馬/11ページ(2001/1/12読了)
あるちょっとした洒落の解釈から失敗に追い込まれた話。
「五階の窓」/森下雨村/18ページ(2001/1/12読了)
合作探偵小説の第三回である。カバンの発見や新事実などでますます意味不明的混迷に。
新青年 大正十五年第七號=一册六十錢
特選創作集
「窓」/山本禾太郎/50ページ(2001/1/11読了)
懸賞二等當選作である。記録調書を元にリアリステックに進走していく探偵小説で、この新青年でも初見のタイプのものであった。なお、この號には収録されなかったが、同列の二等當選作に夢野久作の「あやかしの皷」があるのだが、(一等は該当作無し)、乱歩が「窓」以外の全応募作を幼稚を一蹴したりしているのに対して、本格派の甲賀三郎が「あやかしの皷」を第一に押していうのが面白い。(※甲賀三郎の「当選作所感」のテキストはこちら)あと、平林初之輔は両者甲乙付けがたいとしながらも好みで「窓」を、小酒井不木と延原謙は両者を評価している。ちなみに編輯長の森下雨村は「窓」の方を買っており、ついでに「あやかしの皷」同列二等にした感があるようだ。加えて、乱歩が「あやかしの皷」の順位を三着以下にしていた点も考えると、甲賀三郎や延原謙などの評価がなければ、夢野久作のデビューが遅れていたと思うと、微妙な偶然で成り立つ歴史の不思議さをここでも感じざるを得ないであろう。
「印象」/小酒井不木/9ページ(2001/1/11読了)
女の復讐についての物語で、生まれる赤ん坊に印象が写りこむという恐怖である。但し、全然押しが足らず、怪奇味が全然不足している、としか言えないだろう。
「死三題」/牧逸馬/5ページ(2001/1/11読了)
「鉋屑」は死の象徴たる鉋屑に関する死の話。「ある作家の死」は小説の筋が現実にダブる死の話。「一つの死」は自殺しようとした男の死の話。この三題である。まぁ、「鉋屑」がやや面白い程度である。
「從弟の死−村松博士の手記−」/甲賀三郎/30ページ(2001/1/11読了)
なかなか複雑なプロットで構成された本格探偵短篇である。また甲賀らしく科学的な物も利用されている。秀作と言えるであろう。木村清名探偵シリーズ。
「五階の窓」/平林初之輔/18ページ(2001/1/11読了)
合作探偵小説の第二回である。事件は恒藤主任の推理と冬木刑事、長谷川探偵作家の推理などを中心に進んでいき、その様相を表しはじめた。
新青年 大正十五年第六號(五月號)=一册六十錢
新進作家集
「娘を守る八人の婿」/久山秀子/9ページ(2000/12/18読了)
隼お秀(本名:久山秀子)の若かりし大学時代の話。勿論内容はスリであるのはいうまでもない。
「月光の部屋」/水谷準/13ページ(2000/12/18読了)
怪奇か!? 現実か!? という興味深い事件が月光の部屋で起こり、二重構造がそれなりに楽しめる話。
「レテーロ・エン・ラ・カーヴオ」/橋本五郎/8ページ(2000/12/18読了)
垣根ある恋の秘密通信の話だったが、事実は・・・・・・という話。ああっ、哀れすぎるこの結末。恐るべきは遊戯に興ずる妖婦であり、最終手紙通信者ではない・・・・・・、といってもこれは哀れなる奴等の恐るべきお節介なのかも知れない。果たしてどちらにしても気の毒すぎることに変わりはないのであるが。垣根はある意味高すぎたのだ。
「祕密結社」/大下宇陀兒/12ページ(2000/12/18読了)
能率、省エネを好む主人公が似たような仲間と結社を作り、馬鹿なことにも一人一科目のカンニング結社を作った。それは幸いバレることもなく順調だったのだが・・・・・最後に主人公に襲いかかる錯誤とは?ハッキリ言って笑える話である。
「赤えひのはらわた」/荒木十三郎/13ページ(2000/12/18読了)
※題名の「えひ」は魚編+譚の右側の機種依存漢字である。
馬鹿息子のぺてん話。しかし馬鹿と言っても赤えいのはらわたトリックは、親どもを顔色変えさせ騙くらかしたのだから頭はいいのかも知れない。まぁ、大した話ではないのだが、結局その動機もペテンなのだろうか。なお作者は=橋本五郎。
「都會の神秘」/城昌幸/(2000/12/18読了)
演説調の都会の神秘による殺人・・・・・・しかし私的には面白いと思えなかった。。
「犠牲者」/平林初之輔/20ページ/(2001/1/9読了)
ささやかな幸福を待つばかりの今村が偶発的事件の渦中に巻き込まれ、人生をグチャグチャにされる。ちょっと現実として虚しさを感じさせる話
「桐の花」(小篇)/小酒井不木/6ページ(2001/1/9読了)
不木も編集部に謝罪の手紙を書いてるように、探偵趣味はほとんど見られないが、普通に恋の悪戯の話としてだけ見れば悪くはないだろう。
「銀三十枚」(下篇)/國枝史郎/20ページ(2001/1/10読了)
銀三十枚の秘密が判明するなどしたが、解決編は探偵小説としては物足りなさとしか言えなかった。
「五階の窓」/江戸川乱歩/(2001/1/10読了)
合作探偵小説の第一回である。ビルの五階の社長室の窓から落ちたと思われる西村社長を中心に本格推理形式の順調なスタートを切っている。
巻末の「編輯局より」の関連記事も一部引用する。なお署名は一記者になっている。
◆豫期したことではあつたが、合作小説は果然奇々怪々なる事件の幕を開けた。烱眼なる讀者の眼は主人公西村の死を中心に既に幾多の疑問と謎に逢着してゐるゝであろう。事件は如何なる方面に發展するか。編輯同人も亦諸君と共に次回を待ち兼ねてゐる。
新青年 大正十五年第五號(四月號)=一册六十錢
飜譯創作選集
乱歩の「火星の運河」六ページも収録。なお話末に乱歩の文章が載っていたので、引用させていただくと、
(お詫び)讀者が失望された如く、これは無論探偵小説ではない。一月ばかり私は健康を害してゐて、筆を執る氣力もないのです。併しこの號には、編輯方針から云つても、どうあつても何か書かねばならず、止むなく拵へものゝ難をさけて流れ出すまゝの易(い)についた。片々たる拙文、何とも申譯ありません。一言讀者の寛怒を乞ふ次第です。
あと巻末の「編輯後記」の一部記事も引用する。
◆本號は豫告のとほり、本誌と縁故の深い五氏の創作と飜譯を中心として編輯した。諸氏が多忙の中を割いて力作名譯を寄せられたことを感謝する。特に江戸川氏は東京へ引越し早々感冒の爲病臥中を推して、他雑誌を謝絶してまで執筆された。他ならぬ本誌との深い關係を思へばこそであろうと、原稿を持参された時には嬉し涙さへこぼれた。
「安死術」/小酒井不木/7ページ(2000/12/8読了)
安楽死を扱ったものだが今一つ足りない。ラストでほんの少々恐怖性が垣間見えた程度である。
「祕密の相似」/小酒井不木/7ページ(2000/12/8読了)
意外な展開ではあったが、大したこともない詐欺の話である。
「家常茶飯」/佐藤春夫/10ページ(2000/12/13読了)
知恵者の茶本の話。この男にかかると日常のちょっとした謎がたちどころなのだ。
「縣立病院の幽靈」/正木不如丘/18ページ(2000/12/13読了)
いわゆる怪談的な話の類なのだが、ただ長いばかりで面白みはない。
「銀三十枚」(中篇)/國枝史郎/22ページ(2000/12/13読了)
前篇の内容から大きく飛躍し銀貨三十枚を中心に物語を展開する。ユダの心に陥ってしまった主人公の運命や如何に?
新青年 大正十五年第四號(三月號)=一册六十錢
「銀三十枚(前編)」/國枝史郎/13ページ(2000/12/7読了)
イエス、ユダらを題材にした凄い話からスタート!次号でどうなるのかが楽しみである。
「チンピラ探偵」/久山秀子/14ページ(2000/12/7読了)
「隼お秀」もの。ややもすると悲しみも漂いそうな中にも痛快さがあって相変わらず快い。
「肉腫」/小酒井不木/5ページ(2000/12/7読了)
例のように医学ものだが、この作は凡作。面白み感じられず。
新青年 大正十五年第三號(新春増刊號)=一册一圓
探偵小説傑作集
例によって、巻末の「編輯局から」に森下雨村氏らしき記者の些か乱歩に関する記事が出ていたので一部引用する。
◆近頃「探偵小説時代」といふ言葉を聞く。江戸川亂歩兄が讀賣新聞の文藝欄でさういふ題下で探偵小説の流行を説けば、それと前後して春日野緑君が大阪社交クラブでやはり「探偵小説時代」といふ講演をせられたさうである
新青年 大正十五年第二號(二月號)=一册六十錢
「短篇集」/牧逸馬/4ページ(2000/12/7読了)
「深夜」「悲しき別離」「死を賭して」「赤い刄」「あひゞき」「愛すればこそ」「白日」「狹い道」を四ページに収録。つまり二行から半ページ程度の小話の連なりである。
「死人の欲望」/片岡鐵兵/11ページ(2000/12/7読了)
幽霊を扱った怪奇小説である。まぁ並で重みが全然足りない。
「奇蹟を望む」/水守龜之助/14ページ(2000/12/7読了)
なかなか面白い本格短篇と言える。ある心中らしき事件から複雑怪奇になっていく。
新青年 大正十五年第一號(新年増大號)=一册六十錢
探偵小説創作集
江戸川亂歩の「踊る一寸法師」も収録。10ページ。なお、タイトルの後、括弧して、探偵小品、と付けられていた。
他、日本人の創作探偵小説を十数つ収録している嘗てないほど豪華な号と言えるだろう。
「戀愛曲線」/小酒井不木/14ページ(2000/12/4読了)
もう圧巻としか言いようがない。単なる恐怖とも怪奇とだけとも言いきれない色々な感情が複雑に溶け合ったような不気味な恍惚感を与える・・・。まさに人外超越の学問、恋愛曲線!とにかく特に中盤以降の読み応えは圧倒的である。
「豫審調書」/平林初之輔/(2000/12/4読了)
なかなか良く出来た本格短篇だった。読む価値は充分あるだろう。
「あかはぎの拇指紋」/角田喜久雄/8ページ(2000/12/6読了)
錯誤も含め、話自体は大したものとは思えなかったが、文章的には必要以上に惹き寄せるものがあった。
「酩酊」/川田功/5ページ(2000/12/6読了)
ただの小篇で凡作だろう。面白みが感じられない。
「蝋燭」/水谷準/3ページ(2000/12/6読了)
ほんの掌編。蝋燭が消えたら命も云々という話が一転して・・・・・・更なる悲劇が、というもので面白くない。
「ニッケルの文鎭」/甲賀三郎/20ページ(2000/12/6読了)
傑作本格短篇であった。小間使い(女中?)による一人称形式も効果的であるし、判事?の錯誤も見物、甲賀三郎得意の専門を使った殺人事件のカラクリも面白く、そしてなによりラストのこの事件全体の真相、ここまで来ると素晴らしいとしか言えないであろう。