私と大乱歩の歩み (アイナットの場合)


 小学生低学年の時は、ホームズやルパン、二十面相シリーズや他、色々な児童書を読んだものです。だけれども正直な話、親に買って貰ったお気に入りの本は、王様シリーズやズッコケ三人組のような全然探偵趣味とは関係ないものが主流を占めていました。更に関係ないっぽい話でなんですが当時の魔女云々?という本で人肉ハムを扱った児童書があった記憶があります、子供ながら恐かった記憶が思い出されます。今なら曲がりなりにも乱歩愛好家のつもりの私のことですから、人肉のハムと言うと、あの盲獣の狂的所業をありありと思い浮かべるのは言うまでもないことでしょうが、幼い記憶領域にはその物語が焼き付けられているわけです。

 前段のように小学校低学年時代は探偵趣味は弱かったとはいえ活字ばかり読んでいて漫画興味は少なかったのです、ところが小学校高学年以降の私は転落の憂き目です。極端に漫画に傾倒してしまったのです。特に五年生〜中学生辺りまでは掛け値なしに漫画のみに近かったかも知れません。今思うと何という勿体ない時代だったでしょうか。とは言え実に今持っている漫画やお気に入り漫画、未だ集めている漫画の類は、これは範囲を高校あたりまで広げますが、例外一つを除いてこの時代に興味持ったもの及びその派生物に限定されるのです。そう考えると、漫画時代とは言え、なかなか感慨深いものになります。

 おやおや話がずいぶんズレてしまっているな、とお思いのウンザリ顔のそこのあなた、何とぞご安心ください、私の高校時代、つまり1994年の乱歩青年物との出会いの話に移りますので。その1994年といえば、言わずと知れた乱歩生誕百年の年で日本中が乱歩に酔いしれ、映画やテレビなどにも大いに取り上げられました。そしてご察しの通りです。間接的に私もその影響を受けたのでしょう。まず福岡市天神(神戸の三宮、京都の河原町、東京の渋谷のような所)の紀伊国屋書店で春陽堂の『魔術師』『大暗室』を購入したのがスタートでした。当時創元推理文庫は確か8冊程度しか出ておらず、唯一全部出ていた春陽堂を否応もなく選択した覚えがあります。それにはこういうエピソードがあるくらいです。『大暗室』まででその面白さに取り憑かれてしまった私は地元の町内に乱歩本が売ってないものだから、天神に出かけるという姉に購入を頼んだのです。そうすると、連絡ミスが生じたのでしょう。東京創元の『蜘蛛男』と『魔術師』を買ってきました。そこで読みやすく挿絵付きの創元に乗り換えればいいものを、私は短篇が混ざるとダブるなァと考え、残りは春陽オンリーで集めたわけです。ちなみにミスでダブってしまった『魔術師』、創元を手元に残し、春陽の方を姉の友人に上げたような記憶がありますがハッキリとはしません。ちなみに姉も乱歩ファンなのは言うまでもないでしょう。ともかくもそういうことがあったわけで、私は未だ春陽版『蜘蛛男』は唯一読んだことがないのです。その後、春陽集めの方はその『蜘蛛男』と前述の『魔術師』以外の乱歩二十八冊を順当かつアッという間に集めて読んで満足してしまいました。ちなみに当時の好みは明智小五郎ものに傾倒する向きが強かった気がします。蛇足的につけ加えると、高一まで数学人間で漫画生活の弊害からか国語は大の苦手だった私は、乱歩のおかげで強靱な国語力を身につけることができました。この辺りも大乱歩に感謝する次第なわけです。ただ高校時代には乱歩単独の青年物しか入手しませんでした。春陽堂の連作シリーズがあるのは勿論知っていましたが、そのうち買おうと思ってたうちに大半が絶版になり、後悔したものです。ちなみに未だに全部集めきれていません。代作シリーズ2冊(『蠢く触手』及び『覆面の佳人』)は浪人時代に購入し、概ねYゼミのある博多まで行く電車の中で読んだ覚えがあります。

 まぁ、このようにして、1999年2月17日『乱歩の世界』の誕生日を迎えたわけです。その後はそう私の乱歩知識もいや探偵小説、推理小説知識についても、このサイトともに強化されていきました。ミステリに関しては2年前の私とはもはや比べものになりません。いえ今がそんなに凄いわけではないのです、2年前が素人+に過ぎなかったわけです。その辺は掲示板の過去ログあたりを見ても一目瞭然だと思います。最後に無理にまとめ上げますが、決意表明、今後も乱歩道/探偵道まっしぐらで行きます。ではこのサイトが地球人民の潜在的探偵趣味を解放させることに少しでも寄与できることを信じて、駄文の筆を置きます。ここまでダラダラ文読んでくださった方々ありがとうございました。(2000/12/11 アイナット 生)

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