平成11年2月25日発行(株式会社ゆまに書房)
このサイト『乱歩の世界』の特性上、江戸川乱歩分のみの説明(谷崎・高見は省略)をいたします。ご了承ください。
この本に対する私の備考
大乱歩は昭和四十年七月二十八日に亡くなられた。この本はその追悼文を集めたものである。
全編それなりに興味深いものがあったが、特に前半の山田風太郎までのところ、殊に横溝正史、角田喜久雄、山田風太郎の追悼の文章が非常に興味深いといえるだろう。特に横溝正史は手元に残っている乱歩からの戦前の手紙を全て引用しているので、興味深さはダントツのピカ一である。後半部においては、好きな作家の書いている文章は興味深く読めるが、名前すら知らないような人の文となると、いまいち顔が見えず興味は少なくなってしまった。まぁ、この辺は私の知識不足の仕業以外の何者でもないわけだが・・・。で、全体的に見ると、乱歩の戦後の色々な方面への付き合いの深さを改めてマジマジと見ることが出来て、十二分に満足出来る。もちろん追悼文だから角田氏のラストのように涙を誘うような文章も多々あり、それでいながら山風のは極端としても酒飲みの思い出話などでは思わず微笑んでしまったりする場合も多い。まだ追悼文を読んでいない人はこの本を図書館などで探してみるのもいいかと思われる。
収録されている追悼の言葉
木々高太郎『江戸川乱歩氏を悼む』
『朝日新聞』昭和四十年七月二十九日号
(新聞記事そのまま抜粋)、一ページ
荒 正人『日本の探偵小説確立 江戸川乱歩の死をいたむ』
『読売新聞』昭和四十年七月二十九日号
(新聞記事そのまま抜粋)、一ページ
大井 広介『偉大なる産婆役』
『東京新聞』昭和四十年七月三十日号(夕刊)
(新聞記事そのまま抜粋)、一ページ
中島河太郎『愛書家乱歩』
『日本古書通信』三〇−九(昭和四十年九月)
(雑誌記事抜粋)、一ページ
伊藤 秀雄『乱歩邸訪問記』
『涙香外伝』(平成七年六月 三一書房)
九ページ
横溝 正史『乱歩書簡集』
『推理小説研究』創刊号(昭和四十年十一月)
十五ページ
角田 喜久雄『乱歩さんの臨終』
『推理小説研究』創刊号(昭和四十年十一月)
三ページ
山田風太郎『十五年前』
『推理小説研究』創刊号(昭和四十年十一月)
三ページ
以下『乱歩氏をしのぶ』というコーナーに順不同で乱歩に関わりのあった作家さんたちが半ページくらいの文章を寄せている。
上記横正、角喜久、山風の追悼の文同様に『推理小説研究』創刊号(昭和四十年十一月)に収録。
松本 清張『江戸川乱歩を惜しむ』
高木 彬光『乱歩先生のこと』
千代 有三『はなやかな弧影』
朝島靖之助『また逢う日まで』
戸川 貞雄『乱歩さんは本もの』
青田 勝『失われた支え』
九鬼 紫郎『後輩への配慮』
黒部 竜二『慈顔 忘れ得べき』
宇野 利泰『乱歩先生と英米の作品』
香住 春吾『乱歩先生への借り』
植草 甚一『借りた本』
島 久平『江戸川乱歩先生の思い出』
邦光 史郎『乱歩のあとに乱歩なし』
氷川 瓏『江戸川先生の思い出』
鷲尾 三郎『忘れえぬ思い出』
楠田 匡介『酒』
阿部 主計『とうとう逝かれた』
鹿島 孝二『観音様の掌』
双葉十三郎『交詢社ビルのころ』
徳川 夢声『二本立て』
佐々木久子『江戸川先生のこと』
ふるはたたねもと『江戸川乱歩を偲ぶ』
陣出 達朗『二銭銅貨の因縁』
島田 一男『二十年』
水谷 準『編集者としての回想』
日影 丈吉『幻影人無し』
大河内常平『申し訳なし』
香山 滋『先生、どうぞ身近に』
菊村 到『ある思い出』
鮎川 哲也『偶感』
土屋 隆夫『江戸川乱歩先生の思い出』
新章 文子『ご冥福をお祈りして』
飛鳥 高『思い出すこと』
山村 正夫『鬼の言葉』
樹下 太郎『合掌』
佐賀 潜『乱歩先生の思い出』
星 新一『こまかい心づかい』
加納 一郎『骨の音』
笹沢 佐保『誓う』
多岐川 恭『七年前のこと』
黒沼 健『好敵手いまやなし』
佐野 洋『怪物と慈父』
都筑 道夫『好きな乱歩作品』
中薗 英助『公正な眼』
高橋 泰邦『私の乱歩先生』
天城 一『乱歩先生の思い出』
橋本 乾三『探偵作家と刑事探偵』
渡辺 剣次『無題』
田辺 南鶴『乱歩先生に奉る』
戸板 康二『あたたかい微笑』
津川 溶々『乱歩さん』
広瀬 正『四十年前』
小酒井 望『乱歩さんの思い出』
中島河太郎『乱歩死後のミステリー界』