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投稿時間:02/10/10(Thu) 22:14
投稿者名:小笠原功雄
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タイトル:小劇団役者「二十面相」
映画やテレビ、ビデオにDVD、大劇場…と芝居を観るのに便利な媒
体はいくらでもあるのに、小劇団や小劇場という不思議な物とそこに
集まる人がいる。舞台に立つのは明日のスターを目指す若者や、大舞
台の脇役よりも小さな舞台でも数日限りの主役を選んだ人もいる。
彼らは決してこの舞台の芝居で飯を食えている訳ではない。諸々の
端役脇役やアルバイトすらしながら、その収入をこの舞台に注ぎ込む
。しかし彼らがそうしてまで演じる芝居の内容も考えてみれば妙なも
のだ。生身の人間が演じるというのにリアリティとはかけ離れた非日
常的な設定やオーバーアクション、変な演出ばかりだ。テレビや映画
とは程遠い世界だ。これって怪人二十面相のやってる事に似てないだ
ろうか。
非常識な、文字通り現代で言うところの劇場型犯罪パフォーマンス
、得られるお宝よりも元手の方がかかってるとしか思えない大仕掛け
。何が望みかと思えば世間を驚かすことに喜びを見出す(近藤正臣主
演の舞台「アゲイン〜怪人二十面相の優しい夜」はまさにこの、二十
面相像を演劇で再構成した世界)。
しかし「劇場型犯罪」と小劇場が異なるのは明確な観客の存在だ。
これもまた妙な連中だ。ろくに足も伸ばせない座布団すわりでとなり
の観客とも限界まで隙間を詰める。そんな不自由な思いをしてまで2
、3時間も芝居を観る。ひいきの役者を追いかける。この観客は私達
、いい年こいて明智だ小林くんだと騒いでいる愛読者達だ。
そして極めつけに、二十面相は決してスターにはなれない。人質を
とろうが爆薬を準備しようが催眠術をかけようが、どれ程手間暇かけ
ても最後は明智に完膚なきまでに敗れ去る。カーテンコールもスポッ
トライトも明智という天性の「スター」の為にある。蜷川幸雄演出の
大舞台に抜擢されるのは明智小五郎だけだ。
演劇人達にとって「怪人二十面相」は舞台俳優の哀愁そのものでは
ないのだろうか。