乱歩小説感想掲示板過去ログ
投稿時間:02/12/21(Sat) 19:45 投稿者名:黄光明 Eメール:Brian_Wong@jp-t.ne.jp URL : タイトル:Re: (「屋根裏」と「人間椅子」ネタバレ含む)「屋根裏の散歩者」は純粋怪奇小説として発表された方が傑作だった? 「屋根裏の散歩者」は、やはり倒叙形式の本格探偵小説であろう。確かに屋根裏徘徊と言う怪奇味はあるにしても、あくまで謎解きが主眼に置かれているからである。つまり、謎解きに主眼が置かれているから本格探偵小説なのであり、この際、犯罪の実行性のリアリズムなんて、畢竟どうでもいいのである。犯罪手口にリアリティが無いから本格探偵小説でなく、怪奇幻想小説だと分類されるならば、古今東西の探偵小説の大半は怪奇幻想小説になってしまうであろう。現実に海外ミステリーの殺人トリックにおいては、実際には使えないもの、それを知った時点で笑ってしまうようなばかばかしいものもあるにもかかわらず、そのトリックの現実性だけを捉えて、本格探偵小説でないと言うのは、少し暴言と言うものであろう。ただし、「屋根裏の散歩者」における明智小五郎は、この時点ではまだ探偵ではなく、いわゆる書生然とした高等遊民、今で言えばプータローだったので、探偵小説と言うよりは、推理小説と言った方がむしろ正しく、だとすれば、本格推理小説と言うのが最も妥当であろうと思われる。ただ、江戸川乱歩の小説は、自身が土蔵に閉じ篭って小説を書いてたと言うエピソードがあるように、そのコンセプトは限りなく変格怪奇幻想小説的な「幽閉」、「閉じ篭る」にあります。「屋根裏の散歩者」や「陰獣」に見られる屋根裏徘徊も、屋根裏に閉じ篭っているわけですし、そう言う観点から見れば、この二作品以外の「人間椅子」「鏡地獄」「押絵と旅する男」「芋虫」「妖蟲」「悪魔の紋章」「白髪鬼」「お勢登場」「幽霊塔」など、全て「幽閉」がコンセプトになっております。「人間椅子」「鏡地獄」「押絵と旅する男」「芋虫」「お勢登場」あたりは、確かに変格怪奇幻想小説ですが、。「屋根裏の散歩者」「陰獣」」「妖蟲」「悪魔の紋章」「白髪鬼」「幽霊塔」あたりは、変格的怪奇幻想小説的要素を含んだ本格探偵(推理)小説だと言えましょう。 |