昨日のオフで、「怪人二十面相」を購入して、帰りの電車の中で半分ほど読み、残りも夜中に読み終えてしまいました。少年ものとはいえ、乱歩が全力で執筆に取り組んでいる姿勢がよくわかりました。なにより、少年読者の読解力をあなどっていないこと。プロットも、書き直せば大人向けの作品にもそのまま使えそうなものを惜しげもなく投入している感じです。これが、当時の少年たちに大きく受け入れられたのもうなずける出来です。文章がやさしいからといって、私が同じ水準のものを書けといわれても書けませんもの・・・。乱歩の文体は、もともとわかりやすく、子供たちにも理解できそうな作品を書けそうな下地は十分あったと思います。それが実現した第一号作「怪人二十面相」、そしてそのシリーズは、偉大な作品であったと思います。人生の入り口に当たる少年・少女期に良い作品を読むことは、教育上も非常に有益です。実際、私も少年時代乱歩の作品を愛読し、読書の魅力に大いにとりつかれたものでした。後になって考えてみると、難しい大人向け文学作品を読む下地がその時に知らず知らずの間にできていたようです。その点、子供たちにも親しみやすい面白い作品を提供できた乱歩の功績の面も大きく評価しなければならないかと思います。エロ・グロ・不気味な大人向け乱歩作品の味もいいですが、少年ものを書いた乱歩もまた偉大な乱歩そのものであったのではないでしょうか。