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投稿時間:02/11/23(Sat) 16:38
投稿者名:きーす
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タイトル:「化人幻戯」とアイリッシュ「幻の女」 
「化人幻戯」。読んでる途中で感じましたが、渇いた文体が戦後の推理小説という雰囲気を醸し出してます。つまり、松本清張や森村誠一などの小説を読んでいる時と同様の感覚を起こさせる文章だということです。「黒蜥蜴」など戦前の香りがむんむんする作品から20年後、しかもその間に戦争がはさまっている。この20年で、大きく時代は変わったのですね。乱歩の小説の特徴は、書かれた時代が作品に影響しているということだと思います。

さて、「幻の女」の影響を受けているのではないかと思われる個所ですが、そもそも題名に「幻」の字を使っているところに加え、真相解明シーンの描写の手法が似ているのです。ここでは「幻の女」を未読の方のために、これ以上踏み込むのはやめておきます。
ウィリアム・アイリッシュの「幻の女」は、戦争直後に乱歩が苦心して入手して、乱歩が夢中になって読んだ作品です。現在でも「海外ミステリ・ベスト100:ハヤカワ文庫名作ガイド」の本で2位にランキングされるくらいの名作です。乱歩の感想によると「昭和二十一年二月二十日読了、新しき探偵小説現れたり。世界十傑に値す。不可解性、サスペンス、意外性、申し分なし」とのことです。ぜひ一度、お読みになってみては?