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☆−黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では? - きーす 02/11/17(Sun) 09:27 No.18
    └Re: 黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では? - 花崎マユミ 02/11/26(Tue) 21:41 No.25
      └レスありがとうございます - きーす 02/12/01(Sun) 06:18 No.27
投稿時間:02/11/17(Sun) 09:27
投稿者名:きーす
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タイトル:黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では?
はじめまして。きーすと申すものでございます。
小中学校の頃、学校や公立の図書館でよく二十面相ものを愛読しておりました。大人向けの乱歩には時々関心がいき、角川文庫版の黄金仮面がお気に入りで、その本に同時に収められた「何者」「心理試験」とともに折りにふれて繰り返し読んでいました。そして、ここのサイトその他で乱歩の作品案内に触れ、つい昨日創元の「黒蜥蜴」「蜘蛛男」「魔術師」「吸血鬼」を購入し、さっそくその日のうちに「黒蜥蜴」を読了したところです。
昭和九年発表のこの作品。創元の文庫には当時の挿絵も挿入されており、それが昭和初期のあのレトロな雰囲気を伝えてくれる挿絵でして、内容の妖しいムードをよりいっそうかきたててくれます。筋立てとか、スーパーヒーロー明智小五郎の活躍のしかたとかに、昭和初期当時の日本人の好みがよく反映されている、換言すれば昭和初期という時代を見事に描き切っているのが乱歩のこのころの作品の特徴なのではないでしょうか。あの乱歩の妖しい世界の魅力、それは戦前の時代の雰囲気と密接に結びついてると思います。
さて、黒蜥蜴ですが、黄金仮面を書いたあとの休筆明けに書かれたこの作品、33歳にして夜トイレにいけなくなるような不気味さと、緑川夫人と明智とのゲーム的な知恵比べ、冒険活劇的要素、そして緑川夫人の妖艶さと最後の明智への恋慕、こういった要素が渾然一体となって私の心に覆い被さってきました。この作品が三島由紀夫によって戯曲化されたり、映画化されたりしたのも納得の傑作であることを、私自身も読んで体感したことになったのです。三島氏は、解説によれば明智と黒蜥蜴との恋愛に重点をおいて脚色したそうですが、逆にその恋愛の要素をあえてこの作品から抜きさったと仮定してみた場合、名探偵と悪人との知恵比べの活劇という要素が残ると思います。そう、その要素こそ、二十面相ものの主題ではありませんか。確かに、黄金仮面でのルパンこそが、二十面相のモデルとなったのは疑いありませんが、私にとっては、物語の構成のしかた、筋立ての運び方、醸し出す雰囲気は、黒蜥蜴のほうがより二十面相シリーズに近いものであると感じられます。事実、黒蜥蜴執筆のわずか二年後に「怪人二十面相」が発表されています。
まだ、ほかの3つを読んでいませんので、続きはまたにしたいと思います。
それにしても、伝えたいことが言葉足らずで上手に表現できないもどかしさよ・・・・・。

投稿時間:02/11/26(Tue) 21:41
投稿者名:花崎マユミ
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タイトル:Re: 黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では?
きーすさん、こんにちは。
確かに黒蜥蜴は、怪人二十面相の原型かも知れませんね。と言うより、女性版の怪人二十面相と言った方がいいかもしれません。女性ながら明智探偵と互角の腕と才能を持ち、時には明智探偵も黒蜥蜴にしてやられたりしますが、しかし黒蜥蜴も所詮は女、明智探偵の男の魅力には勝てなかったみたいです。私もまだそれほど乱歩作品を読んでいないので、あまりはっきりとは言い切れないのですが、黒蜥蜴の原型は、「お勢登場」のお勢にあるのではと思います。あの作品では、お勢がかくれんぼで長持ちに隠れて出られなくなった夫を見殺しにしてしまう話ですが、夫の弟と不倫をしていていたというのだから、相当な悪女です。お勢は見事この時点では完全犯罪を果たしますが、乱歩は、「お勢の完全犯罪を成立させるわけにはいかぬ。読者諸君も納得が行かぬであろう。この続きは北村お勢対明智小五郎の対決と言う形で決着をつけるつもりである。」というような要旨のコメントを出していました。この続編は、実現しなかったみたいですが、私はこの続編が、黒蜥蜴に形を変えて実現したのではと勝手に解釈しています。お勢を原型として、乱歩作品には何人かの悪女が登場しますが、大半は本格物で、最初は犯人が男か女かわからないものもあるので、具体的に言うとネタばらしになるので、言うに言えないというもどかしさを、きーすさん同様感じます。

投稿時間:02/12/01(Sun) 06:18
投稿者名:きーす
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タイトル:レスありがとうございます
お勢もずいぶん出世したものですね(笑)。緑川夫人は暗黒街の女王ですものね。なかなかいい解釈だと思います、マユミさん独特の。彼女の出世の間にはずいぶん苦労もあったことでしょう。別作者版で、その間の物語を創作できれば面白そうですが・・・・・。別作者版(贋作とは言いたくない)で成功した例として、ボアロ&ナルスジャック作のルパンものがあります。これは、ルブランの作品にも劣らぬ出来映えで、好評を博しました。