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投稿時間:02/02/11(Mon) 23:13
投稿者名:アイナット
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タイトル:キ説「大暗室」
この『大暗室』は、ある点で特異であると思います。

それは親を殺された復讐鬼の有明友之助と、骸骨のような恐怖の久留須老人が、なぜかヒーローである点です。
復讐に燃えた悪漢は本来なら、性格が屈折した悪役として、登場するはずではないでしょうか? 「魔術師」しかり、「吸血鬼」しかり、「悪魔の紋章」しかり、それに「白髪鬼」もそうでしょう。
更に復讐の対象が、代変わりしている点も見逃せません。悪漢大曾根五郎の息子・大曾根龍次は果たして本当に純粋なる悪人なのでしょうか?
何かの国家権力を守る為のでっち上げに利用されていないでしょうか?
東京市の地下を掘り進めていたのは、本当は帝都の後の姿を予期した先見の明からではなかったでしょうか? つまりは大曾根龍次の大暗室は帝都への爆撃から市民を救うための最重要機関だと考える事が出来ます。
しかし内務省にとってみれば、けしからん話だったのです。昭和13年の段階で、いたずらに日本が米英に駆逐される事を喧伝し、大切な臣民を大曾根の地底に避難させようとする行為。しかも大曾根は、反政府的な訳ですから、入り口謎の大暗室に隠れながら、姿なきやり方で大々的に帝都の末と、大暗室の安全性と平和を喧伝し、密かに有名な頭脳等の招集を行うわけですから、当局にしてみれば、とんでもない反逆罪になるわけです。
しかし如何せん龍次個人の力では、なかなか地上市民への警告が浸透しません。そこでいち早く地上の東京市民を救うために新聞記者六人をユートピアに案内し、その絶対的安全性と住みやすさの宣伝をしようとしたのが間違いのもとだったのです。当局に利用された復讐鬼・有明友之助にバレてしまうという結果に。と言うのも、悲しいかな魔界見聞記の記者たる北川氏は内務省と深く関係していたのです。この辺りの情報力の差が大曾根の敗北だったのです。あとはご存じの通りでした。

えっ、証拠ですか? 有村青年は、はっきり言って星野真弓に意味不明な正義を自慢げたっぷりに喋るなどその性格は破綻しています。ある意味悪役に相応しいと言えるでしょう。
また新聞記者が明智小五郎の名前に誘われた中野邸の住所が中途で変わったりと、何か怪しい所が見られます。つまり内務省一派による国家反逆の度が強すぎた為に、国民にこの事件を説明する為に辻褄を合わせたわけですが、この点に齟齬を来しているのは、治安維持の名目で、百万部の《キング》誌上で内務省に無理やり書かされた乱歩がせめてもの対抗意識を燃やしたメッセージだったのです(余りにも無理すぎる論理だ〔爆〕)。

以上、なんちゃって「大暗室」の真実でした。どう考えてもあまりにも無理やりな論理です(爆)。