乱歩作品名言集の過去ログ4

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僕は決して君のことを警察へ訴えなぞしないよ。ただね、僕の判断が当たっているかどうか、それが確かめたかったのだ。君も知っている通り、僕の興味はただ『真実』を知るという点にあるので、それ以上のことは、実はどうでもいいのだ。
  黄光明さん. 2001/11/03 02:11:39 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:屋根裏の散歩者
発言者:明智小五郎
理由:明智小五郎が、友人郷田三郎の犯罪を見破った時に言った台詞。この頃の明智は、いわゆる私立探偵ではなく、書生くずれの高等遊民だったので、明智の知的推理好奇心が満たされれば良かったので、郷田を逮捕したり警察に突き出す事には興味がなかったわけである。だけど、それじゃあ明智も既に犯人隠匿罪であり、よく私立探偵なんかやってられたもんだ!
 
軽蔑するわね、僕だって車くらい動かせるさ。
  黄光明さん. 2001/10/26 00:30:31 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:黒蜥蜴
発言者:黒蜥蜴
理由:タクシーの運転手に化けて車を運転して来た黒蜥蜴に、部下の潤一青年が驚いて、「マダム、あんた運転できるんですか」と尋ねた時、黒蜥蜴が答えた台詞。これこそ時代を感じさせます。今では女性運転手はタクシーやバスはおろか、新幹線にも女性運転士がいます。近々JR中央線にも女性運転士がデビューします。ちなみに榎田実由紀と言う24歳の女の子です。
 
ごまかしたってだめだよ。ぼくがエレベーターの運転ぐらい知らないと思っているのか。
  流舞乱さん. 2001/10/25 23:26:03 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:怪人二十面相
発言者:明智小五郎
時代を感じさせます(笑)。
 
ほら見たまえ、これが探偵の七つ道具だ。わしはどんな時でも、これだけは肌身離さず持ち歩いているのだよ。
  黄光明さん. 2001/10/23 23:48:06 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:妖蟲
発言者:三笠竜介
理由:老探偵三笠竜介と相川守青年が赤さそりによって地下牢へ突き落とされ、何とか脱出する方法を模索していた時に、探偵がポケットから小型の革製の容器を自慢げに取り出した。そこには七つどころではない、二十種に余るさまざまな小型の小道具が巧みに組み合わさって、なるべく嵩張らないように収納されていた。万能鍵束、倍率の大きい小型虫眼鏡、縄梯子、鋸付万能ナイフ、指紋検出用具、超小型ライカカメラ、注射器、薬品等、だけどこれだけのものが小型のバッグに、しかも背広の内ポケットに納まる訳がないじゃないか!
 
運命の鬼めは、甘い獲物を与えて、人の心をためすのだ。そして、ちょっとでも心にすきがあったなら、大きなまっくろな口をあいて、ガブリと人をのんでしまうのだ。おたふくの面のうしろ側には、こわい鬼の面が隠されているのだ。
  流舞乱さん. 2001/10/18 01:10:59 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  白髪鬼
大牟田敏清
人間の二面性を見事に言い表しています。幸せ一杯の中にあるとき、晴天の霹靂
の如くあらわにされる、愛していたもの、信じていたものたちの醜悪な素顔...
かのシェイクスピアも『マクベス』で「容貌で人の心術を知察する法は無い」(
坪内逍遥訳)と書いていますが、まさに正論です。表の顔など、醜い心の素顔を
覆い隠すおたふくマスクにすぎないのです・・・

 
ほら、そういうことをおっしゃる。だから君は手品師のトリックにかかっているというのですよ。はたして犯人がわかりきっているのでしょうかね。そうではなくて、われわれは犯人も、犯罪の目的さえも、ほんとうにはわかっていないと言った方が正しいのですよ。
  黄光明さん. 2001/10/14 20:15:01 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  緑衣の鬼
乗杉竜平
探偵乗杉が、友人の探偵作家大江白虹が推理に行き詰まった時、手品の例え話で、手品師が舞台のトリックを見破られないために、舞台前方から客席に強い電灯をつけて、見物の視力を弱めるという手段を取ると言う話をした。それはつまり、大江が、ある種の感情に惑わされて、手品師の手段にかかっていることを衝いた。もっとハッキリ言うと、大江が本編のヒロイン笹本芳枝にある種の情熱をもっていることが、事件の本質を間違った方向に見誤っていると言うことを婉曲に皮肉っていた。それに大江が反論して、と言うか、自分の芳枝に対する感情を乗杉に見破られた照れ隠しに、「ですが、この事件は犯人がちゃんとわかっていて、ただそいつを捕縛するだけの仕事ですから、探偵の智恵をはたらかせる余地は少ないように思いますが」と反駁したのを受けて、乗杉が吐いた台詞。
一見単純に見える事件の複雑怪奇さ、奥深さを感じさせる名言である。
 
坊や、うっついでちょ。うっついでちょ。母ちゃまはね、女王様になったのよ。こんなに宝石があるのよ。ホラ、うっついでちょ
  黄光明さん. 2001/10/13 01:17:15 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:白髪鬼
発言者:大牟田瑠璃子
理由:妻瑠璃子と妻の愛人川村のために殺され、墓の中で蘇生した大牟田は、その恐怖のあまり白髪の老人になってしまった。復讐を誓った大牟田は、川村を殺し、瑠璃子も洞窟の墓に閉じ込めた時、瑠璃子は発狂して、川村との間に出来て自ら始末した赤ん坊の死骸を抱いて、上の台詞を言いながら、子守唄を歌っていた。「うっついでちょ」は「美しいでしょ」の意味。乱歩の小説には、今の人間には即座には解りにくい表現が時々出てくる。言葉がもはや古語になりつつあるのだ。乱歩の小説もだんだん古典文学になりつつあるのかなぁ?
 
いかに狂人の病的な魂だといって、物理学の法則を破って行動することはできません。
  十二階さん. 2001/10/12 23:51:42 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:緑衣の鬼
発言者:乗杉竜平
理由 :江戸川乱歩の根底にあった信念、探偵小説に対する揺るぎなき姿勢が現れているように思います。
 
ハハハハハハハ、君はつらいように見えるかね。わしは愉快なんじゃよ。軍人以外の職業で、探偵ほど戦闘的なものはありゃしない。命がけの戦いだ。知恵という知恵を絞りつくし、力という力を出しつくしての戦闘じゃ。世の中にこんな面白い仕事があるもんか。
  黄光明さん. 2001/10/06 21:05:03 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:妖蟲
発言者:三笠竜介
理由:老人怪探偵三笠竜介と相川守は、赤さそり一味をあと一歩で逮捕寸前にまで追い込んだ時、赤さそりの思わぬ伏兵のために三笠探偵が負傷し、入院した時、見舞いに来た相川守が「探偵という仕事もつらいですね。賊に傷つけられて入院なすったそのことを、すぐに又探偵の手に逆用しなければならないなんて。」と言った時に、三笠探偵がその言葉を受けて答えたのが上の台詞。なるほど言いえて妙である。老人探偵の探偵と言う職業に対しての前向きな誇りと常に強敵に立ち向かう旺盛なチャレンジ精神をひしひしと感じさせてくれる力強い名言である。
 
ああ、むごたらしい。何をなさるの。いけません、いけません
  黄光明さん. 2001/10/04 20:27:06 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:大暗室
発言者:有明京子
理由:当時2歳の悪魔の子大曽根竜次が、ペットの犬の眼を手でほじくって血だらけになったのを見て、美しい母京子が竜次を叱りつけた言葉。その後竜次は美しい京子のお膝に乗せられて丸出しにされたお尻をしたたかペンペン叩かれたことは言うまでもない。勿論原作にはそこまで書かれていないが、読者と言うものは須らく小説の行間を読み取り、発想や推理を展開させていくべきである。特に乱歩氏のような探偵小説の類いでは。
 
佐藤春夫の『田園の憂鬱』をください
  黄光明さん. 2001/10/04 20:18:25 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:ぺてん師と空気男
発言者:伊東錬太郎
理由:本屋に行ってこう言う台詞は当たり前。しかし金物屋に入ってこう言う台詞を吐いて、店員がびっくりするのを楽しめるような図太い奴はそうはいない。例えば薬局へ行ってナプキンをくれだのスキンをくれだの、恥かしくて言いにくいのに、違う店に入ってこんな場違いな事を言うのはもっと恥かしいし、度胸がいる。しかしそこが我等がプラクティカル・ジョーカー伊東錬太郎氏である。プラクティカル・ジョーカーとは、今で言ったら「どっきりカメラ」の仕掛け人みたいなもので、見知らぬ人にいたずらを仕掛け、相手の驚いた反応を見て楽しむと言う悪趣味な趣向である。どうせなら金物屋に入ってそれこそ「スキンを下さい」とでも言った方がもっと面白い。
 
あら、いやなおじさん。こんな所でなにをまごまごしてるのよ
  黄光明さん. 2001/10/04 01:01:22 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:木馬は廻る
発言者:お冬
理由:木馬館のラッパ吹き格二郎は、いい年コイて切符売りの少女に密かな恋心を抱いてしまう。スリがお冬の服のポケットに押し込んだ包みを格二郎はさりげなく抜き取り、それが札束だと悟った時は、やましい気持ちとこの金でお冬に好きなショールも買ってやれる、一緒に食事も出来ると半分やましさと半分わくわくした嬉しさでうろちょろしていたのを当のお冬に見られて、そんなふうに言われてしまって、気恥ずかしくなった格二郎の寂しくも恥かしい快楽がおそってくるのだった。
 
おれの味方はないのか。女どもはおれのあれほどの愛撫を忘れたのか。おれと生死を共にする者はついてこい。
  流舞乱さん. 2001/10/04 00:37:36 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  大暗室
大曾根竜次
ついに断末魔の時を迎えた大曾根。彼に殉じようと後を追う美女たち・・・地底
王国崩壊のフィナーレ!
 
彼と彼以外のすべての人間とは、まるで別種類の生物であるように思われて仕方がなかった。この世界の人間どもの、意地わるのくせに、あつかましくて忘れっぽい陽気さが、彼には不思議でたまらなかった。彼はこの世において、全く異国人であった。彼はいわば、どうかした拍子で、別の世界へ放り出された、たった一匹の、孤独な陰獣でしかなかった。
  流舞乱さん. 2001/10/03 23:39:21 [E-MAIL] [WEB-SITE]
 
語り手
世間とうまく付き合えず、自己満足のヴァーチャルな世界に耽溺していく主人公
柾木の心情をよく表現しています。外国の諺に「孤独な人は悪魔にさらわれてし
まう」というのがありますが、彼の無残な運命を思うと肯けます。

 
What ho! What ho! this fellow is dancing mad! He hath been bitten by the Tarantula.
  黄光明さん. 2001/10/03 20:35:48 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:恐ろしき錯誤
発言者:ナレーター
理由:完璧にPoeの小説"The Gold Bug"の冒頭に載っていた文の一説を引用したと言おうかパクったやつ。Poeの小説も、"All in the wrong"というポーリンの文章から借用している。要するに、乱歩氏は、Poeのファンだぞ、英語も知ってるぞ!教養があるんだぞと自慢しているためにわざわざ載せたとしか思えない一文である。
 
実業家平田氏の交友録に、素人探偵明智小五郎の名前が書き加えられたのは、こうしたいきさつからであった。
  黄光明さん. 2001/10/03 20:23:18 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:幽霊
発言者:ナレーター
理由:本編最後のこの一文が無ければ、平田氏を苦しめた辻堂の幽霊の事件の謎を見事に解いた青年が、素人探偵明智小五郎だとはまさか気がつきませんからね。こういう文章の書き方は、ある種ドンデン返しみたいで、好きだなぁ!(新山ひでやか俺は?)
 
渦巻の賊について私かにさぐり得たところもあり、私見を申し述べたいから、すぐに私の今いるところまで記者をよこしてもらいたい
  さん. 2001/10/03 20:15:38 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:大暗室
発言者:私立探偵明智小五郎(?)
理由:世間を騒がせている渦巻の賊事件もいよいよ大詰めに入り、これからどういう展開になるのだろうかとわくわくしはじめた頃、6大新聞の各社会部長宛に私立探偵明智小五郎氏から、上の台詞の電話を受けて、探偵が指定した中野と言う探偵の友人宅へ記者連をおびき寄せた。記者達は、明智探偵が現れるのを今か今かと待ち構えていたのに、そこに現れたのは明智探偵ではなく、渦巻の賊大曽根竜次だった。つまり大曽根が探偵の名を語って記者連をおびき寄せたに過ぎない。大曽根が作った訳のわからないパノラマ楽園を取材させんがために。この小説も明智探偵シリーズだったのかと、新聞記者連同様、僕も明知探偵の出番を今か今かとわくわくして読んでいたのに、見事に裏切られてしまった。あ~、こぎたねぇ~っ!
 
君と僕とは兄弟なんだね。
  黄光明さん. 2001/10/03 20:02:56 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:大暗室
発言者:有明友之助
理由:正義の子有明友之助が、渦巻きの賊である大曽根竜次に向かって言った台詞。「大暗室」を読んだことのある読者なら誰でも知っていることだが、有明友之助と大曽根竜次の母親は同じで、美しい有明京子である。
竜次の父親大曽根五郎は、京子の夫有明友定男爵を自分の陰謀のために殺害し、その妻京子をたぶらかし、京子と結婚して悪魔の子竜次を産んでしまった。やがて本性をあらわした大曽根五郎は、京子と長男友之助、家扶久留須左門もろとも部屋に閉じ込めて放火して焼き殺そうとするが、家扶久留須左門が少なくても友之助だけは何とか救い出して育て上げた。その後友之助は竜次と対決するのであるが、考えて見たら同じ母親のお腹から生まれた兄弟であると言う運命の皮肉を感慨深げに語っていた。
 
ぼくは忍術使いです。
  流舞乱さん. 2001/10/03 11:42:13 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  作品名:怪人二十面相
発言者:怪人二十面相
二十面相、得意満々の瞬間。
 
そのころ、東京中の町という町、家という家では、ふたり以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように、怪人「二十面相」のうわさをしていました。
  流舞乱さん. 2001/10/02 23:19:30 [E-MAIL] [WEB-SITE]
  怪人二十面相
語り手
冒頭の有名な一節。「帝都」を震撼させる、神出鬼没の大怪盗の姿が目に浮かぶよう
です。