筑摩書房

*** 書籍表題 出版社 筆者 訳者など 一言感想or備考 お勧め度
062 怪奇探偵小説名作選―6
小栗虫太郎集
ちくま文庫 小栗虫太郎 日下三蔵編 新刊購入後、3年近くも放置していた文庫であった。久々に読むと小栗は素晴らしい。異常な独自世界に酔いしれてしまう。「完全犯罪」「白蟻」「海峡天地会」「紅毛傾域」「源内焼六術和尚」「倶利伽羅信号」「地虫」「屍体七十五歩にて死す」「方子と末起」「月と日と暗い星」。 ☆☆☆☆☆−
057 明治探偵冒険小説集
黒岩涙香集
ちくま文庫 黒岩涙香 伊藤秀雄編 「幽霊塔」と「生命保険」を収録。いずれも翻案。「幽霊塔」は乱歩の比べても、骨格自身は完全に揃っており、遜色は極めて少ないように思える。文語体では無く口語体なので読みにくいという点も全く感じえなかった。今度、乱歩版との差異なども調べてみたいところである。「生命保険」についても探偵小説勃興前時代にこれを読めばかなりの興味を引いたに違いない。基本的なトリックが使用され、動機もそのままに平易ながら、まとまり良い短篇である。 ☆☆☆☆☆−
056 新版 大東京案内(下) ちくま学芸文庫 今和次郎 編纂 昭和四年の大東京案内を底本とした、帝都と呼ばれた時代の東京を詳細に紹介した本。当時の震災復興し大躍動をし続ける東京の様子が生き生きと伝わってくる。戦前東京のファンにはお勧めだ。 ☆☆☆☆☆
056 新版 大東京案内(上)
030 怪奇探偵小説名作選―9
氷川瓏集
ちくま文庫 氷川瓏 日下三蔵編 何気ない日常と思いきや怪異世界に足を踏み入れてしまっていたという衝撃「乳母車」をはじめとした短篇集。「春妖記」「白い蝶」「白い外套の女」「悪魔の顫音[トリル]」「天使の犯罪」「風原博士の奇怪な実験」「浴室」「窓」「睡蓮夫人」「天平商人と二匹の鬼」「洞窟」「陽炎の家」「華胥の島」「路地の奥」「風蝕」を収録。
全体的に日常の延長で不幸な死者(女)の幻影を見てしまい、その世界へ呼び寄せられてしまうと言う展開(「春妖記」「白い外套の女」「陽炎の家」「華胥の島」)が多く、その手の話にはどうも手法に新味がないせいか今一つとしか言えない。ただその手法を使いつつも変則的な「睡蓮夫人」は逆手を取った面白さであり評価高いと言える。
加えて、それらのパターンを外した中で好評価を挙げていくとすると、もっとも素晴らしいのは「窓」である。ほか「天使の犯罪」の不幸なシニカルも効果的だと言えよう。
☆☆☆☆+
025 怪奇探偵小説名作選―3
水谷準集
ちくま文庫 水谷準 日下三蔵編 探偵小説草創期の処女作から戦後の作まで集めた短篇集。戦前編ではやはり「胡桃園の青白き番人」「お・それ・みお」が二強であろう。しかし「さらば青春」「われは英雄」等が未収録なのは残念だった。中篇でページ数を食う割には…って判断されたのだろうか? 「司馬家崩壊」が入っているだけでも良しとせねばならないのだろうか。後半の戦後編では、特に圧巻が「悪魔の誕生」に尽きる。メフィストがまさかんな所に潜んでいて、しかもあの徹底的とも言える効果とは、驚くばかりだった。 ☆☆☆☆+
023 怪奇探偵小説名作選―2
渡辺啓助集
ちくま文庫 渡辺啓助 日下三蔵編 著者の戦前初期の作品を集めた傑作集。最近読んだ物と言うことで、再読は避けたので、読んだのは二十編中「紅耳」「北海道四谷怪談」「灰色鸚哥」のみ。ってなぜコレを買ったんだろう(汗)。他の啓助の方が私には得だったような。とにかく「灰色鸚哥」は謎もある展開で面白かった。 ☆☆☆☆☆−
023 猟奇文学館3
人肉嗜食
ちくま文庫 中島敦など 七北数人編 おなじみ乱歩もお気に入り村山槐多「悪魔の舌」、憑き物が憑いた如くの詩人 の運命は或る意味詩的で物語の話手としての立場を失った時・・・怨みと排斥は一気に起こったのだの中島敦「狐憑」、香港を舞台にした魅惑鍋パーティの生島治郎「香肉」、呪いの神像が意識底の伝習を引き出す悪夢の秘密意識下伝承が結びつくのが面白い小松左京「秘密」、殺された山伏の呪いが襲い来る年に一日の衝動の杉本苑子「夜叉神堂の男」、表向き怪談の無い村の隠れた怪談であ り感動系と言う不思議な読後感の高橋克彦「子をとろ子とろ」、人をからかうのが好きな男の山で出会った恐怖芸の夢枕獏「ことろの首」、独逸実 話で美少年愛好の肉屋の悪魔的所業の牧逸馬「肉屋に化けた人鬼」、怪奇SFで他星の愛情表現の奇怪な文化の筒井康隆「血と肉の愛情」、こ れもSFで滅亡後の世界の人喰い精神の示す動機が面白い山田正紀「薫製肉のなかの鉄」、もつの食感から性的物を想起し虚無僧が語り出す宇 能鴻一郎「姫君を喰う話」を収録している。こちらは怪奇人食ファンにはたまらない内容で愛、習慣、呪いなど多種多様 ☆☆☆☆☆
022 怪奇探偵小説名作選―1
小酒井不木集
ちくま文庫 小酒井不木 日下三蔵編 「呪われの家」から「闘争」まで三十編収録のお奨め短篇集だと言える。とりあえず半分以上の再読も含めて全作読んでみたが、やはり全部を通じて面白いのである。怪奇から本格まで、乱歩初期短篇にも絶対お奨め出来る一冊だ。 ☆☆☆☆☆
022 大正時代の身の上相談 ちくま文庫 カタログハウス編 大正時代の人達の真摯な悩みを垣間見る事が出来る面白い興味深い本。現代に通じる物から変動する時代を反映した物までお奨めである。 ☆☆☆☆☆
017 怪奇探偵小説傑作選―3
久生十蘭集
ちくま文庫 久生十蘭 日下三蔵編 「黒い手帳」「湖畔」「月光と硫酸」「海豹島」「墓地展望亭」「地底獣国」「昆虫図」「水草」「骨仏」「予言」「母子像」「虹の橋」「ハムレット」、附録として、都筑道夫の「久生十蘭――『刺客』を通じての試論」、「ハムレット」の原型「刺客」を収録。全体としてどこが怪奇探偵なのだ、と思うような作品が多い。面白かったのは「ハムレット」及び「刺客」、「黒い手帳」「海豹島」、今回は再読の「地底獣国」、ってところだろう。 ☆☆☆☆+
017 怪奇探偵小説傑作選―5
海野十三集
ちくま文庫 海野十三 日下三蔵編 「電気風呂の怪死事件」「階段」「恐ろしき通夜」「振動魔」「爬虫館事件」「赤外線男」「点眼器殺人事件」「俘囚」「人間灰」「顔」「蠅」「不思議なる空間断層」「盲光線事件」「生きている腸」「三人の双生児」と附録として「『三人の双生児』の故郷へ帰る」「盲光線事件(脚本)」を収録。ごく最近他で読んだ「電気風呂の怪死事件」「階段」「赤外線男」以外の全てを再読初読含め読んだ。やはり最高傑作の栄冠は「俘囚」だろう。完全に怪奇小説なのだが、そのレベルが半端ではない。しかも完全に海野ならではある。「振動魔」は恐るべき探偵小説で、少し小酒井不木的感じもする話で、皮肉な結末。「恐ろしき通夜」もゾッとする結末が待っている。少々厳しい部分もあるような気もするがサザエの恐怖は全てを覆い隠す。「爬虫館事件」は恐るべき爬虫類だから出来るの完全犯罪で、本格怪奇SF探偵小説。テンテコモリだ。「点眼器殺人事件」は海野式本格探偵小説で謎はまぁ面白い。「人間灰」はSF殺人法の恐怖で本格形式。「顔」及び「蠅」はショートショートの集合体で一部面白いものは最上である。「不思議なる空間断層」の叙述トリックは相変わらず面白い。「盲光線事件」はスパイもので、昭和十二年でンなもん書くな、と突っ込みたくもなるが、二番煎じ的謎にすぎない。「生きている腸」は怪奇話でその非常識ぶりに圧巻しかない、ただ主人公の留守期間はちょっと変だと思うが。「三人の双生児」は乱歩の某作品を彷彿させる話で、純粋怪奇味が抜群。ただ結果が似ている話では、「蠅」の「宇宙線」という話の方が海野的で面白いと思う。 ☆☆☆☆☆
012 二階堂黎人が選ぶ
手塚治虫ミステリー傑作集
ちくま文庫 手塚治虫 二階堂黎人編 手塚治虫のミステリー漫画を集めた本。大変興味深いものばかりで手塚治虫に精通していない私でも満足できた。ケン1探偵長もの、アトムもの不思議な少年もの、ブラックジャックもの、三つ目がとおるものなどお馴染み系から初期のものまで収録されている。お奨め。 ☆☆☆☆☆
044 夢野久作全集 10 ちくま文庫 夢野久作 ハッキリ言って、B級作品集だったのは否めない。「老巡査」「衝突心理」「無系統虎列刺」「近眼芸者と迷宮事件」「S岬西洋夫人絞殺事件」「二重心臓」「継子」「人間レコード」「芝居狂冒険」「冥土行進曲」「オンチ」「斬られたさに」「白くれない」「明娼満月」を収録。
この中では再読の「冥土行進曲」が良い所か。死の病宣告を受けていた兄貴が親の敵と弟の安定を願って、伯父に復讐を決心するが、あべこべな事になってしまうと言う話。夢野の遺作として「新青年」に載った作品だが、ラストでは、その遺作と言うのがまたシニカルな効果を出してしまったのが不謹慎な面白さかもしれない。破綻して読むのが疲れる話が多い中、時代物の「明娼満月」は安心して読める作品代表として良かった。雑言を言われた明娼に復讐を誓うために、落ちぶれた二人は誓いを立て、金儲けに終始したが、その結末は時代小説の感動を地で行くものだったと言う展開。
☆☆☆
023 夢野久作全集 6 ちくま文庫 夢野久作 「氷の涯」「死後の恋」「支那米の袋」「爆弾太平記」「焦点を合せる」「幽霊と推進機」「難船小僧」「人間腸詰」「ココナットの実」「戦場」を収録。今回は未読の「爆弾太平記」以降の作品を読了。もっとも良いのは「難船小僧」だろう。意外なる動機が面白いのである。まさに変格的超絶本格。 ☆☆☆☆☆
022 夢野久作全集 5 ちくま文庫 夢野久作 読ませるチイ少年の魅力ある長篇「犬神博士」と、その続編的位置付けの博士製造業・中篇「超人鬚野博士」収録。 ☆☆☆☆☆−
018 夢野久作全集 8 ちくま文庫 夢野久作 「瓶詰地獄」「一足お先に」「狂人は笑う」「キチガイ地獄」「復讐」「冗談に死す」「木魂」「少女地獄」を収録。今回は未読の「一足お先に」「狂人は笑う」「キチガイ地獄」「冗談に死す」のみを読んだ。どれも狂人的面白さだが、特には「一足お先に」「キチガイ地獄」が良い。 ☆☆☆☆☆
013 夢野久作全集 3 ちくま文庫 夢野久作 「猟奇歌」「あやかしの鼓」「押絵の奇蹟」「童貞」「鉄槌」「怪夢」(「工場」「空中」「街路」「病院」「七本の海藻」「硝子世界」)「ビルディング」「縊死体」「月蝕」「微笑」「人の顔」「卵」「夫人探索」「奥様探偵術」「霊感!」「悪魔祈祷書」「白菊」「髪切虫」「けむりを吐かぬ煙突」「涙のアリバイ」「黒白ストーリー」(「材木の間から」「光明か暗黒か」「なまけものの恋」)を収録。面白みのわからないものも少しだけあったような気もするが、「あやかしの鼓」「押絵の奇蹟」「童貞」「鉄槌」「人の顔」「卵」「霊感!」「悪魔祈祷書」「怪夢」の一部など楽しめる作品集であった。 ☆☆☆☆☆
003 夢野久作全集 1 ちくま文庫 夢野久作 デビュー以前のプレ夢野久作の童話傑作選のようなもの。
数多い短篇童話にはある意味苦労したが、中長編の方はなかなか楽しめた。西洋の童話同様、残酷味も垣間見られた。白髪小僧とラスト三編が良かったように思う。無茶先生はほんとに無茶だし(^^)流石は童話・・・・・・。
☆☆☆☆+
99b 乱歩と東京 ちくま学芸文庫 松山巖 1920年代の東京と乱歩作品を中心に評論されている。作品についての関わり合いが詳しく著されており、乱歩ファンなら是が非にでも見るべきだろう。 ☆☆☆☆☆
99b 乱歩の幻影 ちくま文庫 高木彬光など十人 日下三蔵(編) 乱歩趣味を満たしてくれる話のオンパレードだった。特に高木彬光と島田荘司の話は面白いようだった。ただ、蘭光生のポルノ小説には辟易した。全作者は次の通り、高木彬光、山田風太郎、角田喜久雄、竹本建治、中井英夫、蘭光生、服部正、芦辺拓、島田荘司、中島河太郎。読んだことがない人、というより知らない人も結構いたので、そのうち読んでみたい顔ぶれとなった。 ☆☆☆☆
004 江戸川乱歩全短篇 III ちくま文庫 江戸川乱歩 日下三蔵(編) 乱歩なので、ここでまたもや書くまでもないだろう。各々の収録作品についてはこれで2〜4度目くらいになるはずである。それでも面白いのだから、乱歩ファンはやめられない。 ☆☆☆☆☆
004 江戸川乱歩全短篇 II ちくま文庫 江戸川乱歩 日下三蔵(編) ☆☆☆☆☆
003 江戸川乱歩全短篇 I ちくま文庫 江戸川乱歩 日下三蔵(編) ☆☆☆☆☆
999 江戸川乱歩随筆集 ちくま文庫 江戸川乱歩 紀田順一郎 (編) 江戸川乱歩関係の本はいくらか読んだが(題名忘れたのでここには載せていない)、またもや小説だけでは計り知れないところを知れてよかったかな。 ☆☆☆☆