その他

*** 書籍表題 出版社 筆者 訳者など 一言感想or備考 お勧め度
087 変人島風物誌 桃源社 多岐川恭 桃源社の初版で読んでみた。実は7年くらいは塩漬けにしたままだったもので世間では積ん読というらしいが、学生時代に考え無しで入手していた本を全く読み切れてないだけであった。
作品は孤島で起こった殺人事件を扱ったもので作者も言う通り論理に本格ミステリとなっており、昭和30年台の本格を読む上で、現在にも通ずる感覚に興味深いの一言。変人島には変人たちが住み着いており、その人間描写もすばらしいといえよう。現在も創元推理文庫で読めたはず。
☆☆☆☆
085 日本地図の大疑問 青春文庫 おもしろ地図学会編 地図に関するちょっとした雑学集。たまに知らない常識も含まれていて面白い ☆☆☆☆
084 中国汚染
「公害大陸」の環境報告
ソフトバンク新書 相川泰 最近の中国汚染は物凄い物があり、奇形生物は誕生するわ、虹色の川は流れているわ、緑は枯れる一方だわ、しかもその対策がスプレーで着色するかのような酷いもの。この本を読んでみて分かるのは突如汚染されたわけではなく30年前から汚染は進んでいることという。ただ根本問題としてこの国で統計された数字に信憑性が期待できるとは思えず、見かけ上30年前の酷い汚染よりは対策されているように見せているだけではないだろうか。そもそも共産主義ゆえに賄賂が横行し、地方政府が誤魔化しの対策をしており、市民運動や批判勢力は弾圧されるだけだし、そもそも情報力に乏しいために汚染されている実態に気がついた頃には毒物ドップリになって手遅れになっている。しかも既に証拠が失われていることが多い。
これは悪口ではなく、中国自身が自滅したくなければ環境対策をすべきだ。その絶対の第1条件として民主化するなりして米国的な連邦国家になるべきしかないだろう。
☆☆☆☆
084 中国人による中国人大批判 祥伝社黄金文庫 金文学 もはや今さらといった本。餃子事件で、北朝鮮同様にプロセスがない粗雑な調査結果をよこして日本混入とわめく開き直りぶりなどを見ても明らかになってきただろう事だ。チベット問題では全世界にその傍若無人ぶりが披露されたことは現在進行形でもある ☆☆☆☆
082 侵略の世界史 祥伝社黄金文庫 清水馨八郎 白人の傍若無人ぶりを徹底的に叩いた本。大陸の生存競争の激しさゆえなのだろうが、その罪状は果てしなく重いものとしか言えまい。自虐主義な人はあまりに偏向した考えから解放され、一般教養としてこういう知識も得るべきなのだ。さすれば自虐主義のあまりの馬鹿馬鹿しさに気がつくに違いない。 ☆☆☆☆☆
082 逆検定中国歴史教科書 祥伝社黄金文庫 井沢元彦
金文学
中国共産党の教える歴史というのがいかに偏向してるかを明瞭に教えてくれる本。特に強烈なのが戦後日本社会を全く教えていない点。多大なる虚飾を交えて国民党と日本を徹底的なまでの悪と教え、共産党は徹底的な善と教えているのだから恐ろしい。また近代以前も含めて都合の悪い侵略の歴史は放置する有り様である。日本でも日教組の自虐教科書が出回っている上に、不幸にも教師が自虐主義だったりした場合は悲劇ではあるが、疑問にさえ覚えれば日本では教科書以外に真実を知る方法や教科書の内容や教師がいかに偏っていたかを分析する方法はいくらでもある。ただ中国ではそれは困難なのだから、中国人というのは本当に不幸というしかない。台湾の書店には客観的に世界を俯瞰した歴史書物が沢山並んでいたのを見ると大陸の中国人もまた悲劇と言わざるを得ないだろう。 ☆☆☆☆☆
07a 日本戦時下ジョーク集
満州事変・日中戦争篇
中公新書 早坂隆 戦時下の漫才や落語の記録を紹介するのが本書。お笑いブームに盛り上がっていた中、国際情勢が経済のつまずきから軍事一色に染まっていったという流れは文化面からみても面白く、戦争だからこそ娯楽が必要だったということだろう。全般内容としても面白いが、漫才という単語を今を(も)時めく吉本興行だったとは知らなかったと言う点が一番興味深かった ☆☆☆☆☆
079 浜尾四郎全集2
殺人鬼
桃源社 浜尾四郎 浜尾四郎の全長篇作品を載せた一冊。「殺人鬼」「鉄鎖殺人事件」「博士邸の怪事件」「平家殺人事件」(中絶)の4作を収録。
初読の「鉄鎖殺人事件」はさすが戦前本格探偵小説の代表と言われるだけある作品である。鉄鎖自体は連続殺人事件の被害者を絡ませるという道具立てとして殺人事件の興味を引かせる以外ではタイトルにするほどのインパクトはないが論理性豊かな構成はさすがである。殺人鬼と異なり舞台は広範囲にわたっており、お馴染みの藤枝探偵とワトスン小川が活躍する。特に小川の関係者が重要登場人物になるなど小川のドタバタぶりは面白い。特にその恋愛は、ある意味で軽すぎてワトスン役の小川君に突っ込みをいれずにはいられないだろう。探偵役はもちろん藤枝であり、彼らしからぬ失態を経つつも怪しい真犯人へ到達するまでは鮮やか。戦前探偵小説ファン鳴らずとも、現在の本格ファンにもぜひ読んでいただきたい作品と言える。
☆☆☆☆☆
079 ネコ好きが気になる50の疑問 サイエンス・アイ新書 加藤由子 タイトルの通り。最近ネコ好きということもあり読んでみた。 ☆☆☆☆☆
07* 反日マスコミの真実 オークラ出版 西村幸祐編集 朝日新聞、NHK、TBSの日本を窮地に追い込むだけの情報捏造などについての入門書。いかに偏向報道が多いかを知るだけでも価値がある。TVや新聞で報道されない情報が山ほどある。日本のTVや新聞では報道可能な事件が1000あるとしたら100くらいしか報道しない。900は社内検閲で消え去るため、その分はワイドショーネタや特定人物叩きに時間を費やすのだ。それに対してネットは1000しか実際の情報がないのに、10000もの情報が溢れている。9000は無意味な情報または虚偽情報である。ただそれでもその気になれば真実に辿り着ける可能性があるだけ新聞TVよりもネットの方が遙かに優れていると思う。 ☆☆☆☆☆
07* TBS報道テロ全記録 晋遊舎 TBSがオウムの坂本弁護士を殺害に絡み、筑紫哲也が中韓に対する偏向報道を繰り返し行っていたことは驚異というか脅威に値するとしか思えない。もちろんこの本自体がTBSの犯罪部分を抽出したものに過ぎないが、それにしても国民の財産たる放送電波を使ったこの行為は許されることではない。
これだけの悪事を繰り返し、更にこの本に載った以降も朝ズバで不二家を滅亡に追い込むなどやりたい放題。TBSの悪事を知る上で知っておくべき一冊と言えそう。このような曝露的な書籍が自由に出版される日本は民主主義国家で良かったと心底思う。中国や韓国、北朝鮮ではこのような書籍は発禁はもちろん、出版社関係者は罪に問われるに違いないのだから。
☆☆☆☆☆
079 環境問題はなぜウソがまかり通るのか 洋泉社 武田邦彦 リサイクルはすればするほどゴミが増えてるだけだとか、ダイオキシンは実は自然界の物質で危険性はないとか、温暖化で北極の氷が溶けても水面上昇に影響なしは常識とかなどなど。もとを正せばマスコミなどの利権屋が都合の良い情報を垂れ流し続けた結果、ウソだらけの情報がまかりとおっているということらしい。この本が100%正しいかどうかは知らないが、世間一般で垂れ流されてる環境問題への認識から一歩抜け出せる一冊と言える。 ☆☆☆☆☆
078 日本書紀(一) 岩波文庫 坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋校注 お馴染みの神話を含む神代から崇神天皇まで収録。通説の解説が多すぎるのが良い点である一方読みにくくしている点でもある。詳細な解説は別冊に分けておいてくれた方が良かった。神代の一書連続には驚いた。確かに一書ごとの不思議は解きたくなるというものなのだろう。日本書紀読むなら難しいけど是非お奨め。
075 オシムジャパンよ!
日本サッカーへの提言
アスキー新書 フィリップ・トルシエ 現在のところ、過去最強の代表を率いたトルシエが現オシム代表を語るという内容。ジーコジャパンや日本サッカー全体についても語る。サッカーファンにとっては読む価値あり ☆☆☆☆
073 お江戸の意外な生活事情 PHP文庫 中江克己 江戸時代と云えば中世社会においては世界でも類のない平和が200年以上も続いた稀有な時代である。この時代に生まれた現在の文化風習も数多い。そして庶民生活ぶりなども時代劇などではお馴染みだが、実際のところよく分かってない点も多かった。本書をよめばなるほど合点といくところがおおい。格好の江戸時代の生きた庶民の衣食住などの苦しくも時には人情味もある生活の様子を知ることが出来る一書になっている。 ☆☆☆☆+
060 日本書紀の謎を解く
述作者は誰か
中公新書 森博達 日本書紀の研究本として、これほど客観性に富んだものも珍しいのではないか。それだけに本書の研究論証は非常に明々白々であり、実際の困難な研究とは裏腹に、論証の流れ自体については理解しやすく、納得せざるを得ないものとなっている。
メインテーマとして、日本書紀は原文は全て漢文であるものの、その音韻や文法の分析によって、漢文の種類において明確に大きく2種類に分かれるというのだ。つまり和化漢文と中国唐語そのものとに。
その点の証明を行い、結果的に日本書紀の成立過程を推理してしまうのが本書である。
なお、本書の結論である巻数ごとの分類は以下のようになっている。
β群(和化漢文(非中国語))
 1巻〜13巻および22巻23巻28巻29巻

α群(唐時代の中国語)
 14巻〜21巻および24巻〜26巻


古代史から日本書紀成立過程に興味があるならば、ぜひ一読をお奨めしたい書籍である。ここから更なる妄想や推理が生まれてくること間違いないだろう。
☆☆☆☆☆
060 戦時用語の基礎知識 光人社文庫 北村恒信 戦前戦中で使われていた軍関係の用語や銃後用語などの解説本。網羅的にいずれの項目も丁寧に説明してあり、基礎知識と行っても、教科書レベルの良く知らているものもあれば、私的には馴染みのなかったものも含まれていた。

歴史の中にあるからこそ忘れてはならない用語が含まれており、戦時中という暗いイメージだけで何もかも悟ったような気になるのではなく、当時の正確な意味合いを把握する上でも本書は有益なリファレンスとなるだろう。
☆☆☆☆☆
085 古事記の暗号 東京書籍 関裕二 タイトルそのままを読むと、まるで古事記の和製漢文の原文に暗号が隠されていると主張するトンデモ本のようにも見えるが、決してそうではない。
古事記と日本書紀がほぼ同時期に編纂されていることになっているのに古事記が黙殺されてきた理由などを探り、古事記が親新羅的で日本書紀が親百済的である理由、などから古事記の存在意義そのものに意図があるのではないかと迫るのが本書となっている。
☆☆☆☆
073 藤原氏の正体
名門一族の知られざる闇
東京書籍 関裕二 藤原氏の正体を探ると言う意味で衝撃的推理が用意されているのが本書。歴史を知るものなら知識として知っているだろうが、この藤原氏の平安時代の所業はあまりにも酷かった。それが鎌足、不比等時代からそうだったというのだから。そして正体はお馴染みというか同時代に日本に来ていたあの人物。推理の材料はあまりに少なすぎるが、たしかに辻褄は間違っていない。歴史書に登場する人物を当てはめるならば他にいないくらいの候補ではある。そして中大兄皇子と鎌足の姿勢というのも昨今の見方では頷ける点がある。よもや奈良時代は天武系の時代と思いきや、こういうことかと納得させられる部分もあったりした。それにつけてもいかに教科書的な歴史があまりに面白みに欠けるのかがわかってしまう。歴史教師は楽しそうだと思ったこともあったが、案外苦痛なのかもしれない。自説を教えることも出来ず、延々と通史をやり続けるしかないのだから:::。まぁ仕事としての割り切りがあればよいのだろうが。通史に詳しいのは前提と考えると通史は知識としてベースにしておくべきなのは間違いないが、歴史好きとしてはこれらの書籍を読み、全てを信じるわけでもなく、でもすぐれた考証については様々な応用に生かし、ともかく歴史ロマンの一助になればそれでよいということだろう。 ☆☆☆☆☆
06b 蘇我氏の正体
日本書紀が隠そうとした真実
東京書籍 関裕二 祟りという明確な古代人の思考を読み取るなどして、蘇我氏の正体を探るのが本書。蘇我氏が完全な悪人扱いされていることについては少し考えれば非常におかしいことには気がつくのだが、なかなか何者かまではわからないものだ。そもそも天武以前の古代史は謎が多すぎて、正しいものが掴みきれないものがあり(天武以前の通史は信用しがたい)、蘇我氏もその代表である。私は蘇我馬子が大王を殺害していたり、蘇我蝦夷が大王の目の前で中大兄と中臣鎌子に殺害されたりしていることから察するに、蘇我氏とは大王家同様に、政権TOPの資格を持つ一大氏族の一つだったのではないかとも推論していたが、それはあくまで単なる妄想にすぎなかった。
だからこそ本書で示されたような的確な論証でその意外な正体を知らしめられると、いちいち納得してしまいそうなところもあるのである。もちろん全部は信用しがたいが、それは日本書紀とて同様であり、これだから古代史ロマンは留まるところを知らないと言えよう。

とにかく日本書紀の通史だけを全面的に信用するような石頭ではなく、また蘇我氏が本当に大悪人かどうか疑問に思うところが少しでもあったならば、本書などを読んで考えてに耽ることをお奨めする。
☆☆☆☆☆
06b 台湾日本統治時代の歴史遺産を歩く 戒光祥出版 片倉桂史 会社の台湾旅行前々日くらいに急遽購入に踏み切って、前日までに読破して、それを参考に、台湾を周り巡る計画を立てた代物。その結果の詳細は2006年11月25日前後のちゃんらぽらん日記の記事を参照してもらいたい。
本書はそもそも台湾で出版されたものであるらしい。特に民主化以降の台湾人の近代史に対する興味関心は並々ならぬものがあるからこそ出来た出版であり、本書記載の歴史遺産なのであろう。
台北近郊ならば、台北、桃園、宜蘭、新竹あたりがアクセスが楽だったり複数のスポットあったりするためお奨め。私は新竹には行けなかったので次回はぜひ訪れたいところである。

近代史ファンならば、ぜひ台湾に出かけられる際は旅行計画の一環として本書を一読することをお奨めしたい。

著者のホームページによる紹介
http://my.so-net.net.tw/katakura/shinkan.html
☆☆☆☆☆
073 三国史記倭人伝 他八篇 岩波文庫 佐伯有清訳篇 古代に倭人が攻めてきたという記事が山ほど乗っているのは実は三国史記である。この三国史記、成立はずいぶん遅い11世紀以後の話だが、王墓などの考古学的見地からいって記事の内容自体はかなり正確な部分が多いようである。それだけに古代に記された倭人と朝鮮半島の関係記事は非常に興味深い。朝鮮半島は鉄の宝庫だったからこそ倭人は攻め込む価値を見出したのだろうか? そしてなぜ五世紀以後の蘇我氏や物部氏などが登場して以降はあまり攻め込んでいないのか? 海洋技術に圧倒的レベルの差があったのはなぜか? その後発展しなかったのは? 倭人とは大和朝廷? それとも九州の有力者? 疑問を出せば枚挙に暇がない。いずれにせよ古代朝鮮が三国に分かれ更に倭国に攻め込まれながらもやって行けたのは中国の混乱期が長期にわたったからなのだろう。じじつ3世紀〜6世紀までは中国も戦乱で外国進出の余裕はなかった時代だ。だからこそ朝鮮半島ですら分裂して争っていられたと言えるだろうし、倭国も好き勝手に朝鮮に攻め込めたのだろう。実際隋はともかく唐になると、朝鮮は唐と同盟した新羅が勝者になっている。倭国も敗れピンチに陥っている。その後、親百済の天智天皇は途絶え、親新羅と思われる天武天皇が現れたのも事実である。脱線したが、古代の日本史を知る上では一級資料であり教科書には一切載っていないようなことも平気で記載されている。歴史ファンなら一読して損はない。そこには意外な発見もある。かなりお奨め。 ☆☆☆☆☆
06b 旧唐書倭国日本伝・宋書日本伝・元史日本伝 岩波文庫 石原道博訳編 これも旧唐書の記事の流れを知っておきたかったからという理由で読み出す。そのためもあって本当に興味持って読んだのは旧唐書倭国伝および日本伝のみであったが、それでも宋書は天皇家の羅列や地域の羅列が面白く、このような細かい記事があることを再認させられた。元史は元寇記事に終始されるものの、その元側の内幕がわかったところには興味が向くだろう。日本史ファンならば客観的視点で記載された外国史料として読んでおいて損はない。 ☆☆☆☆+
06b 魏志倭人伝・後漢書東夷伝・宋書倭国伝・隋書倭国伝 岩波文庫 石原道博訳編 これも古事記を読み出したのと同じ理由である。古代史への激しい興味を抱いているが、元の情報が不足による通説や異説に振り回されないために、最低限の教養として手に取った次第である。事実自身で読んでみてこれはと思うところもあれば牽強付会に感じる部分もある。本書なども古い通説によっているせいもあるが、脚注に突っ込みどころが多い。邪馬台国についてはあらためて九州説と思ってのであった。なんといっても山島。またあらためて唐突で出て来る阿蘇山などにも驚きを隠しなかった。色々な疑問を抱かせるのが古代史である。 ☆☆☆☆☆
065 蛭川博士 南人社 大下宇陀児 最初に言わせてくれ。明らかに途中で終わったぞ。どういうこっちゃ。段組の仕方や破れた痕跡などはないから、ますますわかりませんぞ。実は解決篇の書籍もあるのか・・・・?
これは生殺しです。なかなか手に入らないので続きを読むことも出来ず。。。

さて、話は不良青年グループ3名は表面上は仲良くやってるように見えて、そのうち2人は特に仲間を陥れることに執着するような男であった。友人が女から借りている宝石を返せない事情があると知るや、巧みに誤魔化して友人の窮地を救ったようにみせてしまったり、友人の秘密を種に、殺人犯に陥れようとしたりなどなど。
事件の方は海浜でその宝石で関わっていた女が殺害されると言うところから展開する。そしてその殺された女の連れが癩病患者の蛭川博士の夫人であったのだ。蛭川博士は難病かつ重病で誰とも会いたがらない性質である。
ところで、秘密を持っていた不良青年グループの中のリーダ格でハーフの男は第一の殺人の手懸かりとなったカフェで活躍していた。といっても地下賭博であり、阿片の香りをも嗅げるという秘密クラブなのだ。その中で財産をかけたがる少し気がおかしいようにみえる不思議な老人とその娘と関わるが・・・。

本作は戦前の本格探偵小説の代表作にしばしば上がるだけあって、警察の訊問などや警察視点の活躍も描かれており、また伏線を張っているようにみえる点も多々見られた。しかしいかんせん連続殺人事件が発生し、いよいよ事件が急展開から解決編へ向かおうと言ったところで奥付ページなのである。本気で憤ってしまったのである・・・・。
065 橋本五郎探偵小説選 I 論創社 橋本五郎 こういうのが手軽に読める時代というのは幸福である。実際、私は本書に収められている作品を新青年復刻版や文学時代復刻版でおおむね読んでいたので、再読にはなるとはいえ、そう思うのだ。

「レテーロ・エン・ラ・カーヴオ」「赤えいのはらわた」「狆」「探偵開業」「塞翁苦笑」「海龍館事件」「脣花NO.1」「青い手提袋」「お静様の事件」「ペリカン後日譚」「地図にない街」「蝙蝠と空気船」「眼」「疑問の叫び」「撞球室の七人」「美談の詭計」 の各短篇を収録。
当時の社会風俗とユーモア味に溢れる作品群である。「お静様の事件」は初読時は不快なだけであったが、読み直してみると旧家だからこそ発生しえる遺産問題というものの絡みがあって面白い。初読の「美談の詭計」は清々しいまでの心理的奇計。「青い手提袋」はプロットの妙味が面白い。
☆☆☆☆+
065 国民の知らない歴史3
闇の日本史
KKベストセラーズ
ワニ文庫
中津文彦 「西郷隆盛肖像の謎と死角」「龍馬暗殺の謎と死角」「伊達騒動の謎と死角」「由比正雪の乱の謎と死角」「千利休切腹の謎と死角」「本能寺の変の謎と死角」「川中島合戦の謎と死角」「奥州藤原氏の黄金伝説の謎と死角」「義経北行伝説の謎と死角」

やっぱり歴史は面白い。本書では9つの謎をミステリ作家らしい視点で正史の不可解な点を迫っている。特に、苦しい論理も含まれるとはいえ西郷の謎の写真、由比正雪のバックグランドに迫ったものl奥州藤原氏の言われてみれば確かに奇妙、と思うような謎が印象に残った。
☆☆☆☆☆
065 眠れないほどおもしろい地図の読み方 三笠書房・王様文庫 ライフサイエンス 地図の雑学本。意外と知られていない事実を紹介したものである。英仏による標準子午線の話やオランダの中のベルギー飛び地の話などが特におもしろかった。 ☆☆☆☆
063 武士道 知的生きかた文庫 新渡戸稲造 奈良本辰也 我々日本人の生き方そのものである武士道を対外的に紹介したもの。元々が英米人向けに英語で教えるように書かれたものだけに、例示に飛んでいて理解しやすい構成になっている(ただキリスト教との比較はよくわからないが)。現在の日本人が見失ってしまっているものを再び思い起こさせる日本人必読の書と言えるのではないか。こういうものこそを教科書に載せてもらいたいものだ。 ☆☆☆☆☆
063 教科書が教えない歴史
明治〜大正〜昭和、大事件の真相
扶桑社文庫 藤岡信勝
自由主義史観研究会
内容の半分くらいは知っているような内容であるが、裏を返せば半分は知らなかったということ。軽い読み物なので、自虐史観の教科書レベルの歴史の流れの知識を得ている人ならば、非情に楽しめるシリーズだろう。子供向けなので疲れた脳味噌の清涼剤代わりにはちょうど良いのである。

ただこの代表、最近内紛で失脚してるのが気になるが。。。
☆☆☆☆☆
063 教科書が教えない歴史
日本と外国、勇気と友情の物語
扶桑社文庫 藤岡信勝
自由主義史観研究会
☆☆☆☆☆
062 世界の教科書は日本をどう教えているか 朝日文庫 別枝篤彦 ある意味期待した朝日本と思いきや違ったようだ(検定教科書に批判的と言えども、更に[中共や朝鮮]の国定教科書に批判的だったり、戦前戦中の日本の良い面もいくらか引用している)。初版が十年以上前だけある点を踏まえても、使っている引用書物が三十年前とかがざらである点は突っ込まねばなるまい[なにせ各国の教科書の日本情報(戦前情報だったり、四大公害がクローズアップされてたり)が古いと批判しているんだぜ]。ただほんの少し前まで日本について、どのような誤解有る教育を受けていたかを知ることが出来る。たとえば英では誤謬だらけの記述だったり、ケニアや独国では正確だったりなどは興味深い点だ。また興味深いのは本書であえてあまりふれていない中国朝鮮情報だ。朝鮮は特段すべき情報はないが、中国はこの頃は日露戦争を教えていたらしいのだ。これは現在の教科書が完全に無視しているのに比べ遙かに進歩的だったことを意味する。つまり中国は教育レベルでは退化し、共産主義洗脳と日本悪化傾向になっていると言えるだろう。
あとこの本の苦言。引用ヶ所がわかりにくい。著者の意見と引用ヶ所の区別がわかりにくい。致命的欠点であろう。
☆☆☆☆
062 「反日韓国」に未来はない 小学館文庫 呉善花 五年前のながら、正真正銘の韓国人の著作として注目した。国外で真実を知り、その愚かな国内政策(もちろん徹底的な反日教育のことだ)を批判した書である。自己批判精神を全く知らない同胞韓国人に対して呼びかけるような感じで書かれている。大日本帝国時代については冷静に抵抗運動を1919年以降ほとんど起こさず適切に統治されていった理由を問い、韓国内で小学生から中年まで叫ぶような虐待があったとしたら、ずっと黙ったままで逆に恥なのではと問いかけ、老年者へのインタビューによると、むしろ固い友情があったと述べている。全くまともであり、そちらの方が感動的ではないか。戦中が苦しかったのは日本人全体であったのだから、苦しい時代を協力して生きてきた生の声こそ真実みのある尊敬すべき事実のはずなのだ。
しかし悲しいが、今や彼女の叫びも虚しい。いまではこのようなことを韓国国内で行うと、親日糾弾法の類で逮捕されかねない。もちろん出版は出来るわけがない。恐ろしい国になったものだ。韓国には言論の自由はないのだ。日本の人権擁護法案も類似の言論封鎖法であるというのは知っておかねばなるまい。
☆☆☆☆+
062 韓国・中国「歴史教科書」を徹底批判する 小学館文庫 勝岡寛次 これはここ数年の韓国中国の教科書を説いている。彼らの主張がいかに馬鹿馬鹿しい子供じみた物であるかがよくわかるものだ。扶桑社の教科書に批判的、または無責任になんとなく韓国中国と共同歴史教科書などと本気で期待している方は読んでみてはいかが? 日本が滅亡させたいと思っている特殊な人以外は、どんな人でも扶桑社に軍配を上げないとおかしいとわかるはずである。 ☆☆☆☆☆
062 日本・中国・韓国の歴史と問題点80 ブックマン社 竹内睦泰 隣国については知っておかねばまともに批判する資格も得られまい。たとえ中韓に近い考えの人でも無責任ではないんだから、あらゆる角度で知っておくべきであろう。知れば知るほど、内側からは日本外務省の情けなさと、朝日新聞などの問題点が浮き彫りになるだろう。もちろん中国や韓国には小泉首相路線で挑むのが少なくとも正しい道に近いということがわかるだろう。 ☆☆☆☆+
062 エラー・クイーン パーフェクトガイド ぶんか社文庫 飯城勇三 20世紀の米国の大探偵小説作家エラリー・クイーンの手引き。私も代表作はともかくも、多くの作品を読んだわけでは無いので今後の参考になった。クイーンはそのうち読めるだけ全作近く読みたいもんである。 ☆☆☆☆+
05b 信長の棺 日本経済新聞社 加藤廣 信長は本能寺で滅したが、その遺骸は本能寺から消えていた。その謎に挑んだのが本作。時の首相たる小泉首相も読んだというので話題沸騰になっている一書だ。小説的には唯一主役に「信長記」著者の文筆家・太田牛一を据え、その謎に迫るというもの。本能寺前後から主に秀吉末期時代までを舞台にしている。まさに創作ではあり、その謎解き仮定も全く現在の史料で示唆されるところでないところが歴史学的には減点ではあるのだろうが、創作という名で当時の権力闘争の中をユニークに分析し、そして信長像とその謎を築きあげたのは興味深く、あるいは真実に近いものかもしれないと夢想をもさせる。史実で見えているところは非常に薄っぺらく何が真実か何が虚実かはわかりようもない。夢想に耽れるところが歴史ロマンの素晴らしいところと言えるだろう。 ☆☆☆☆+
05a 黒龍の柩(下) 幻冬社文庫 北方謙三 土方歳三を主役に添えたロマンチック歴史創作小説である。通説に拘らない大胆な人物像とその見果てぬ夢には感激すら覚えるではないか。山南総長のファンとしてもこれは楽しめた。なるほど土方と山南はツーカーであったという説もあるが、これならばごく自然に解釈できる。色々と突っ込み所や気に食わない設定も多々あるのも事実(通説に囚われずに史実的にハッキリしない点などの独自解釈の連続で当然とも言える)だが、創作全体と見れば、土方の魅力とその周囲の登場人物の生き生きとした躍動。そして最後まで繋がる広大な夢。非常に読ませる秀作である。 ☆☆☆☆☆ー
05a 黒龍の柩(上) 幻冬社文庫 北方謙三
040 子不語の夢
江戸川乱歩・小酒井不木往復書簡集
皓星社 江戸川乱歩
小酒井不木
浜田雄介編 何という素晴らしき企画だったろう。探偵小説草創期の探偵小説に対する愛情がそこにはある。乱歩のデビュー付近から東京進出あたりまでと昭和以降から不木の最期までの差を考えると、ちょっともの悲しいものがある。乱歩にとってもあまりにも突然だったことがうかがい知れて余計悲しくもなる。とにかくこの企画には拍手の嵐しかあるまい。その本文を超えてそうな量の微細な解説まで含めて。後日関連書籍コーナーに入れる予定。 ☆☆☆☆☆+
04b 小酒井不木探偵小説選 論創社 小酒井不木 少年科学探偵・塚原俊夫君シリーズ。小酒井不木の少年物は知っていたが、よもやこれほどのシリーズ物だったとは思わなかった。論理的思考の本格物作品がズラリと並んでいて、実は少年物らしさが逆に稀薄なのが、何とも面白い。この塚原俊夫君自体が、少年を超越したような存在で、口調からして何という偉そうなことよ。子どもらしさのほとんど欠片も見せない所が逆に愉快である。が、この点は当時の読者的感覚でも取っつきにくかったかもしれない。内容は先も言ったように不木らしからぬ健全な本格物で、今まで埋もれていた不木の別の側面を見るには恰好の一冊だろう。 ☆☆☆☆+
04b 久山秀子探偵小説選 I 論創社 久山秀子 よもやこの作家の作品が一冊の本になろうとは誰が夢想だにしただろうか? いわんや2冊も出る現実にや。ということで、この作家はほとんど全集に近いのではないかと思う二冊出ているがその一冊目。久山秀子ものといえば痛快で軽妙なノリのユーモアが際だつ隼もの。この本にも20編も収録されている。掏摸といえば許せざる小悪党であるが、隼一派のユーモラスな姿を見ると、そんなことは、所詮そんなことになってしまうものがある。基本的にコントてきなものが多いが、本格的な嗜好のものから当時の社会性を存分に描写したものまで、この人も新青年趣味に彩られた新青年作家だったんだな〜と改めて感じ入る作品集となっている。 ☆☆☆☆
04a 愛国者 東洋出版 深草淑子 あの甲賀三郎の次女のなんと79歳にしての処女作。内容はその大仰なタイトルに対しては比較的まともというべきか。むしろ私的には序盤が多少苦しかったが、その後は楽しんで読み進めることが出来た。大元になるネタ、架空の異国の扱いとトリックどれも巧く処理できているではないか。

ただ現在が舞台で、主人公が二十代中後半という苦しい設定のため、主人公など若者キャラや携帯などの現在文化に対しては、主役と同世代の目から見ると、多少ズレた所もあるな〜という結果になってしまった。もちろんその努力こそは凄いとしかいいようがない所だ。
話は恋人とちょっとした微笑ましいいざこざがあって、しばらく離れて生活したくなった主役の栽子が何を思ったのか、いかにも怪しげなバイト先として、長崎の離れ小島に、マイナー王国の王位継承者の家庭教師をすることになったところから動き出す。この発端では最初の家庭教師先の説明口調の所はちょっと苦しく本篇最大の難点かも知れない。その後、その家庭教師先の王国の関係者たちが謎の死が遂げていく。そして殺人事件の嫌疑までに発展。
推理小説のテーマとしては良い所をついたとは思う。が、そのテーマと主役たちとの関わりもまた取って付けた感もあるので、このあたりは序盤に納得いく説明を付加できれば良かったと思われる。いずれにせよ全体のバランスに比して、序盤の雑さが目立つため、架空の外国人登場人物や中年などの性格づけは良いとしても、主要な日本人登場人物の性格付けが粗雑になって、感情移入しにくくなってしまった点が勿体ない所だと思われる。
さいごに個人的な思いだが、せっかく甲賀三郎の名前を帯に記したのだから、それなりのサービス精神があっても良かったのではなかったのかと思う。ちょい役に期待した手塚龍太や葛城春雄や獅子内俊次らが顔を出すことがなかったのは残念至極だ。むろん舞台を現在に取っている以上は仕方のないかも知れないが、やはり多少残念に思えた。もちろんこの本の存在そのものがサービス精神だと言うことは重々承知はしているのは特筆せねばならないのは言うまでもないことだが、やはりファンというものは贅沢なもんなのだ・・・。
☆☆☆☆+
049 新選組日記
永倉新八日記・島田魁日記を読む
PHP新書 木村幸比古 新選組永倉、島田の後日談。原文と現代語訳の平行でかつ、丁寧な解説付きなのがよい。内容は説明不要だろう。 ☆☆☆☆+
047 新版 法隆寺は移築された
太宰府から斑鳩へ
新泉社 米田良三 なんと法隆寺は、太宰府の観世音寺から移築されたものだったという説を論証したのが本書。日の出ずる所の天子である上宮法皇にスポットを当てた太宰府を首都とした古代倭国を論証の基礎としているので、予備知識がないと、完全に何を書いているのかが全くわからなくなるだろう。つまりは下敷きに古田学説の九州王朝説があるので、読前にその最低限の知識は欲しい所だ。太宰府からの移築説が九州王朝を証拠づける面もありながらも、そもそもの根拠が九州王朝に依っているところが多いからだ。正直古代史は謎が多い。と言うより謎しかない。そういう状態であるので、この九州王朝説は私的には非常に面白い話であり、説得力もあるように思われる。今後発見されれば爽快だろうナァ、とは思う。もっとも現状は妄想の生んだ九州王朝を指示するための論証に見える点も多々あるが。 ☆☆☆
046 金田一耕助 The Complete メディアファクトリー 小嶋優子&別冊ダ・ヴィンチ編輯部編 金田一耕助の横顔の紹介から、その秘密に迫ったり、全事件を取り上げたり、金田一耕助ファンにはガイダンスとして持っていても損はないだろう。またパスティーシュや映像作品についても触れられており、まさにコンプリートの名に恥じない出来映えと言っても過言ではなかろう。袋とじでネタバレページもある。 ☆☆☆☆+
045 新選組(下) 学陽書房
人物文庫
村上元三 率直に言って、つまらねえ。そもそも読みたい内容じゃあねえ。そのくせ無駄に長え。と先ず書いておこう。

大河でやっているので、珍しく歴史小説でも読んでみるかという気分になって読み始めたが、正直少なからぬ予備知識がないと非常に危険である。
主人公がそもそも架空の浪人である。この時点で破綻している。更にその浪人が史実の流れに合わせるだけの、つまりご都合
主義の平和主義者であり全く感情移入できようはずもない。この三下主役の浪人氏の絡んだエピソードばかりなので、歴史小説としても、標準以上に創作度が高まっている。そもそも史上有名人を主役にした歴史小説ですら、史料に裏付けられた記述を除く創作度は90%を越えるのが普通だろうに、この小説にいたってはその殆どが架空と言っても過言ではあるまい。まぁ、歴史舞台セットを借りた一般小説と言うことだ。三巻1300ページくらいあるのだが、700ページは主人公氏が大きく絡んでいるだけの有り得ないストーリーである。残りのページ数も多いが、新選組全般を多摩時代から五稜郭まで描いたこの小説においては、いかんせん物足りなすぎた。事実、基本的な歴史年表3ページ分すら、まともに埋め切れていない。まぁ、とにかく言いたいのはこれを読もうと思った私の運が悪かったと言うことである。
045 新選組(中) 学陽書房
人物文庫
村上元三
045 新選組(上) 学陽書房
人物文庫
村上元三
042 外地探偵小説集
満洲篇
せらび書房 大庭武年など 藤田智浩編 時代の証人とも言える満洲の探偵小説を集めたマニアックに満ちた珠玉の短篇集。日本人、中国人、ロシア人などなどが入り交じり、なかなか内地では見られない小説群となっているのが特長だろう。興味という点では見逃せない作品集。それにこんなものは滅多に出ないし、過去にも知らない。
収録作品は大庭武年「競馬会前夜」、郡司次郎正「踊子オルガ・アルローワ事件」、城田シュレーダー「満洲秘事 天然人参譚」、崎村雅「龍源居の殺人」、宮野叢子「満洲だより」、渡辺啓助「たちあな探検隊」、椿八郎「カメレオン黄金虫」、島田一男「黒い旋風」、石沢英太郎「つるばあ」。
☆☆☆☆+
042 本格ミステリー館にて 森田塾出版 綾辻行人
島田荘司
1991年の対談を収録したもの。ハッキリ言って既知の内容のみで、今頃読むような内容ではないだろう。 ☆☆☆
044 平林初之輔探偵小説選 II 論創社 平林初之輔 この2冊目には創作編、翻訳編、評論編に分かれている。
まず創作編の「アパートの殺人」「夏の夜の冒険」「二人の盲人」「鉄の規律」「謎の女」「悪魔の聖壇」「呉田博士と与一」。「アパートの殺人」は殺人動機が面白いという点がまず挙げられる。麻薬中毒の女には多数の恋人がいたのだが、その情夫が殺されるという事件。恋人たちが容疑者に上がるが、と言う展開。「夏の夜の冒険」は実話仕立てで読後感は恐怖に満ちている。現在でも実の親子でも通じそうな生々しさすらも感じる所が恐ろしい。名ばかりの保護者に対する問題提起である。「鉄の規律」は祕密結社もので鉄の規律と親子という板挟みの展開。解説で読んだら平林自身が共産党員だった時期があるらしく興味深い。「二人の盲人」はある盲人が、妻と友人の盲人に対して抱く病的な妄想が爆発してしまう心理が面白い。「謎の女」は知り合ったばかりの女に短期間偽装夫婦を演じてくれという頼まれる話だったが、遺稿中絶作となっている。「悪魔の聖壇」はほんの短いものだが、悪魔の牧師を描いたもので、そこでの罪の告白の悲劇。「呉田博士と与一」は少年物で、幼児誘拐事件を矛盾から解決するもの。
翻訳編は「鍵」「ジヤックリイン」。「鍵」は金庫に忍び込んで大泥棒を実行するも、本気で気の毒になってしまう灯台もと暗しの前に犯人の運命は正しい方向へ流れてしまう。
評論随筆編はタイトルは省略するが、もっとも興味深い文章は健全派、不健全派に触れた所だろう。今日にも生きる本格の命名の前身がここにある。
☆☆☆☆+
041 平林初之輔探偵小説選 I 論創社 平林初之輔 よもや平林初之輔の本が単品で出ようとは思わなかった。しかも2冊出てるのは、ハッキリ言って誰も想像すら出来なかったのではないだろうか?

この1冊目には小説14作が収められている。処女作の「予審調書」は親と子の愛のドラマであり、更に探偵小説として巧くまとめ上げている。「頭と足」はほんの短い掌編だが、策を巡らせる巧みな記者魂が面白い。「犠牲者」は現在の法律家に対しても十分に通用しそうな批評を含みつつ、小市民の悲愴を描いている。これは冤罪だけではなく社会的テーマそのものであるとも考えられよう。「秘密」の悲しき展開は悲劇を越えている。「山吹町の殺人」は「予審調書」に更に鉄道ダイヤトリックを追加したようなものので、本格探偵小説を書ける力を存分に発揮している。「祭りの夜」はサンデー毎日ものらしい軽い読み物で、怪盗物。「誰が何故彼を殺したか」は超法律的テーマ。「人造人間」は倫理を越えた悪行もので、SF的テーマと隠し方のトリックが面白い。「動物園の一夜」は絶望的人間と社会への反乱者との奇妙な友情。実社会の矛盾への警鐘もの。「仮面の男」は軽いノリの探偵戯曲で、怪盗物。「私はこうして死んだ」は戸籍の脆さを指摘したもので、現在の住記ネットにも通じる手続き至上主義の弱点を突いている。「オパール色の手紙」は不倫の疑いを持つも、決定的な証拠もないというようなモヤモヤを描いた焦燥が効果的である。疑惑に結末を持たせていない所も良い。「華やかな罪過」は探偵小説でないし、面白味も薄い。「ある探訪記者の話」は「人造人間」の効果を使用しつつ、更に救いようのない結果を招いた倫理放棄ぶりに、職業至上主義への皮肉が感じられる。
☆☆☆☆+
03b ドグラマグラ幻戯 学研M文庫 夢野久作 東雅夫編 猪瀬光の異様写真が口絵でまず迎え、つづけて西原和海のスチャラカチャカポコ、そして聖典ドグラマグラの中から伝奇十景、そしてどうも完成系と比すると驚くほど軽い感じのするが興味深い「ドグラマグラ草稿」、「一足お先」になどプチドグラマグラ作品集、松本俊夫の映画脚本、狩々博士の「ドグラマグラの夢(抄)」、呉秀三「磯辺偶渉」。まさにドグラマグラをより知る上で欠かせない一書となっている。ちなみにさすがに帯に書かれている「全てがわかる」ほどでは全然ないので一応(笑 ☆☆☆☆☆
039 日米架空戦記集成 中公文庫 長山靖生編 よもやこのようなマニアックすぎる作品集が文庫本で出ようとは誰が想起し得たであろうか? というほどの作品集。有本芳水「空中大戦争」、浅野一男「空中軍艦未来戦」、海野十三「空行かば」、「福永恭助「暴れる怪力線」、那珂良二「海底国境線」、立川賢「桑港けし飛ぶ」、河岡潮風「日米石胆力戦争」、阿武天風「日米戦争夢物語」、横溝正史「慰問文」、大阪圭吉「空中の散歩者」、三橋一夫「帰郷」。
最も感動した作品というのは「慰問文」だろう。時代をもろに感じさせはするが、その感激はなぜか伝わってくるのだ。内気な少女は作家の娘というトリックで慰問文の返事取得に成功するが、その彼女が銃後の日本で大活躍をし、ついには感動をと言うお話。大阪圭吉の「空中の散歩者」は言い得て妙でバルーンを飛ばされてしまう間抜けな番人と意外や意外の陰謀が面白い。時代の動機ある探偵小説。「帰郷」はまさに本篇を締めくくるに相応しいあるス−パースターの戦後の安らぎ。「海底国境線」は某国の恐るべき陰謀を跳ね返す大活劇。「桑港けし飛ぶ」は見るも痛快な原子爆弾モノだが、執筆時期を考えると恐ろしく皮肉である。などなど
☆☆☆☆+
038 赤道南下 中公文庫 海野十三 生き生きした記録という興味深さならピカ一だろう。報道班員として海軍に従軍し巡洋艦と共に前線へ赴いた様子がマザマザと描かれている面白さ。 ☆☆☆☆+
037 古代は輝いていた3
法隆寺の中の九州王朝
朝日文庫 古田武彦 古田武彦氏の通史シリーズ。納得行く論理と、それは苦しいという点に当然別れて、後者が優勢の感もあるが、しかし決定的な到達点の上では、多元史観は当然至極のレベルだ。それによって、現状通史の近畿天皇家一元史観で言う、倭国として対外活動をあれほどしながら、大宝律令や仏教伝来が余りに異常に遅いという不可思議の解決にはなるし、不自然だった点の解決に繋がるのだ。なにか画期的な発見を祈ろう。 ☆☆☆☆☆
037 古代は輝いていた2
日本列島の大王たち
朝日文庫 古田武彦 ☆☆☆☆☆
036 古代は輝いていた1
「風土記」にいた卑弥呼
朝日文庫 古田武彦 ☆☆☆☆☆
036 盗まれた神話 朝日文庫 古田武彦 古事記や日本書紀など荒唐無稽と考えていた私であり、通して読んだ事もなかったが、これほどの秘密があろうとは? むしろ古事記の方が近畿天皇家の歴史書であり、日本書紀が、日本旧記などの他王朝の歴史書をふんだんに含んでいたとは。。。にわかには信じがたいが、説得力はある。昔から古事記と日本書紀、これらがたった8年のスパンで書かれ、内容がなぜか食い違っている部分もあるというのだから、不可思議に思っても仕方があるまい。日本書紀が古事記+補填版なら、全く同じ内容を収録するはずというのに。九州王朝のロマンとしては面白い事この上なし。「失われた九州王朝」が品切れなのが恨めしい。 ☆☆☆☆☆
036 「邪馬台国」はなかった 朝日文庫 古田武彦 邪馬臺国ならず、魏志倭人伝の文面では邪馬壹国。皇国史観にドップリ浸かって抜けようとしない戦後史観にメスを入れ、文献を、根拠のない勝手な改訂なしに、文字通りに読むと、驚くべき真実が見えて来るという一書。少なくとも読み物としては面白く、三国志という同一文献から類似文章や単語を引っ張ってきて分析するやり方は美事と言えよう。、必要なデータを省みていなかったらしい歴史学者・・・。 ☆☆☆☆☆
036 シンポジウム
邪馬壹国から九州王朝へ
新泉社 古田武彦編 これも学術本で、九州王朝説本。皇国史観から解放された研究を提供してくれる。とにかくローマンとして面白い。 ☆☆☆☆+
036 九州王朝の論理 日出ずる所の天子」の地 明石書店 古田武彦
福永晋三
古賀達也
歴史学術本。最近にわかに九州王朝説にドップリはまり込んでいる。古代史には不自然すぎる謎が目に付いていたのは高校生の時からであった。その一つの解答を教えてくれるのが九州王朝説なのだ。興味ある方はGoogleなどをを検索すれば、たくさん出て来るので予習になるだろう。それにしても「旧唐書」に倭国伝と日本伝の二つが存在している事自体、教科書が隠していた害悪と言えるだろう。あの時代は謎が多すぎる。 ☆☆☆☆+
036 復刻版 大東京写真案内 博文館新社 昭和八年大東京三十五区の姿がここに甦る。圧巻の一冊。当時の観光、交通などなどを知る上でも欠かせない資料だ。 ☆☆☆☆☆+
032 乱歩の世界 江戸川乱歩展実行委員会 2003年2月の江戸川乱歩展を記念した図録。詳しくはそのうちに関連書籍に追加すると思うが、とにかくこの一冊だけでダイジェスト的に乱歩の貼雑年譜全9巻と幻影の蔵の蔵書が大量に垣間見れるという逸品である。 ☆☆☆☆☆+
02a 幻影の蔵 東京書籍 新保博久
山前譲
蔵書目録及び附録の乱歩邸バーチャルCDには随喜の涙を流すしかないだろう。直に関連書籍に加える予定であるので、そちらを参考に ☆☆☆☆☆+
02a 股から覗く 国書刊行会 葛山二郎 錯覚の魔術師の魅せる短篇集。私は新青年で収録全作読んでいたが、とりあえず記憶に薄いものを中心に再読を試みた。収録作品は「股から覗く」「偽の記憶」「赧顔の商人」「杭を打つ音」「赤いペンキを買った女」「霧の夜道」「影に聴く瞳」「染められた男」「古銭鑑賞家の死」「蝕春鬼」「慈善家名簿」 ☆☆☆☆☆−
027 親日派のための弁明 草思社 金完燮 荒木和博
荒木信子・訳
韓国人による客観的な東アジア近代史論。全てを鵜呑みには出来ないが、総じて素晴らしいの一言。韓国について良く理解出来た。感想は今月20日頃の日記でも書いておくのでそちらを参照してください。 ☆☆☆☆☆
027 探偵小説の「謎」 現代教養文庫 江戸川乱歩 収録評論は随筆評論リストを参照すること。改めて読んでも又面白いのである。 ☆☆☆☆☆
025 獵奇の果 日正書房 江戸川亂歩 流布版の「猟奇の果」の唯一の絶対的ヴァリアント版が本書。流布版の「後篇 白蝙蝠」に突入せずに、青木愛之助を主人公にしたまま、完結を迎えるのだ。猟奇の果をキーワードに。まず人体改造術の医者の演説、そして恐るべき真相と展開。そりゃあ、いくらなんでも、と言う展開ながら、白蝙蝠を思い浮かべると、かなり現実的なのが面白い所か。 ☆☆☆☆☆
010 続氷点(下) 朝日新聞社(文庫) 三浦綾子 名作「氷点」の続編であるが、これは期待外れというか、重み不足だけ目立ったような気がする。ゆるすをテーマ。 ☆☆☆☆
010 続氷点(上) 朝日新聞社(文庫) 三浦綾子
01b それがぼくには楽しかったから 小学館 リーナス・トーバルズ
デイビット・ダイアモンド
風見潤・訳
中島洋・監修
Linuxの開発者・リーナスの初の自伝。非常に興味深いぞ。人生哲学と感激が待つ。というか、会社の課題本の選択肢の一つだったんだが。 ☆☆☆☆☆
019 甲賀三郎 角田喜久雄集(日本推理小説大系3) 東都書房 甲賀三郎
角田喜久雄
甲賀三郎「死闘蛾の恐怖」「琥珀のパイプ」「体温計殺人事件」「状況証拠」「四次元の断面」
角田喜久雄「高木家の惨劇」「奇蹟のボレロ」「Yの悲劇」「笛吹けば人が死ぬ」「悪魔のような女」を収録。とりあえず、そのうち未読だった「死闘蛾の恐怖」「Yの悲劇」「笛吹けば人が死ぬ」「悪魔のような女」を読んだ。甲賀作品については、甲賀三郎の世界に感想は書いてある。角田短篇では全てが全て圧巻の本格で面白すぎることこの上ないのである。「悪魔のような女」の悪魔の欺瞞!、「笛吹けば」の裏をつく完全、「Yの悲劇」の真の悲劇!・・・。
☆☆☆☆☆+
016 瀬戸内海の惨劇 国書刊行会 蒼井雄 戦前の長篇「瀬戸内海の惨劇」と、戦後の短篇「黒潮殺人事件」を所収。「瀬戸内海の惨劇」は傑作本格長篇であり、「船富家」に匹敵すると言っても全く誇張無しである。鮎哲の「黒いトランク」を彷彿せざるを得ない柳行李の複雑な動きに翻弄され、思いもよらぬ恐るべき真相。惜しまれるのは、仕方がなかったとは言え解決が急ピッチ過ぎる事と難を言えばどんな小説にも当て嵌まる事である例の不合理な点少々。当然、総合評価は圧倒的な本格である点には変わりはないのである。恐らく何も知らずに読むと、戦後の作品と思うくらいの、戦前らしからぬ作風だ。「黒潮殺人事件」もよく考えた蒼井らしい時間トリックで、面白い。 ☆☆☆☆☆
051 英海峡の怪奇 黒白書房 クロフツ 甲賀三郎・訳 甲賀三郎の訳書としては唯一のものだと思われる一書。正直甲賀ファン以外なら無理に手に入れて読むほどのものではない。私としても、英米黄金時代のクロフツの代表作を甲賀がいかに訳しているかの興味の方がまず先だっている。結果思ったのは、このフレンチ物を訳したということは甲賀にとってはプロットの妙と熱心な捜査の結果、犯人の狡知に辿り着くこの手の作品がお気に入りだったのだろうということ。もっとも黄色い部屋をベストに上げているので一概には言えないが、この形が甲賀の目指した長篇の一つの理想の一つだったのではなかろうか?
さて、事件は不可解な状況から始まる。遊覧船の死体が2つ。某金融業者の最高経営者達たちだったのだ。他にも行方を眩ませた会社関係者もおり、フレンチの捜査は彼らの捜索を中心に行われるが・・・・。プロットの起伏に富み、意外な方向へ流れつく結末。証拠という証拠は結末まで見当たらないとはいえ、その疑うべき材料は既に目の前に揃っていたのだ! という凡人探偵フレンチを起用した、クロフツ流リアリズム本格探偵小説だ。
☆☆☆☆
030 甲賀三郎探偵小説選 論創社 甲賀三郎 詳しくは「甲賀三郎の世界」に記述する予定だが、もっとも価値あるは「新探偵小説論」だろう。この分量で甲賀の探偵小説観を示すのにはこれほどすぐれたるものはない。創作の収録5作については平均すると、今一つというか、私が知る創作で天秤に掛けると、真ん中を示す水準にすぎないだろう。「電話を掛ける女」「原稿料の袋」「鍵なくして開くべし」「囁く壁」「真夜中の円タク」及び、評論収録。 ☆☆☆☆☆−
03a 羅馬の酒器 熊谷書房 甲賀三郎 これも頂戴したコピーで読んだもの。短篇集。「羅馬の酒器」「赤い壜」「殺人と白猫」「富江と三人の男」「森の悲劇」「泥棒の狂人」「開いていた窓」「二度目の冤罪」「果樹園物語」詳しくは甲賀三郎の世界参照 ☆☆☆☆☆−
037 神木の空洞 福洋社 甲賀三郎 これも頂戴したコピーで読んだもので、長篇。参考までに本には「池水荘綺譚」も含むようだ。感想は「甲賀三郎」の世界で ☆☆☆☆
037 日軍進駐の日 八紘社書店 甲賀三郎 これも頂戴したコピーで読んだもの。長篇である。タイ国を巡って、怪人「赤蜥蜴」が活躍する。詳しくは甲賀三郎の世界参照 ☆☆☆☆+
036 劉夫人の腕環 長隆舎書房 甲賀三郎 これも頂戴したコピーで読んだわけで、既読の葛城春雄もの二作以外を読み通した。
収録作品「劉夫人の腕輪」「越境の密使」「燃ゆる髑髏」「白紙の命令書」「風のような怪盗」「畳を盗む男」「不開の金庫」「歩く砲弾」ヲ収録・
各作品の感想は「甲賀三郎の世界」参照だが、この書籍に、私の認知で判明しているだけで二作も過去の完全焼き直し作品が入っているなど謎も多い。
☆☆☆☆+
036 印度の奇術師 今日の問題社 甲賀三郎 感想は「甲賀三郎の世界」参照だが、何と云う面白さ。表題作長篇のみ収録。実は頂戴したコピーで読んだだけだが、丸一冊分なので、加えておく。 ☆☆☆☆☆
02a ビルマの九官鳥 フタバ書院成光館 甲賀三郎 表題作の他に「謎の少年」収録 ☆☆☆☆
02a 眞紅の鱗形 世界社 甲賀三郎 少なくとも「悪霊の群」は越える構成力と本格。感想は「甲賀三郎の世界」参照 ☆☆☆☆☆−
021 音と幻想 紫文閣 甲賀三郎 感想は「甲賀三郎の世界」参照のこと。
「音と幻想」「一本のマッチ」「犯罪の手口」「法を越えるもの」「謎の女」「吹雪の夜」「マネキン奇譚」「頭の問題」「海獅子丸の真珠」「海の掟」「伯父の遺産」「夕陽輝く頃」「日本人の死」
☆☆☆☆☆−
01b ものいふ牌 春秋社 甲賀三郎 感想は「甲賀三郎の世界」参照。
収録作は「ものいふ牌」「死後の復讐」「強盗」「生ける屍」「虞美人の涙」「川波家の祕密」「死體の恐怖」「魔神の歌」。
☆☆☆☆☆−
019 公園の殺人 東方社 甲賀三郎 「甲賀三郎の世界」を参照されたし。
なお収録作は長篇「公園の殺人」。他既読だった「黒衣を纏う人」「暗号研究家」
☆☆☆☆☆
019 N2号館の殺人 東方社 甲賀三郎 「甲賀三郎の世界」を参照されたし。
なお収録作は中篇三篇で「N2号館の殺人」「操る魔手」「虞美人の涙」。読んだのは未読だった上位2作である。
☆☆☆☆☆
015 緑色の犯罪 国書刊行会 甲賀三郎 何という面白さ。詳しくは「甲賀三郎の世界」の感想に譲るが、収録作品を述べておくと、「ニッケルの文鎮」「悪戯」「惣太の経験」「原稿料の袋」「ニウルンベルクの名画」「緑色の犯罪」「妖光殺人事件」「発声フィルム」「誰が裁いたか」「羅馬の酒器」「開いていた窓」。既読だった「ニッケル」「悪戯」を除くと、最秀作は「誰が裁いたか」である。次点は「緑色の犯罪」。とにかくお奨めの短篇集だ。感想は「甲賀三郎の世界」に記しておく。 ☆☆☆☆☆+
086 本格推理展覧会
迷宮の旅行者
青樹社文庫 内田康夫など 鮎川哲也・監修
山前譲・編
地方の味わいといった感じのアンソロジー。 ☆☆☆☆
014 本格推理展覧会
名探偵の憂鬱
青樹社文庫 島田荘司など 鮎川哲也・監修
山前譲・編
収録作品は実は最も興味深かった鮎川哲也の巻頭随筆、島田荘司の名探偵・御手洗潔「疾走する死者」、小栗虫太郎の名探偵・法水麟太郎「後光殺人事件」、横溝正史の名探偵・金田一耕助「蝙蝠と蛞蝓」、島久平の名探偵・伝法義太郎「夜の殺人事件」、高木彬光の名探偵・神津恭介「罪なき罪人」、戸板康二の中村雅楽シリーズ「車引殺人事件」、津村秀介のルポライター浦上伸介「昇仙峡殺人事件」、山口雅也のキッド・ピストルズシリーズ「「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件」。島田と小栗は既読ゆえに今回はパスしたが、特に興味深かったのが横溝と島の二作品だった。 ☆☆☆☆
00a 夢の訪問者−江戸川乱歩 毎日新聞社 牛島秀彦 関連書籍参照 ☆☆☆☆
009 潤一郎ラビリンス I 中公文庫 谷崎潤一郎 千葉俊二編 初期短編集。探偵小説的な妖しげな作品も多く、楽しめた。『刺青』『少年』『秘密』の3編を特に楽しめたものとして挙げておこう。他に『麒麟』『幇間』『ヒョウ風』(※「ヒョウ」は風編に犬3つの漢字)『悪魔』『恐怖』を収録。 ☆☆☆☆☆
008 眼球奇譚 祥伝社ノン・ノベル 綾辻行人 ホラー短編集。「再生」「呼子池の怪魚」「特別料理」「バースデー・プレゼント」「鉄橋」「人形」「眼球奇譚」を収録。それなりに楽しめたのが、「再生」「呼子池の怪魚」「眼球奇譚」であり、それに続くのが「鉄橋」「人形」、面白さの全然わからぬのが「バースデー・プレゼント」、ただ気色の悪いだけで全くつまらないものが「特別料理」であった。 ☆☆☆
01a 二の悲劇 祥伝社ノン・ポシェット(文庫) 法月綸太郎 あまりにも切なすぎる恋と、それに伴うまさに二の悲劇!二の悲劇!二の悲劇!法月綸太郎シリーズである。犯人が分かっている顔を焼かれた殺人と謎的叙述、そして悲しみ溢れる手記!。
真相は中途である程度は推測できたが我ながら裏付けが完全ではなかった。ただ法月らのような心理学的回り道はしなかったが、そちらの方にむしろ驚いてしまった感もあった。
☆☆☆☆☆−
007 一の悲劇 祥伝社ノン・ポシェット(文庫) 法月綸太郎 誤認誘拐から事件がはじまり、それは意外な方向へ進んでいく。名探偵法月綸太郎の活躍もの。ラストの誤相?のオンパレードと真相の驚くべきアリバイトリックには平伏。 ☆☆☆☆+
007 江戸川乱歩執筆年譜 (名張市立図書館) 平井隆太郎・中島河太郎(監修) 中相作・編 ご存じ、乱歩WEBサイト【名張人外境】の管理者の中氏の手になる本。
隆太郎氏のエッセイ、本題の執筆年譜と貴重な情報に溢れています例えば、『猟奇の果』に、改題『白蝙蝠』でない、解決編2章があったなんて・・・・・・。一応、今回目を通しましたが、まだこれからもリファレンスさせて頂くことでしょう。
☆☆☆☆☆
005 幻冬舎ノベルス 麻耶雄嵩 まさに幻想的本格推理小説というべきものだった。
その不思議度は「夏と冬の奏鳴曲」を越えていた・・・・・。
そしてラストの恐るべき真相には目を見張るしかない。
☆☆☆☆☆
04a 幻冬舎 麻耶雄嵩 麻耶にしてはいたくオーソドックスな本格ミステリ。オカルトスポット探検サークルの6名が訪れたるは、かつて皆殺し殺人があった現場の館。例の如く嵐の山荘になった現場に起こるのは、例の如く殺人事件・・・。と言うような展開。それにしても文章が随分うまくなったものだ。細やかなまでに恐怖の臨場感が巧みに出ているのは読んでいてゾクッとするほどだ。それには麻耶らしい罠に期待と不安がない交ぜになった微妙な読者心理も手伝ったのかもしれない。麻耶ミステリーとしては麻耶らしい空前絶後感は期待ほどには感じられなかったし、指向的に中途半端である。また本格ミステリとしてのフェアさも突っ込み所はある。が、最後の残り1割くらいになったあとに、私に訪れたのは予想に違わなかったという満足感と、それと同居する騙されたという感覚。騙されてもいないのだが、立て続けの急展開は美事さも感じる。最後の普通に読んだら最悪の読後感になるだけっぽいエピローグが意味する所は深読みするのが正しいのだろうか、判断に迷うところ。 ☆☆☆☆+
005 ジャンヌ・ダルク 中公文庫 ジュール・ミシュレ 森井 真+田代 葆(訳) 悲劇の「乙女」ジャンヌ・ダルクの伝記。活字でこの事件に触れたのは初めてだった。 ☆☆☆☆
019 時の誘拐 立風ノベルス 芦辺拓 「十三番目の陪審員」や「死体の冷めないうちに」系の作品で、これも凄い面白いものだった。森江春策シリーズだが、現代過去を舞台とするのである。そしてその過去現代の別個の事件が関連する。エリート街道の知事の娘が誘拐されたことを端緒とする過去から連綿と続く社会悪にもせまる本格推理小説。鮎哲のあの警部が過去の2シーンで登場するのは感激ものであるし、他の芦辺キャラが出て来たりと、愉快な点は純粋な推理小説部分以外にも多々ありこの辺りも面白い要素であろう。 ☆☆☆☆☆
008 風の証言 青樹社文庫 鮎川哲也 鬼貫警部、そして丹那刑事の活躍する長篇ミステリ。全体を通じて一様に楽しめる内容であった。例のようにアリバイ崩しものであり、写真を使った完全犯罪のようなものを鬼貫、丹那がうち砕く、というものである。 ☆☆☆☆+
005 死のある風景 青樹社文庫 鮎川哲也 鬼貫警部が謎を解明する本格長篇探偵小説。
そのアリバイ崩しの美事さには舌を巻くばかりである。私には考えも及ばないようなところに陥穽が隠されていたのだから。
☆☆☆☆☆+
997 大河の一滴 幻冬社文庫 五木寛之 20歳で読むような内容ではなかったが、共感できる部分もいくつかあったこともまた事実。 ☆☆☆☆
本当は恐ろしいグリム童話 KKベストセラーズ 桐生操 恐ろしい話ももちろんあるが実はこういう題名の方があうのでは?「本当は下ネタだったグリム童話」 ☆☆☆☆☆
993 本当は恐ろしいグリム童話II KKベストセラーズ 桐生操 ☆☆☆☆
三国志物語 光風社出版 寺尾善雄 ☆☆
モルグ街の殺人 エドガー・アラン・ポー ポー全集の一部だけを読んだ覚えはあるのだが、確認しようがないので?にしておく。 ☆☆☆☆☆
黄金虫 エドガー・アラン・ポー
黒猫 エドガー・アラン・ポー