講談社

*** 書籍表題 出版社 筆者 訳者など 一言感想or備考 お勧め度
082 マオ(上)(下) 講談社 ユン・チアン
ジョン・ハリティ
土屋京子 毛沢東の知られざる伝記の上巻。
全てが真実とすれば、想像の遙か斜め上を行くとんでもない有史以来最狂の極悪人以外の何者でもないだろう。中国人だったら吐き気すらもよおすのではないか? ただわかっているのは建国以来、中国共産というのは自国の国民を数百万単位で殺害し、チベットや東トルキスタンを侵略した上に先住民族を虐殺した上に強制同化政策をし、ってこの辺は後篇で出て来るのだろうか。
ただこの本の全てを信ずることは出来ない。なにせ張作霖爆殺事件がロシア陰謀説とかとんでも説なのに、絶対正しいというような書き方してるからだ。
☆☆☆☆☆
070 複数の「古代」 講談社現代新書 神野志隆光 古事記、日本書紀、万葉集、そして上宮聖徳法皇定説などのその他の資料。それぞれは必ずしも一致しない。つまりは多数の見方の古代史が存在してるということである。それを論jしたのが本書となる。 ☆☆☆☆+
07a 一度も植民地になったことがない日本 講談社α新書 デュラン・れい子 スウェーデン人と結婚し、芸術紹介などの仕事で蘭や仏など欧州中で活躍する著者によるヨーロッパ人から見た日本人感を生きた経験から紹介する。個人的には日本赤軍などから日本、そして独伊ではテロが多いというTV番組の存在にはびっくり。 ☆☆☆☆
080 夏のレプリカ 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。これもよくある展開と言えるのだが、相変わらず見せ方が絶妙なことで大きく作品の質を上げている。そもそも「幻惑と死の使徒」と同時期に起こった事件という設定からしてそうだろう。しかし余計なラストを付けたという印象がぬぐえないのも事実。あれは何だったのか。設定という面ではおもしろいが森ミステリとしての興味は希薄といえよう。 ☆☆☆☆−
087 幻惑と死の使徒 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。効果的に超有名トリックを使う離れ業を見せてもらった感じである。夏のレプリカと同時期に発生したマジシャンのショー中の死、そして葬儀中の消失。最後の最後まで魅せられるマジックショーには関心するしかない。 ☆☆☆☆+
086 封印再度 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。一度も開けられたことが無い家宝の箱、その鍵は壺の中に入っており永遠の知恵の輪のように取り出すことができない。この魅惑的な謎が世代を超えた殺人事件に絶妙に絡む。トリックそのものはいささか前時代的だが、見せ方のうまさには驚愕するしかないだろう。 ☆☆☆☆
084 詩的私的ジャック 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。大学内での連続殺人は密室と謎の傷痕。大学に関係ある売れっ子ロック歌手が犯人に上がる。
オーソドックスな手法を取り入れつつ、プロットで読ませるのが上手いのが森博嗣の特長なのだろうか。
☆☆☆☆
083 笑わない数学者 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。偉大な数学者天王寺博士邸。立派なオリオン像が消える時、過去現在に殺人事件が発生する。そのメイントリックそのものは探偵小説ではお馴染みの分かりやすいトリックであり大したものではない(むしろ他の数学問題の方が難解。とても同じ種類の感覚で解ける代物ではないと思うが)が、だからこそオーソドックスな本格物として楽しめるとも言えるだろう。最後の謎解き問答など笑わない数学者の表現方法については探偵小説的には蛇足とも言えるか。 ☆☆☆☆
070 冷たい密室と博士たち 講談社文庫 森博嗣 犀川教授シリーズ。低温度実験の科学研究施設で発生した密室殺人事件。ありえない状態で見つかった死骸。妙な癖のないオーソドックスな本格推理小説となっている。 ☆☆☆☆+
073 すべてがFになる 講談社文庫 森博嗣 5年以上前から読みたいと思っていたが、ついつい今日まで放置してしまっていた。内容は申し分がない面白さだった。ただこの手の仕事(ソフト業界)に従事しているせいか、タイトルの示唆自体にはそれほどの衝撃は抱かなかった。ただ最初から過剰なまでにキーワードを出しているんだからまぁフェアプレイと言えるのだろう。
かつて両親を殺害した天才が誰1人として顔をあわせずに生活している研究所。研究所所員自体も外の世界はおろか、ほとんどが同じ建物に住みながらも顔を合わせることは滅多にないという異常な空間。天才が密室で異常な状態で殺害されるという流れで、期せずして犯罪に巻きこまれた主人公の女学生と助教授という展開になっている。

このシリーズには興味を持ったのは事実である。可能な限りは読み進めたいところだ。
☆☆☆☆+
071 謎ジパング 講談社文庫 明石散人 まず単なる歴史ミステリ小説だと言う点には留意しておきたい。間違いや願望が論証の材料にされていても本書の形式上仕方がないということなのである。私は歴史物では小説は混乱を招くため、歴史物として含めない方向なので、この点で本書を読み始めた時点で失敗だったのかもしれない。
ただ既に各種説を知っている題材であった以下「邪馬台国に謎はない」「日本最古の将棋駒」等を読む限り、論証材料に虚構要素がないようにも見えるため厄介なのも確かだ。だから全て論証材料に虚偽はないと思いたいのだが、そうさせてくれないのが本書の嫌らしいところ。特に個人的に苦手分野の江戸時代関連については他書による予備知識が決定的に欠けているせいで困ったものと言える。
本書収録の他連作短篇のタイトルを以下に挙げておく。
『桃太郎の正体 お伽話はどうやって作られる?』
『どこからやって来たのか日本の茶 抹茶の栄西 VS. 煎茶の円爾』
『オムスビの不思議 なぜ三角になったのか』
『「皿屋敷」の謎を探る 番町それとも播州』
『邪馬台国に謎はない 倭人伝の裏側』
『日本最古の将棋駒 王様はいなかった?』
『金閣寺の伝説 究竟頂天井板の謎』
『江戸っ子の洒落 命を賭けた江戸の闘食会』
『富士山雑話 誰も気づかなかった? 北斎の失敗』
『宇宙を閉じ込めた日本人 日本人にとっての「有限」と「無限」』
『青いチューリップ 「野のユリ」はどこからやって来た?』
『伽藍先代萩 頼朝と義経は本当は仲がよかった?』
『黄金の国ジパング 東経一四一度線の驚愕』
『江戸文化立役者の罪 蔦屋重三郎と居候達に何があったか』
『川中島合戦の通説の真偽 上杉謙信は空を飛びたかった』
『失われた大四元 太安万侶は麻雀をしていた?』
『国宝金印のキズ (1)漢委奴国王の金印はいくつもあった』
『金印発見の裏事情 (2)金印をデビューさせた男』

☆☆☆
060 古代遺跡をめぐる18の旅 講談社+α新書 関裕二 - 最近お気に入りの関裕二が、これまた最近お気に入りの考古学遺跡についての旅本を出していたので購入して読んでみた。
18の遺跡はメジャー、マイナーどちらも含まれていて、全く知らなかった半分くらい含まれていた。また名前だけなんとなく知っているものも含めれば、今後の畿内山陰九州の散策の参考資料としては非常に興味深いものがあり一級品と言えそうだ。
文章自体は旅の文章から解説、何が注目すべき点なのかが平易に書かれていて、初心者も非常に読みやすい内容になっていると思う。列車バス車それぞれの行き方もバッチリ説明があるのが嬉しい。
なお、18の旅とは、以下の通りとなっている。
・纏向遺跡(奈良県桜井市・天理市)
・三内丸山遺跡(青森市)
・荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡(島根県出雲市郊外の斐川町・雲南市)
・さきたま風土記の丘・稲荷山古墳(埼玉県行田市)
・吉野ヶ里遺跡(佐賀県神埼市・吉野ヶ里町)
・池上曽根遺跡(大阪府和泉市・泉大津市)
・亀形石(奈良県・明日香村)
・唐古・鍵遺跡(奈良県田原本町)
・遠所遺跡・入佐山三号墳(京都府京丹後市・兵庫県豊岡市)
・妻木晩田遺跡(鳥取県米子市郊外の大山町)
・青谷上寺地遺跡(鳥取市)
・出雲大社境内遺跡(島根県出雲市)
・鬼ノ城(岡山県総社市)
・高良山(福岡県久留米市)
・金田城(長崎県対馬市)
・西都原古墳群(宮崎県西都市)
・小迫辻原遺跡(大分県日田市)
・上野原遺跡と二つの高千穂峰(鹿児島県霧島市)

現状、行ったことがあるのは童年時に訪れた吉野ヶ里遺跡のみとなっているのが何とも寂しい限りだが、私的には先ず手頃な唐古・鍵遺跡や池上曽根遺跡、纏向遺跡から攻略攻略していきたいところである。また飛鳥については訪れた時にチェックしておきたい。
☆☆☆☆☆
06b 古事記(下) 講談社学術文庫 次田真幸 最近は古代史に凝っているため、古事記日本書紀くらいは目を通しておくか。と思い読み出した。

古代史の謎を考えるにあたり正解だったと言える。たとえば無理やり神話時代の家系図を繋げようとする手法は古代史にも十分に当て嵌まると類推できるようになる。
私は応神、継体で確実に王朝交代があったと思っている。さらに天智、天武あたりも怪しい。「武」の字に注目すると、これは王朝変化を意味している。最後は桓武天皇である。確かに親父は光仁天皇であり光仁時点で天武系から天智系に移行しているようにみえるかもしれないが、じつは光仁即位時の次期有力候補は井上内親王の息子であった。井上内親王は天武系であるため、ふたたび天武系に回帰し、都も平城京のままであったはずであったのだった。しかし歴史が桓武の陰謀を語り、平城京は捨てられることになった。ちなみに天武系といっても半分は天智系だったりする。なぜなら持統天皇の意向が強力すぎるからである。だから桓武天皇になって、なにが変わったかといえば天武の血を絶ったという一点に尽きるだろう。と脱線しすぎなのでこの辺にしておこう。ただこの説は平城上皇の扱いが困るという欠点があることだけ。
☆☆☆☆+
06b 古事記(中) 講談社学術文庫 次田真幸
06a 古事記(上) 講談社学術文庫 次田真幸
058 変調二人羽織 講談社文庫 連城三紀彦 短篇集「変調二人羽織」「ある東京の扉」「六花の印」「メビウスの環」「依子の日記」を収録。いずれも優れた仕掛けに驚きを込めるしかないトリック小説であり、プロット自体は戦前の探偵小説を思い浮かばせるほどの題材。それを巧く読者を欺くことでよろこんでるふうすら感じられるではないか。特に「依子の日記」にはシンプルながら驚く背負い投げ。美事である。 ☆☆☆☆+
045 虚無への供物 講談社文庫 中井英夫 やっとこさ読みました。三大アンチミステリの一書。ハッキリ言うと、他の二つの奇書(※夢野「ドグラ・マグラ」と虫太郎「黒死館殺人事件」ですよ)同様一度で理解できるほど私の脳味噌はすぐれているはずもなく、もう一度はそのうち読みたいところである。本格ミステリーのように氷沼家連続密室殺人が発生するが、それがまさにゲーム感覚。登場人物達が次から次へと推理ゲームに興じ、本格ミステリならばこのようになるはずだと、声を露わにして全くもって真剣に挑んでいく。まぁ、いろいろ感想らしきことは大きく省略するが、犯人の動機には刮目せよ。 ☆☆☆☆☆
042 蝿男 講談社大衆文学館 海野十三 探偵講談で聞いていて、筋も知っていたが、原作で読んでみると、その絶対狙っているナンセンスなユーモア味を再確認させられる。
まさに世紀の怪人、蝿男に挑むは。お馴染みの帆村荘六。蝿男の手に掛かり、次から次へと被害が広がっていくが、さて。
☆☆☆☆
035 探偵小説事典 講談社文庫 中島河太郎 第一回乱歩賞の偉業。ハッキリ言ってネタバレ地獄だが、私が読んだもの、今後も絶対読みそうもないものだけ読んでいった。 ☆☆☆☆+
031 なめくじに聞いてみろ 講談社文庫 都筑道夫 ミステリーと名が付くが、その実体は奇想天外ユーモア殺人小説。連作短篇に近い形を取っていて、その一回ごとにマニアックな職業殺人者達を葬っていく。そのマニアックな連中こそが主人公の父親の弟子達。その彼等を、その理由は、なめくじに聞いてみろ、と言いながら退治していくのが、主人公なのだ。楽に予想の出来る終盤展開は面白くはあるが、ラストがこの手のものにしてはどうも面白くないのが問題点か。読みたいジャンルを期待した場合のお奨め度はこの程度だが、まぁ、非常に楽な気持で読めるユーモア犯罪小説と言えよう。 ☆☆☆☆
028 匣の中の失楽 講談社ノベルス 竹本健治 現実と虚構の二重構造、その見分けはつくというのだろうか、圧巻すべき本格ミステリである。その両者の殺人劇の果てにあるものとは!? さかさまの密室の謎とは!? アンチミステリとして有名な物だから、ドクマグや黒死館の如き超絶変格物も想像したが、れっきとした本格探偵小説である。登場人物のミステリ狂達が各々の圧巻推理を披露していくが、何れも決め手に欠くと言う展開が、現実か虚構かで混乱するかの如き感覚で進んでいくのだ ☆☆☆☆☆
023 名探偵なんか怖くない 講談社文庫 西村京太郎 明智、クイーン、ポワロ、メグレと四人の名探偵が夢の共演をしたパロディ。しかも美事な本格ミステリなのであるから面白い。もっとも根本部分に無理も感じるが…。さて、三億円事件の再現を企図したこの事件の行く末とは如何なる物だったか!?
ただ「化人幻戯」「オリエント急行殺人事件」等代表作については犯人バレが多数見られるので注意だ。
☆☆☆☆+
021 白いメリーさん 講談社文庫 中島らも 商店街でのバトル「日の出通り商店街 いきいきデー」を読み馬鹿馬鹿しさに爆笑、「クロウリング・キング・スネイク」では蛇女に爆笑しつつも、その状況でもの肯定指向に心打ち、こっからはシリアス調が続き、回送列車の女の子の謎「白髪急行」、最後に驚く設定「夜走る人」、人の神域を覗き見る「脳の王国」、現れたる掌の先は新たな掌か!?「掌」、これはナンセンスながらも至高の愛「微笑と唇のように結ばれて」、噂の興味が面白い「白いメリーさん」、エレベーターは心の象徴「ラブ・イン・エレベーター」を収録。全部面白く読めたが、「クロウリング・キング・スネイク」「夜走る人」が特に気に入った。 ☆☆☆☆☆−
010 甲賀忍法帖 講談社文庫 山田風太郎 忍法帖の最初。絶大なる作品だ。単純にも面白すぎるのである。更にあまりにも悲しすぎる恋愛。徳川家の世継ぎを決めるのに、選ばれたのが、ある先祖代々の不倶戴天の仲である甲賀と伊賀の忍者同士の10人での争い。しかも何の因果か、甲賀ロミオと伊賀ジュリエットという、ただであえこの状況なのに、争いの禁が解かれてしまったのだ。何という悲恋。最後はまさに壮絶で、ある意味予想の超越だ。 ☆☆☆☆☆
018 忍者月影抄 講談社ノベルス 山田風太郎 忍法帖物。連作短篇にも近い構成の長篇で、伊賀忍者&江戸柳生vs甲賀忍者&尾張柳生が、ある風変わりな理由で、争闘を! ☆☆☆☆+
011 猫は知っていた 講談社文庫 仁木悦子 第三回江戸川乱歩賞受賞作。処女作であり、仁木兄弟活躍もの。犯人当てについては充分すぎるくらい推定可能であり、全体的に非常によく出来た今でも全然面白い本格だ。 ☆☆☆☆☆−
019 怪奇四十面相/宇宙怪人 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫34巻」の少年もの二篇。「怪奇四十面相」は四十面相対小林少年で、小林少年の活躍が目立つ。「宇宙怪人」はSFであり今までと全く違う展開が面白し、スケールが広大である。乱歩随筆に出てくるような、犯罪動機にも圧巻させられる。 ☆☆☆☆☆
019 幻影城通信 講談社文庫 江戸川乱歩 未刊評論集「江戸川乱歩推理文庫62巻」。 ☆☆☆☆☆
019 妖怪博士/青銅の魔人 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫32巻」の少年もの二篇。最近読んだ「青銅の魔人」は除いた。「妖怪博士」は二十面相の滑稽とも言える少年探偵団と明智小五郎への復讐物語である。 ☆☆☆☆☆
019 奇譚/獏の言葉 講談社文庫 江戸川乱歩 手製本「奇譚」は若きプレ乱歩の明治大正探偵小説観を知る上の最上のテキスト。獏の言葉は未刊随筆集。「江戸川乱歩推理文庫59巻」 ☆☆☆☆☆
019 うつし世は夢 講談社文庫 江戸川乱歩 未刊随筆集。「江戸川乱歩推理文庫60巻」 ☆☆☆☆☆
018 十字路 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫29巻」。 ☆☆☆☆☆
018 鬼の言葉 講談社 江戸川乱歩 「悪人志願」と「鬼の言葉」の二つの評論集。詳しくは評論集で。 ☆☆☆☆☆
017 化人幻戯 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫26巻」。再々読に利用した。詳しくは長篇作品説明のページで。 ☆☆☆☆☆
014 虎の牙/透明怪人 講談社文庫 江戸川乱歩 表題二作の少年もの。「江戸川乱歩推理文庫33巻」だ。「虎の牙」の方には既読感があったせいか、個人的には「透明怪人」の方が面白く感じたかな。でも納得度?勝負では「虎の牙」かも(笑) ☆☆☆☆☆
000 黒蜥蜴 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫17巻」。再々読に利用した。詳しくは長篇作品説明のページで。 ☆☆☆☆☆
00b 蔵の中から 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫61巻」未刊評論の一冊。詳しくは評論・随筆作品集のページを見るべし。 ☆☆☆☆☆
005 悪魔の紋章 講談社文庫 江戸川乱歩 「江戸川乱歩推理文庫21巻」。再々・・・読に利用した。詳しくは長篇作品説明のページで。 ☆☆☆☆☆
005 怪人二十面相/少年探偵団 講談社文庫 江戸川乱歩 表題2作の少年物収録の「江戸川乱歩推理文庫31巻」。細部までは全く覚えていなかったが、特に「少年探偵団」の方に何となく既読感のようなものがあった。出来にしても、どちらかと言えば「少年探偵団」の方が上のように思われる。 ☆☆☆☆☆
045 ふたたび赤い悪夢 講談社文庫 法月綸太郎 「頼子のために」の完全なる続編。他、クイーンの「九尾の猫」などのネタバレもあり。80年代のアイドル全盛期の命脈が尽きようとしていた90年代初頭の話で、大手プロダクションと、零細芸能プロダクションの期待のアイドルが絡んだ事件。殺人者の血の呪縛と、殺してしまったはずが生きていて、生きていたはずなのに殺されている不思議。絶体絶命に追い込まれたアイドルに、「頼子のために」後遺症が痛々しい綸太郎が挑まねばならなくなってしまったのだが、さて現在の容疑と過去の呪縛といかに闘っていけたのだろうかと言う展開。くどすぎる内容と伴わない精神状態、あまりに安易な展開に感銘は薄い。これらの点では「頼子のために」の方が随分上に思える。 ☆☆☆☆−
02a 法月綸太郎の冒険 講談社文庫 法月綸太郎 法月綸太郎活躍の短篇集。どれもコンスタントに面白いと言えよう。収録作品は死刑寸前の殺人劇で可能性はともかくその動機が意外の「死刑囚パズル」、これも純朴だが怖い動機「黒衣の家」、構成が少し面白い「カニバリズム小論」、肯ける動機だが半端な「切り裂き魔」、密室の謎は唸らせる「緑の扉は危険」、鮎川哲也と13の殺人列車'91の趣向が楽しめる「土曜日の本」、天小口だけで図書を借りまくる謎「過ぎにし薔薇は」。 ☆☆☆☆+
026 頼子のために 講談社文庫 法月綸太郎 手記によると、それは娘を妊娠させ殺害までした男へ、父親による復讐劇であった。そしてそれは政治的な事件に発展する。さて法月綸太郎は、権威者の犬だったろうか、いや彼はこの事件に隠れた真実を引きずり出そうとしたのだが、その真実とは一体いかなるものだったか!? ☆☆☆☆+
010 誰彼 講談社文庫 法月綸太郎 別れ別れの三人の兄弟が絡む殺人劇。どんでん返しの連続は圧巻である。さて新興宗教の教祖の謎とは!? ☆☆☆☆+
017 雪密室 講談社文庫 法月綸太郎 名探偵・法月綸太郎と法月警視初登場作品。しかし予想通りどうも大したことがない。二重密室そのものは面白いが、どうもあまりにも作り物すぎる、本物に見せようとしての結果が作り物では駄目であろう。処女作の「密閉教室」の方がよほど効果的で面白い作品に思え、もしこっちが処女作だとしたら、最初から沈んでいたのでは!? とすら思えてしまうのだが。 ☆☆☆
008 法月綸太郎の新冒険 講談社ノベルス 法月綸太郎 ううっ、と唸るほどのこれぞ本格と言えるような短編集だった。『イントロダクション』『背信の交点』『世界の神秘を解く男』『身投げ女のブルース』『現場からの生中継』『リターン・ザ・ギフト』を収録。 ☆☆☆☆☆
003 密閉教室 講談社文庫 法月綸太郎 推理物としては、材料や論理展開など言うことなしだった。読み進めるごとに種種の解決への道が露呈していくのだ。もっとも私的推理では、的はずれなものが圧倒的だったのだが・・・。 ☆☆☆☆+
049 百器徒然袋―風 講談社ノベルス 京極夏彦 榎木津礼二郎活躍の連作中篇集。「五徳猫」「雲外鏡」「面霊気」。馬鹿馬鹿しさの固まりのような話が続く。その渦中にいるのはもちろん非常識極まりない榎木津礼二郎その人だ。まさに滅茶苦茶、平々凡々どうしようもない本島は積極的に非常識に巻き込まれていく。その気の毒さと榎木津の破天荒さがこの本の笑いの読み所。もちろん肝心な事件は謎解きになっているので面白さの点では抜群だ。 ☆☆☆☆+
016 百鬼夜行―陰 講談社ノベルス 京極夏彦 京極堂シリーズの外伝的短篇が10。「小袖の手」「文車妖妃」「目目連」「鬼一口」「煙々羅」「倩兮女」「火間虫入道」「襟立衣」「毛倡妓」「川赤子」を収録。 ☆☆☆☆+
015 百器徒然袋―雨 講談社ノベルス 京極夏彦 榎木津礼二郎活躍の中篇集。「鳴釜 薔薇十字探偵の憂鬱」、「瓶長 薔薇十字探偵の鬱憤」、「山颪 薔薇十字探偵の憤慨」の三篇を収録。長篇に比べると、どれもあっさりしているが、中禅寺やら関口やらのお馴染みの登場人物もしっかり己の役割で活躍??し、極めつけは榎木津のキチガイ振りが痛快すぎるのである。特に秀逸は「鳴釜」であり、愉快愉快であった。 ☆☆☆☆☆
007 塗仏の宴 宴の始末 講談社ノベルス 京極夏彦 下記「宴の支度」解決長編。登場人物などがリンクしているので相変わらず作を重ねるごとにシリーズ旧作を飛んでいないと苦しいものがあるため注意が必要だ。なお、その展開は少々苦しいような気もしたのだが・・・。 ☆☆☆☆+
007 塗仏の宴 宴の支度 講談社ノベルス 京極夏彦 連作短篇形式を採っていて、最初とラストをはじめとして、それぞれがリンクしている。「ぬっぺっぽう」「うわん」「ひょうすべ」「わいら」「しょうけら」「おとろし」を収録。面白い話とつまらない話の落差は大きかった。 ☆☆☆☆
006 絡新婦の理 講談社のベルス 京極夏彦 - 今までの一連のシリーズ作品に出てくる名前が続々と登場。その面で1〜4作目までに関連も少なからずあった。二面的に展開する女性権利問題を秘めた猟奇事件を繋げる超プロバビリティというべき犯罪。 ☆☆☆☆+
006 鉄鼠の檻 講談社のベルス 京極夏彦 第一作『姑獲鳥』から繋がる話だった。謎の寺院を舞台に奇怪な事件がいつもの面々の前に起こる。事件が複雑に絡み合いなかなかの面白さだった。 ☆☆☆☆☆−
006 狂骨の夢 講談社ノベルス 京極夏彦 相変わらず猟奇事件が多発し、中盤は面白くもあったが、序盤、終盤といまいちで前二作に比べるとかなり劣ってるように思えた。 ☆☆☆☆
005 魍魎の匣 講談社ノベルス 京極夏彦 箱、筥、匣とハコが纏わり付く複数の事件が複雑に入り組み、恐怖と戦慄と誘う小説だった。特に中盤以降の多くの謎の解答がリンクしていくの展開には衝撃としか言えなかった。 ☆☆☆☆☆+
003 姑獲鳥の夏 講談社ノベルス 京極夏彦 思っていたのとは異質の恐怖感を感じずにはいられなかった。推理小説としては異色だろうが、ゾクゾクするこの感覚は私の好むところであった。
まぁ、推理の方は無理があったと思うが・・・。
☆☆☆☆☆
069 透明人間大パーティ 講談社文庫 鮎川哲也編 様々な意味の透明人間ものを集めたアンソロジー。槙尾栄「透明の人間」は戦前発表の異様な感じを受ける作品である。チグハグな展開は否めないが決して便利ではない透明人間の悲哀が痛々しいのである。海野十三「赤外線男」はお馴染みの末恐ろしい犯罪作品で心理的妙技が見事であり意外な犯跡と犯人も楽しめる作品になっている。香山滋「白蛾」は保護色的透明という興味もだがその成り立ち具合がさすが香山と言った仰天するものだ。モンキーパンチ「Mr.とうめい」は漫画であるが有名人のものだけに非常に興味深い。天城一「高天原の犯罪」はこれもお馴染みであった。本来は本格推理に相応しい会心の作である。そこに出て来る透明人間ももちろんチェスタトン風の意味合いであるのは言うまでもあるまい。草野唯雄「透明願望」はまさにタイトルのごとしで見せ方は巧み。手塚治虫「傍のあいつ」は透明人間を一歩進めた形の脅威の感覚というべきもので、偏執狂の主人公と相まって効果は抜群である。都筑道夫「透明人間がやってきた」はジュブナイルらしくもそのタイトルも効果的なミステリと言える。赤川次郎「見えない手の殺人」は人間の精神力の儚さを感じさせるごく普通のミステリー。横田順彌「見えない敵」はユーモア編である。新居に透明人間が勝負を挑んでくる自体がユーモアであるのに最後までユーモアなのだ。最後は江戸川乱歩「透明の恐怖」。まさに本書のラストの透明の怪談を解説するのにこれほど相応しい随筆もないだろう。 ☆☆☆☆+
019 宛先不明 講談社文庫 鮎川哲也 鬼貫・丹那シリーズであるが、鬼貫はラストの一章しか姿を見せない。そう、メイントリックの宛先不明のトリック崩しで、犯人のアリバイをうち崩す役目である。そしてそのトリックを崩すのはそれほど難しくなかったと思う。前提となるプロット・ロジックの方は絶大で面白く、最後に述べられた比喩的な意味の宛先不明の恐怖を感じるのである。 ☆☆☆☆
017 王を探せ 講談社文庫 鮎川哲也 鬼貫・丹那シリーズ。犯人の名前は明かであるのに、解決しない難事件。というのも犯人・亀取二郎と同姓同名でかつ、怪しげな真犯人候補が5人もいるからで。名前も王もそれだけでは絞り込みの材料になり得ないのである、という本格で、私的にはアリバイトリックよりも、その構成力といったものに面白味を感じた。 ☆☆☆☆+
000 戌神はなにを見たか 講談社ロマンブックス 鮎川哲也 鬼貫・丹那シリーズ。また「死者を笞打て」と同様のお遊び趣向もあるし、江戸川乱歩関連では名張市周辺の事などが事件で重要な地位を占めていて、面白い。(個人的には現住所の隣の番地が出てくるなども驚きであった。)で、本格推理の面白さだが、このアリバイ崩しが崩しがいのあるもので、非常に楽しめるものだ。まさに絶賛クラスと言える。 ☆☆☆☆☆
003 朱の絶筆 講談社文庫 鮎川哲也 星影龍三、声の出演作品。
読者への挑戦の所までで、細かいところを抜きにすれば、つまり大雑把で許されるなら、推理により犯人を当てることが出来た。殺人の多数発生、前半の登場人物別ストーリー、そしてトリックにおいても、本格ミステリとして、充分満足いく作品だった。
☆☆☆☆☆−
003 死者を笞打て 講談社文庫 鮎川哲也 鮎川哲也が主人公の作品で登場人物も作家連のパロディなので、興味深い。鮎川氏の人なりがそれなりにわかるのも、同じくだ。昭和30年代の推理界に詳しい人だと、かなり楽しめる本だと思われる。 ☆☆☆☆+
001 りら荘事件 講談社文庫 鮎川哲也 犯人は見当もつかなかった。トリックの前に惨敗である。これこそ本格という内容であり、著者の作品をまた読みたくなった。 ☆☆☆☆☆+
019 人狼城の恐怖
第四部―完結編
講談社文庫 二階堂黎人 何という戦慄だ。読中はもちろん、読了後の余韻は圧倒的なものだ。決して冷めやらぬ動悸だ。絶大な真相、大トリックの嵐。メイントリックとなる根本部分こそは推定出来ていたが、問題編の細かい謎、といっても一つ一つからして本格長篇を支えるメイントリックになる、は皆目見当もつかず、各種欺瞞も同様だった。それに更なる根本は圧巻としか言いようがない。そして更なる物語を残しつつ、カーテンは閉じるのである。とにかくまさに絶讃! ☆☆☆☆☆+
018 人狼城の恐怖
第三部―探偵編
講談社文庫 二階堂黎人 名探偵・二階堂蘭子が登場し、仏独両国で調査するも、更なる怪奇な事件でその前途も多難。二つの殺戮事件に繋がりはあるのか! ☆☆☆☆☆
017 人狼城の恐怖
第二部―フランス編
講談社文庫 二階堂黎人 怪奇サスペンスは些かドイツ編の方が上のような気がするが、その分SF度、推理度はこちらが随分上だ。ナチスの人狼の恐怖の実際は如何に!? それとドイツ編の不可解な謎への繋がりは感じるが、迷える子羊の私は蘭子の登場を待つしかなさそうだ。 ☆☆☆☆☆
016 人狼城の恐怖
第一部―ドイツ編
講談社文庫 二階堂黎人 凄すぎる。何も解決していない上に謎だらけなのに凄すぎる。これだけではスプラッタ恐怖小説のようなものに成りかねないが、SF怪異でもある。いやだから推理が不可能に導かれる。ドゥーゼのトリック+脳内世界か、とも思ったが、どうもわからない。最後でますます違うベクトルで意味不明に陥るのみだ。ともかく第3部以降の蘭子の登場を待つしかないのか。 ☆☆☆☆☆
016 ユリ迷宮 講談社文庫 二階堂黎人 圧倒的なスケールの元で建物消失トリックを扱った傑作短篇「ロシア館の謎」、密室を扱ったものだが、個人的には関心できない部類の「密室のユリ」。毒殺事件の真相は二転三転で面白い秀作中編「劇薬」を収録。 ☆☆☆☆+
000 聖アウスラ修道院の惨劇 講談社文庫 二階堂黎人 キリスト教修道院関連で起きた2つの密室殺人を含む連続猟奇殺人事件に名探偵二階堂蘭子が挑む作品。前中盤カ−、後半ルブラン的な作品だ。タイトルの真の意味はまさに驚愕ものとしかいえないだろう。 ☆☆☆☆+
006 吸血の家 講談社文庫 二階堂黎人 過去現在の足跡のない2次元の密室殺人を主体としつつも、家屋の密室殺人もあり不可能犯罪のオンパレード。更に怪異性も申し分もなく、ラストまで目の離せない展開であった。二階堂蘭子活躍の名探偵もの。相変わらずの各種トリック講義や詳しい注釈入りである。難点はやや先人のネタばれと危惧される点がいくつか見られたことだろうか。まぁ、それも未読なら特に気にせず読み進めるようなセリフだとは思うが。 ☆☆☆☆☆−
990 地獄の奇術師 講談社文庫 二階堂黎人 その乱歩な世界には思わずニヤリとしてしまった。犯人はその3分の2くらいは当たったが、残り的はずれだった。まぁ、それがトリックを崩しきれずに分かる限度だったのかもしれない ☆☆☆☆
029 メビウスの殺人 講談社文庫 我孫子武丸 速水三兄弟妹シリーズの第三長篇。今の所最終作である。このシリーズ中では隨一の出来映えだと言っても良いサイコサスペンス(もっともユーモア度は些か落ちる気がするが、って比べるはシリーズ前二作、とは言え単なる馬鹿馬鹿しさは増すかも知れない)。犯人は最初から分かっている殺人鬼。それがパソコン通信で知り合ったという尊敬すべき親友とおぞましいゲームを始めたのである。その恐るべき秘密とはどのようなものだったか!? ☆☆☆☆☆−
025 人形は眠れない 講談社文庫 我孫子武丸 火をキーワードにした三つの謎と鞠夫誕生秘話の中の謎―全然驚きもしない軽い物だが―を一纏めに長篇にした物。しかしミステリとしては軽い軽すぎる(笑)。しかしストーリーは相変わらずとても面白かったのだった。しかしやはりよく考えると凄い怖い話。 ☆☆☆☆
025 人形は遠足で推理する 講談社文庫 我孫子武丸 ハッキリ言って、幼稚園児バスジャック事件のバックで起こった密室殺人事件等は驚きもないが、この人形シリーズのほのぼのさは大好きである(笑)と言う事で軽い物語としては十二分に面白い。 ☆☆☆☆−
006 0の殺人 講談社文庫 我孫子武丸 速水三兄弟のユーモア探偵小説。
着想的には面白かったが、どうしても納得出来ない部分が致命的のような気がした。
☆☆☆
003 人形はこたつで推理する 講談社文庫 我孫子武丸 ユニークでほのぼのした推理小説。たまにはこういうのを読むと、気が楽になるかも。でも深読みすると、テーマは深刻かも!? ☆☆☆☆☆−
99b 8の殺人 講談社文庫 我孫子武丸 偶然に頼りすぎてる感があり、トリックの面ではいまいちでも、人間が生き生きと描かれてる点が大いに評価できる。ユーモアあふれる登場人物には思わず、殺人事件を忘れてしまって、思わず笑わずにはいられない。ラストまで笑ってしまったのは、推理小説の中ではそんなにある経験ではなかったはずだ。トリックは何となく分かったが、私には犯人を指摘できなかったことも付け加えておこう。 ☆☆☆☆
061 魔神の遊戯 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔シリーズ。舞台はスコットランドの小さな村。魔神が咆哮し、手足をバラバラにされるターゲット。その全てはユダヤの神の怒りであるというのか? 島田流の壮大な不可能興味はもちろん、過去に類例多数あるとは言え、人気探偵小説の醍醐味とも言える遊び要素すらも楽しめるのだ。ただ私はあの昔日の御手洗潔が懐かしいのだ。あの日本にいたころの奔放の変人はどこへ消え失せてしまったのか。欧洲の御手洗はただの伝説的な超人と化していて、もはや何をやらかすかわからん(一見するとキチガイ的な身のこなしと言動)という面白みに欠けはしまいか。この点が残念な最近の御手洗潔である。今の御手洗なら吉敷でもキャラ負けしない予感がしてしまふ。 ☆☆☆☆+
043 Pの密室 講談社文庫 島田荘司 御手洗シリーズの愛読者だけに読む価値があり、最低限の読者以外は全く読む価値がないという両極端な作品。というのも扱っている「鈴蘭事件」は御手洗の園児期の、「Pの密室」が御手洗の小学校低学年期の探偵鬼才ぶりを見せつけたという、名探偵コナンも真っ青な作品集であるからだ。本格度で言えば、絵画コンクールの厖大な候補作を手狭な自宅で審査していた男が殺された「Pの密室」事件は、演出として頼るべき所がおぼつかないながらも、それなりにパズルを構成しているが、幼なじみの女の子の両親が経営していたスナックがグラスが割られ放題に荒らされ、更に幼なじみの父親が事故死してしまった真相に迫る「鈴蘭事件」は独りよがりの感が強い。まぁ、これは当時の社会性を示す戦慄の真相の怖さと、幼児御手洗に襲いかかる葛藤の方が興味が強いのだろう。 ☆☆☆+
042 ロシア幽霊軍艦事件 講談社ノベルス 島田荘司 戦前、芦ノ湖に突如出現して、一夜限りで消えてしまったというロシア軍艦の謎に迫る御手洗潔シリーズ。いわゆるロマノフ王朝の秘密もので、アナスタシアであると主張した史実の人物(アナ・アンダーソン)の話とも絡まり、フィクションとノンフィクションの狭間で歴史大河を作り上げている。悲劇性や恋愛要素も絡まり小説としてはまぁ面白い出来であるし感動も出来るだろう。
が、小説以上を求めるとなると、脳についてのこと以外には、ほとんどフィクション部で担っている手前が少々難点であろう。他、歴史を描くのに際していくつか間違いも見受けられるのも気になった。
☆☆☆☆
037 御手洗潔のメロディ 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔シリーズの短篇集。ただ4つの中短篇中、本格物は2つにすぎない所がまず物足りない。「IgE」はその本格物の一つで、ファミレスチェーンのある店で起こった連続便座盗難事件と美女失踪事件が絡んだ謎を追うもの。「水晶のピラミッド」以降に注目された社会性も少し顔を出している。「SIVAD SELIM」は石岡和己のハラハラする挨拶を体験できる点は面白いし、一応ほんのわずかな謎もないことはないが、謎解きがメインの小説では全然ない。高校生ボランティア団体の音楽企画に関する話。「ボストン幽霊絵画事件」はハーバード大学時代の御手洗潔の活躍譚で本格物。Zの文字に対する銃痕からついには殺人事件を推理していく。幽霊絵画は物哀しい。「さらば遠い輝き」は松崎レオナと御手洗のスウェーデンの研究仲間(彼は松崎の旧知の仲でもある)が絡んだ話。推理小説の「す」の字もない作品。
このように旧作を全て読んでいるような熱心な御手洗潔とその仲間達のファン以外には全くお奨めできない内容となっている。
☆☆☆+
031 アトポス 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔シリーズ。ただ御手洗の個性こそはいまいち物足りない。400ページ弱の「長すぎる前奏」は吸血鬼伝説の一つとして歴史に刻まれる事実とその後日譚小説として描かれている部分とその作家が殺されるなどの現実の恐怖を描いている。前半吸血鬼伝説部は美しさを求める王侯貴族による残酷話。そして上海、サロメの台本と続き、本篇死海の殺人へと続くのである。「長すぎる前奏」の後半と「死海の殺人」と松崎レオナが主役を張るが、それは恐るべき物としか言いようがない危機であった。殺人魔とされた現在に甦る吸血鬼の秘密とは!? 完全大トリックもある本篇は、「水晶のピラミッド」「眩暈」の後を継ぐに相応しい作品と言えるだろう。1000ページ弱、読むのは怠いが、それだけの価値はある。もっともいくつもの重要事に偶然が有りすぎたり、複数の事件をごちゃ混ぜにする必要性があったのかは疑問である。 ☆☆☆☆☆
021 火刑都市 講談社文庫 島田荘司 中村刑事活躍の社会派ミステリ。東京という巨大なテーマを舞台に展開される恐るべき脈動。それは動機ともなり悲劇を演出したのだ。悪くはないが大期待してたほどでも無いって所か。 ☆☆☆☆+
013 眩暈 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔シリーズ。「水晶のピラミッド」の社会性の一部をクローズアップした本格。抽象が具体的論理に飛躍し、そして更なる跳躍を果たす。しかし私的には今一つなんかしっくりこないものが残ったような気がする。 ☆☆☆☆
000 水晶のピラミッド 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔シリーズ。文明論、本格、社会問題、怪奇、恐怖等々を扱いつつ、更には時も空間も地球規模の大スケールで展開し、密室殺人という本格ミステリーであり、、ピラミッドの謎に迫る圧巻的作品。ただ最終的密室の謎には物足りなさが残った。 ☆☆☆☆☆−
00a 死者が飲む水 講談社文庫 島田荘司 牛越佐武郎刑事の活躍する。社会派トラベルミステリー。しかしトリックや異様性は本格のものである。盲点から表れる真相の意外さには驚かされるだろう。 ☆☆☆☆
008 暗闇坂の人喰いの木 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔活躍もの。松崎レオナはこの作品で初登場。
まさに恐怖怪談猟奇探偵小説であった。この一言につきるのである。圧倒的な奇想トリックといい、壮大なスケールといい、さすがは島田荘司と言うべきだろう。
☆☆☆☆+
007 島田荘司読本 講談社文庫 島田荘司=責任監修 中編小説「天使の名前」や評論、レオナからの三通の手紙、他、全著作ガイドや井上夢人氏と歌野晶午氏のエッセイを収録。全著作ガイドはこれから旧作を読み進める上でも指南役になりそうであるし、御手洗潔の父親らしき人物を主人公にして大東亜戦争の米国参戦前後や末期を描いた中編小説「天使の名前」は、戦時中の異常事態や改めて戦争の恐怖を想起さしめ、圧倒的絶望悲壮感が漂う中にも希望の光を見いだせるという読後もしばらく脳と心臓に残るような名作だった。ただこれはまったくミステリではない。 ☆☆☆☆+
005 御手洗潔のダンス 講談社文庫 島田荘司 御手洗潔関連の短篇集。
「舞踏病」「山高帽のイカロス」が特に良かった。「舞踏病」では、謎的には今ひとつだが、乱歩趣味と社会的問題が融合されていたし、「山高帽」での大トリックには驚かされる。「ある騎士の物語」では感動を呼び、「近況報告」は、まぁ、ファンなら知りたい日常が綴られていて興味深かった。
☆☆☆☆☆−
003 殺人ダイヤルを捜せ 講談社文庫 島田荘司 キーワードは電話。こんな身近なものの意外な事実は私も初めて知った。 ☆☆☆+
990 斜め屋敷の犯罪 講談社文庫 島田荘司 その密室トリックには、思いも浮かばず、大敗をしてしまった。 ☆☆☆☆+
990 網走発遙かなり 講談社文庫 島田荘司 連作短編小説。最後まで読んだとき、今までの奇妙奇天烈な話が繋がり、感動の作品に化ける。 ☆☆☆☆+
990 改訂完全版
異邦の騎士
講談社文庫 島田荘司 戦慄を感じずには読めなかった。思わずに中に引きずり込まれてしまう。御手洗潔シリーズの原点でもあり、作者の原点でもある ☆☆☆☆☆+
99b 御手洗潔の挨拶 講談社文庫 島田荘司 どれもこれも面白く、「紫電改研究保存会」と「ギリシャの犬」が特に良かった。「疾走する死者」では失いつつある自信を難なく取り戻すこともできるし、「数字錠」も人間描写に感銘を受けた。 ☆☆☆☆☆
99b 占星術殺人事件 講談社文庫 島田荘司 不覚にも推理、思いつくのが遅すぎた、次こそは、と思わせる作品だった。(何のこっちゃ) ☆☆☆☆☆+
056 時の密室 講談社文庫 芦辺拓 現在の路上で発生した殺人事件、明治初期の「川口居住区」で発生した死体消失事件、大阪万博時代に団塊の世代によって引き起こされた悲劇 、さらにさらに他の時代も相まった、複雑怪奇な様相を状況から、事件の解答を紡ぎ出すは森江春策。その複雑なプロット以外に、アッと驚くほどの大仕掛けが無いのと複合体ストーリーの個々が薄味になってしまうのが物足りない(加えて団塊の世代が見たら怒りそうな描写だ(笑))が、大複数の時空を超えた伏線の妙は美事なところ。
それにしても時の誘拐でもそうだったが、本作にも知らなかった大阪が多数あった。川口居留地もだったが、水上バスや九条の通路など、いやはや今度体験してみたくなったばかりだ。
☆☆☆☆+
051 怪人対名探偵 講談社文庫 芦辺拓 4年半ぶりの再読。内実を知ってからでも面白い。やはり探偵小説はこうでなくては。そのハチャメチャぶり、そのクールさ、そして探偵の一時の前後不覚から始まったお約束の役割完遂。そのストーリーとしての流れとそれを生かした美事な本格トリック。 ☆☆☆☆☆
009 殺人喜劇のモダン・シティ 講談社文庫 芦辺拓 昭和九(1934)年の大阪を舞台とした本格探偵小説。蒼井雄などの探偵作家や他実在の人物が出てくるのも面白いし、圧倒的な戦前モダン文化に触れられている点でも興味深いものがある。また微笑まずにはいられない箇所も多々あり、などなど、つまるところ戦前の探偵小説ファンや戦前の文化好き、関西在住のどれか一つにでも当てはまればかなりお奨めできる小説である。 ☆☆☆☆☆
006 地底獣国の殺人 講談社ノベルス 芦辺拓 森江春策名探偵の推理物。主な舞台は1930年代の地底獣国。論理的な本格ミステリとワクワクスリル満点のSFが一挙両得できる作品。私の推理の方は、そこまで頭が回らずじまいだったが・・・。これを読んで、断然いまだ未読の『地底獣国』や『失われた世界』を読みたくなったのは言うまでもなかった。 ☆☆☆☆+
005 怪人対名探偵 講談社ノベルス 芦辺拓 圧倒的な展開力でした。最初の方は、口絵、目次、細かい?点、大雑把な点での乱歩趣味にニヤニヤさせられ、そのうち、それに恐怖性と不可解性が加わり、そして最後の一部の核心は当たりつつも、ホントの意味では予想をも越えた驚愕的な真相、タイトルの意味。読中はもちろん、読後の恐るべき恍惚感もしばらくは胸中に存在し続けそうな予感だ。 ☆☆☆☆☆+
004 探偵宣言 森江春策の事件簿 講談社ノベルス 芦辺拓 森江春策活躍の7つの殺人喜劇の短篇集。ラスト短篇には思いもしなかった驚きの一幕があります。
「時計塔」「不思議町」「CNO」が特に良かったかな。
もっとも「CNO」はオリジナル知らずだったが。
☆☆☆☆+
99b 殺人喜劇の13人 講談社文庫 芦辺拓 乱歩趣味というか、何というか、の作風には笑みを浮かべずにはいられなかった。多種多様なトリックにもあえなく敗退してしまった。 ☆☆☆☆☆
011 あいにくの雨で 講談社文庫 麻耶雄嵩 烏有の弟らしき人物、如月烏兎を主人公にした本格推理。解説にもあるが期待通りの麻耶らしさはなく、最も、ある意味でまともである。余談だが、個人的に唯一麻耶らしい固有名詞名のマニア性に苦笑いする場面も。ただの私の勘違いなのか、いやしかし(笑) ☆☆☆☆
008 メルカトルと美袋のための殺人 講談社文庫 麻耶雄嵩 銘探偵メルカトル鮎と探偵作家美袋三条の事件簿。どれもこれもアンチ探偵小説的、超絶探偵小説的であり、メルカトル鮎の性格がよく描かれている。(まぁ、美袋の視点であるが・・・)その収録作は最も出来が良いかと思われる「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」、メルカトルの銘探偵たるゆえんの解決「化粧をした男の冒険」「小人闍処ラ不善」、現実も超絶した「水難」、メルカトル鮎の処女探偵小説であり、驚異の本格「ノスタルジア」、メルカトルの恐るべき性格に恐怖する「彷徨える美袋」、『翼ある闇』に繋がり、元はメル最後の事件であったと言う原型が著者最初のメルカトル登場事件という「シベリア急行西へ」。 ☆☆☆☆+
008 木製の王子 講談社ノベルス 麻耶雄嵩 作品の時系列的には『夏と冬の奏鳴曲』『痾』『翼ある闇』の続編にあたる。不可能犯罪を含む壮絶なストーリーと名探偵による相変わらずの超論理から導き出される驚異的真相は素晴らしいが、終わりがあまりにもサッパリしすぎてるのでは?と思われる。今までの銘探偵メルカトル鮎のインパクトがあまりにも強すぎたのが災いしてるのかもしれないが、ちょっと物足りなさも感じた。さて、著者の今後のシリーズの動向も気になるところである。なお、この作はやはり上記の3作、特に『夏冬』『痾』は事前に読んでおいた方が望ましいであろう。 ☆☆☆☆+
001 講談社文庫 麻耶雄嵩 「夏と冬の奏鳴曲」の続編。全作の理解を超えた謎はやはり明示的にわからなかった。謎は深まるばかりだ。
宗教と地震という全作のキーワードを引き継いでいる。
なお、やはりこれは本格ではないと思う。
☆☆☆☆
001 夏と冬の奏鳴曲 講談社文庫 麻耶雄嵩 春と秋の奏鳴曲以後は恐怖と戦慄の連続であった。この読後の余韻の中でもそれはなおも消えはしていない。現に心臓の底から震えて来るような感覚なのだ。こんな感じは久々である。この小説は超推理小説然としたところがある。といっても悪く言えば、推理小説ではあり得ない(ましてや本格では)のだが、ラストまで驚きを隠しえず、はるかに理解を超えていた。早く続編を読まねばならない。読まずにいられない。 ☆☆☆☆☆+
99b 翼ある闇
メルカトル鮎最後の事件
講談社文庫 麻耶雄嵩 独特の雰囲気を醸し出すタッチには取っつきにくい癖も感じたが、その二重三重のどんでん返しには頭下がるだけだった。 ☆☆☆☆☆−
041 黒猫館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 2003年末の新幹線で読了。新幹線の道中半分くらいで読むにはちょうどいい分量と読みやすさであったから選出。
「時計館」の直接的続編と言える。展開としては記憶を無くした老人の手紙が現実か否かという展開である。トリックは壮大ながら今読むと大した物に思えないレベルだが、新本格として書かれた時期を考えると評価出来るだろう。その後のバリエーションは新本格以降の熱心でない読者私ですらいくつか思い浮かぶほどである。
どうも内容の割には、文体的に話を軽く感じてしまう感が拭えない、深みが足りないのが、最大の欠点だろうか。だから「時計館」「人形館」「迷路館」「十角館」に比べたら、随分落ちるという印象だになってしまうのだ。
☆☆☆☆
026 時計館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 十角館の登場人物が再登場するのが本作。時計館での連続殺人の驚くべき殺人。トリックと犯人は何となくは簡単に読めるが、近いようで根本的に間違えていると、正解には辿り着けない。霊媒師及びある出版社とオカルト専門のミステリー研究会の面々が時計館で直面した殺人事件、島田潔こと、鹿谷門実は如何に真相を見抜いたか!? ☆☆☆☆+
023 人形館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 意表を衝く構成。本当の復讐者の面白さ。京都の人形館を舞台にした本格ミステリだ。真相は読めても驚きは驚きである。 ☆☆☆☆+
018 迷路館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 あらゆる意味でゲーム性が圧巻の本格ミステリ。文字通りの迷路館、この状況を使い切れているか、と言えばかなり不足もありそうだが、設定その他も含め充分面白い作品と言える。 ☆☆☆☆+
99b 水車館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 半分以上の謎は解くことが出来た。しかしどうもトリックが陳腐なような気がしたのは気のせいだろうか。 ☆☆☆+
99a 十角館の殺人 講談社文庫 綾辻行人 不可能と考えたこともあり、まったく、裏をつかれてしまった。まんまとしてやられたわけである。 ☆☆☆☆
99a 震える岩
霊験お初捕物控
講談社文庫 宮部みゆき 超能力というファンタジー色を含めた時代サスペンス。下手をすると馬鹿馬鹿しさを含みかねない超能力を巧みに使いこなしているところが良かった。続編をぜひ出して欲しい作品。 ☆☆☆☆☆−
078 マレー鉄道の謎 講談社文庫 有栖川有栖 初期と比べると洗練されたな〜、としみじみ感じさせてくれる逸品。作風が当時の系統に近いからこその感慨だろうか? 本作はこれまでの国名シリーズとは異なり、マレー半島を結ぶマレー鉄道が重要な舞台にもなっている。殺人事件の舞台としてはマレーシアの避暑地キャメロン・ハイランド、ここを訪れたお馴染みの火村と有栖川の仲良しコンビであるが、今回は大学時代の旧友である大龍も絡んできている。その効果として青春小説よろしくの大学時代の描写が出て来る点もある。殺人の現場は完璧に内側から目張りされ密室状態となっているが、死体の状況は自殺とは考えられない。帰国の時間まで迫る中、殺人は繰り返されるという展開。 ☆☆☆☆☆
071 スイス時計の謎 講談社文庫 有栖川有栖 たまに有栖川有栖のオーソドックスな本格物が読みたくなる。読後にあらためて思うと、それが正しい認識だったことがよくわかる。
「あるYの悲劇」「女彫刻家の首」「シャイロックの密室」「スイス時計の謎」の四つの中短篇を収録。
「あるYの悲劇」はダイイングメッセージもの。ダイイングメッセージと言えば月光ゲームを少し思い出すが、この作品は納得できる必然性を備えている。
「女彫刻家の首」は首の無い死体もの。まさにこれぞオーソドックス。
「シャイロックの密室」は密室物。倒叙らしいが手法は中途半端にも思える。これもオーソドックス。
これまでの3つは可もなく不可もない読みなれた本格物と言えるだろう。
「スイス時計の謎」。これは作中でも述べられているが悪魔的までに論理的に犯人を指し示すという恐るべき作品。紛失または粉砕したスイス時計だけという物的な決定的証拠にはなり得ない材料だけで、論理的には決定的証拠となってしまうのには舌をまくしかない。どうでもいいが、文庫本裏表紙の文章はあまりにも的外れな本書の説明書きでよろしくないのはいただけない。
☆☆☆☆☆−
041 ブラジル蝶の謎 講談社文庫 有栖川有栖 げっ。実は講談社で有栖川読むのは、4年ぶりだったのか(^^; 恐るべき事実に驚愕してしまいました。
それはともかく「ブラジル蝶の謎」、まぁ面白い作品レベルのお短篇集です。表題作の「ブラジル蝶の謎」は文化的盲点をついたもの。トリックに面白みはないが、ブラジル蝶というモチーフが面白い。「妄想日記」は精神異常者が自殺したと言う話で、死者は自分用の新語を作っていたという展開。「彼女か彼か」は初っ端からの女言葉一人称の印象だけが強烈だが、決定的なミスで犯罪が破綻する話。本格ミステリとしては誰もが解りやすい作品。「鍵」は殺人事件のあった家で発見された鍵の謎。この謎がまた中世的なリアルさを持っていて面白い。「人食いの滝」は中篇とも言える分量で、足跡トリックもの。不自然さはあるが、短篇のトリックとしては良い。短篇ならだが。「蝶々がはばたく」は異色作である。推理小説としては軽いんだが、その意味することに、それ以上の重みがある。
☆☆☆☆
003 スウェーデン館の謎 講談社文庫 有栖川有栖 例の火村とアリス登場の長編作品。
トリックも独創的だったし、話もよかった。
火村が少し好きになった作品でもある。
☆☆☆☆+
99b ロシア紅茶の謎 講談社文庫 有栖川有栖 表題の「ロシア紅茶の謎」や「赤い稲妻」は素晴らしい出来だと思ったが、他のは今ひとつのような感じがする。 ☆☆☆+
99b マジックミラ− 講談社文庫 有栖川有栖 案外安っぽく見られがちなトリックを使っているにも関わらず、その辺をも逆手に取ってる所などは心憎いばかり。 ☆☆☆☆−
999 46番目の密室 講談社文庫 有栖川有栖 相変わらず、読みやすいところが良いし、やっぱり本格なので推理しがいがある。 ☆☆☆☆
997 深い河 講談社文庫 遠藤周作 生き方とは何か?過去に背負いしものからの解放を求める先はガンジス川だった。という遠藤さん晩年の作品。 ☆☆☆☆
994 五体不満足 講談社 乙武洋匡 彼は誰よりも充足している。五体満足の我々にも不満足な部分が多々あることを思い知らされる。 ☆☆☆☆☆
994 蒼穹の昴(上) 講談社 浅田次郎 日本史では李鴻章は下関条約の清側全権としか覚えないからその反動からか彼がえらくかっこよく見えた。 ☆☆☆☆☆
994 蒼穹の昴(下) 講談社 浅田次郎
三銃士 講談社 デュマ 桜井成夫