角川書店

*** 書籍表題 出版社 筆者 訳者など 一言感想or備考 お勧め度
087 生首に聞いてみろ 角川文庫 法月倫太郎 有名彫刻家の遺作は娘の石膏像だった。しかしその首が盗まれるに及んで事態は各方面で紛糾する。プロットの見事さの前に読んでいる間はおもしろくて仕方があるまい。 ☆☆☆☆+
065 ダ・ヴィンチ・コード 下 角川文庫 ダン・ブラウン 越前敏弥 映画化されるらしいので、1年遅れの今さらながら読んでみた。

主人公ラングドンが初めて会う日に殺されたルーブル美術館館長。そのダイイングメッセージには全体的に謎々の文章であったが、主人公の名前が含まれていたため、当局は主人公を重要容疑者と見なしてしまう。その窮地を救ったのは館長の孫だという暗号解読家であったが・・・・。フィボナッチ数列、黄金比、アナグラムなど象徴で彩られたレオナルド・ダ・ヴィンチの芸術に隠された秘密に迫る本書である。
新旧聖書の知識すらおぼつかないようにキリスト教の基礎教養に著しく理解を欠くため一様に裏の面白さはよくわからない(この点暗唱できるように聖書で育ち、その聖書的な歴史も一般教養として持っているカトリック教徒が本書を読む時の大きな衝撃を知ることは絶対できない)。本小説のミステリ小説としての表面だけを見ると、なじみ深い実在の人物や建物を登場させて物語を身近にしつつ、アナグラムを代表するような古典的な暗号と暗躍する秘密結社、都合良く捕まらないサスペンス、そしてこれまた古典的な宝捜しゲームにすぎない。しかしキリスト教徒でなくとも、その必然的に捏造され続けた歴史というテーマの重大性は理解できる。二千年に及ぶ社会の根幹そのものに対する強烈なメスは、どの社会や宗教においても怖いもの見たさといった恐ろしい探求心との葛藤も絡むのだろう。
むろんこの作品に書かれた解釈が正しいとは言いきれないし、そもそも小説という形態上説明不足が生じるのは致し方あるまい。また反論する材料も山ほど出て来るのが必然であるが、本書のベストセラーという事実は現在のキリスト教社会の健全性を示すものとも言えそうだ。原理主義者は激怒してるかもしれないが…。
☆☆☆☆+
065 ダ・ヴィンチ・コード 中 角川文庫
065 ダ・ヴィンチ・コード 上 角川文庫
064 翼に日の丸 下 角川文庫 川又千秋 20年前に始まり、そして10年前を最後に消息を絶っていたという。何かといえば、あの有名な架空戦記「ラバウル烈風空戦録」のことだ。その18冊を凝縮再構成し、結末を描いたというのが、この「翼に日の丸」なのである。
この架空戦記の特長は対米戦が1948年まで続くと初っ端で明かにしたことだ。残念ながらそれがアダとなり1945年辺りで絶筆してしまっていたというわけだが、基本的にはミッドウェーの敗戦までは史実の通りであるが、それ以前の戦いにおいてから運などが味方した結果、味方の損害が少し減り、米英の損害が少し増えると言う展開であった。面白いところは主人公も搭乗するのだが、善戦をする日本帝国軍戦闘機が次から次へと刷新していくさまだ。九六戦、零戦といった史実に存在するものから、双戦、雷電、烈風、閃風などなど。
本作は「ラバウル烈風空戦録」の熱心なファンには、何一つ続編らしい新話がなかったということで、評判芳しくないが、特に熱心なファンでなかったならば、問題なくお薦めできる作品と言えるだろう。
☆☆☆☆+
064 翼に日の丸 中 角川文庫
064 翼に日の丸 上 角川文庫
053 最後のディナー 角川文庫 島田荘司 石岡和己と犬坊里美を主役にした、「龍臥邸事件」の後日談みたいなもの。「里見上京」「大根奇聞」「最後のディナー」の各中篇を収録。少なからぬ島田荘司のファンなら読む価値はあるが、それ以外は全くないだろう。「大根奇聞」の見せた奇跡がもっとも面白いが、「最後のディナー」同様、どうにも実話に見せつけた完全フィクションでは頂けない。 ☆☆☆☆−
07b セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 角川文庫 島田荘司 ロマノフ王朝もの。占星術殺人事件直後の1982年の若き日の御手洗と石岡のもとに老婦人が事件の依頼に関係ない話をはじめた。最初はつまらん世間話にウンザリしていた御手洗だったが、老婦人の話から奇妙な事件を見出し事件の渦中へ飛び込んでいく。都会の怪事と言える軽い推理ものだが、得意分野でもある都市の脆弱性に触れたり、都市の中での異端な冒険をしたりなど読ませるストーリー展開。クリスマスに薄倖の少女へのプレゼントなどは感動的展開とも言える。読み終わると、この靴に関する予備知識を一気に注入する役目を果たすプロローグ的な短篇「シアルヴィ館のクリスマス」も効果的だったと気付く。ちなみに「マリア・ルズ号事件」は実在の事件だった。聞き慣れないものだったので架空じゃないかと疑ってしまった。 ☆☆☆☆+
051 つくられた明日 角川文庫 眉村卓 「ねじれた町」に期待外れ的なコメントを残しつつ、続けてこちらを読み始め、続けて一気に読了してしまうあたり、その実、この作者を気に入りだしているのかもしれない。そしてこの「つくられた明日」こそが、ねじれた町の第一印象でもあった、時空間系のSFだったので楽しめた。書店に普通に並んでいる占いの本は、まさに何でも適中していた。日別の占い結果が載っているわけだが、まったくの抽象的正解ではなく、それなりの具体性を伴って当たり続けていると気味も悪くなるというものだ。まさに未来予告のごとくだ。そして10/31が危機を迎えると記述、そして11/1が真っ白なページ・・・。死を意味すると頭をよぎってしまった主人公は恐怖した。そこに友人を巻き込みつつ、なぜかサファリルックで統一された連中がその占い本を敵視し出したり、それに敵対する紳士風の連中が現れたり、そしてタイムパトロールなる言葉がでてきたり、彼らがやっていることはまるで子供騙しで馬鹿馬鹿しいようなことならのだが、その実は各陣営にとって、あまりにも重要な、恐るべき闘争だったのだ。おちゃらけたストリー展開とは裏腹に、底辺に流れるもの、とくにラストは非常に重い。 ☆☆☆☆+
051 ねじれた町 角川文庫 眉村卓 実は我ながらこの作者の作品は初読になる。そもそも和製SFは海野十三と蘭郁二郎しか読んだことがないに等しかったのだ。そしてこの作品は時空のネジレでもあるのかなと思って読み始めたのだが、正直言ってこれはどこがSF? と思うしかない読後感だった。ファンタジイではないのか? 意思力がものを言う超閉鎖敵的封建社会がそこにあった。主人公一家は父親の出張というごく当たり前とも言える日常の延長から、Q市へやって来たのだが、その町の初日からして明治時代へ迷いこむという尋常ならざる事態。妖怪や鬼の類も普通に出現。そうなのだ。この町は尋常ならざる力が働いて尋常なるネジレを発生させていたのだ。さて、主人公の運命と町の運命はいかに流転していくだろうか? といった梗概で、それなりに面白く読ませはするが、話の発想に付いて来かねる所も感じてしまった。 ☆☆☆☆−
071 迷宮逍遙 角川文庫 有栖川有栖 移動時間などの短時間単位向けに軽い読み物程度で読みだしたもの。最近はこういうものの方がライフスタイルに適してしてまっている。
有栖川有栖が過去に他者著作に寄せた解説をまとめたもの。デビュー前の鮎哲の1982年角川文庫「鍵孔のない扉」から始まるのは有栖川ファンならば御存じのことであろう。そして2002年創元推理文庫「黒い白鳥」までの全三十六編が収録されている。正直まったく知りもしない作家作品の解説はあまり面白いものではないが、作家自体を知っていれば興味の対象を広げる意味では良いのではないだろうか。
☆☆☆+
044 海のある奈良に死す 角川文庫 有栖川有栖 推理小説「人魚の牙」の取材のため海のある奈良へ行くと言い残した推理作家が、海のある奈良・小浜で無惨な姿で発見された。友人の死にアリスと火村は、友人の最後の作品の足跡を追うが・・・。人魚伝説や作家・編集部らの繋がりを絡めるなどストーリー的には興味深い構成であるが、いかんせんトリックや動機面などの公平さと言う点があまりに貧弱すぎるのが大きなマイナス。しかも壮大な歴史ロマンを漂わせているにもかかわらず、真相が解明されていっても全くの感動を感じないのは、本格ミステリとしては物足りなさだけが漂うのみであった。 ☆☆☆+
039 ダリの繭 角川文庫 有栖川有栖 ダリ髭の社長が殺害された。その死体はフロートカプセルで発見され、しかもその髭が無くなっていたのだ。社長の兄弟の複雑さや多角関係も絡んでいるこの事件の謎をお馴染み、犯罪社会学者の火村英生と有栖川有栖が挑む。
しかし読んでみて驚くような展開ではなかったのが物足りない。予想可能の範疇にありすぎるのだ。それでもってネタ的な小道具も平凡つまらないもの。しかも最後をもっても心理的説明が徹底的に不足しているため、納得しかねてしまう。特に良い点は見当たらないが、無難で全くもって平凡な本格ミステリを読みたい方にはいいかも知れない……。
☆☆☆
031 朱色の研究 角川文庫 有栖川有栖 朱色とはヒロインの名前、火村助教授のゼミの女の子朱美の朱であり、夕焼けの色である。この夕焼けが大いにテーマになる作品なのだ。トリックとしては全体的に弱いとしか言えないだろう。序盤の幽霊マンションにしても、火村ならばもっと早く気付いて然るべきだと勝手に思ってしまう程度のもの。二度殺された二年前の事件についても、解決への手法やあの動機はまァいいとしても、根本的仕様にはどうもしっくり来ないのである。もっとも従来型を越えようとした意味では、成功とは言えないながらも斬新的であったと言えるのかも知れない本格ミステリ。 ☆☆☆☆
027 鏡の国のアリス 角川文庫クラシックス ルイス・キャロル 岡田忠軒 不思議の国の続編。不思議の国比べれば随分見劣りするする気がする。あるいは訳のせいか? ☆☆☆☆
025 乱れからくり 角川文庫 泡坂妻夫 まさにタイトルの通り、乱れからくり、乱れ打ちだ。恐るべき本格ミステリで異様なねじ屋敷で殺人が繰り広げられるのだ。恐るべきからくりマジック。 ☆☆☆☆+
010 氷点(下) 角川文庫 三浦綾子 思わず涙が頬を、おや鼻筋を伝ってしまった何という悲しみ。原罪をテーマにした恐るべき作品であったが、この衝撃の結末は分かっていながら圧倒的な戦慄の高まりだ。このような作品を読むと、自己を省みて情けなくなると同時に、憎むべきあの夫婦、殊に夏枝すらもせめる資格がありようわけもない、と思うしかない。何という家族だ。人は仮面を被っている上に、表面でしか物事を判断出来ない。根本を根本を・・・。 ☆☆☆☆☆+
010 氷点(上) 角川文庫 三浦綾子 上だけで涙が出て来るような気分なのだが、下が楽しみ。幼い娘を殺した。相手の娘を、自分の子供として育てる、しかもバックには暗雲な心理が働いて・・・、「汝の敵を愛せよ」。これは重すぎる。 ☆☆☆☆☆
026 ひとりで夜読むな
新青年傑作選 怪奇編
角川ホラー文庫 江戸川乱歩など 中島河太郎編 牧逸馬「ヤトラカン・サミ博士の椅子」、葉山嘉樹「屍を食う男」、小栗虫太郎「紅毛傾城」、渡辺温「可哀想な姉」、夢野久作「鉄槌」、小酒井不木「痴人の復讐」、瀬下耽「柘榴病」、米田三星「告げ口心臓」、渡辺啓助「聖悪魔」、妹尾アキ夫「本牧のヴィナス」、星田三平「エル・ベチョオ」、橘外男「マトモッソ渓谷」、江戸川乱歩「芋虫」を収録 ☆☆☆☆+
025 君らの狂気で死を孕ませよ
新青年傑作選
角川文庫 江戸川乱歩など 中島河太郎編 角田喜久雄「死体昇天」、水上呂理「精神分析」、海野十三「人間灰」、木々高太郎「睡り人形」、平林初之輔「秘密」、甲賀三郎「四次元の断面」、山本禾太郎「閉鎖を命ぜられた妖怪館」、江戸川乱歩「陰獣」を収録。 ☆☆☆☆+
023 爬虫館事件
新青年傑作選
角川ホラー文庫 江戸川乱歩など 日下三蔵編 いくつか再読しつつも初読中心。収録作品は横溝正史「面影双紙」、水谷準「七つの閨」、渡辺啓助「血笑婦」、城昌幸「+・−」、大阪圭吉「燈台鬼」、江戸川乱歩「火星の運河」、瀬下耽「柘榴病」、夢野久作「人の顔」、海野十三「爬虫館事件」、地味井平造「水色の目の女」、角田喜久雄「恐水病患者」、大下宇陀児「蛞蝓綺譚」、妹尾アキ夫「本牧のヴィナス」、渡辺温「氷れる花嫁」、南沢十七「氷人」、香山滋「タヒチの情火」、三橋一夫「猫柳の下にて」、久生十蘭「黒い手帳」、橘外男「逗子物語」 ☆☆☆☆+
01b 君らの魂を悪魔に売りつけよ
新青年傑作選
角川文庫 角田喜久雄など 中島河太郎編 心理の葛藤の名品・木々高太郎「永遠の女囚」、軽すぎるタッチで傑作なのかと思わずにいられぬ佐藤春夫「家常茶飯」、精神分析の先駆け傑品の石浜金作「変化する陳述」、神津恭介シリーズの月への昇天・高木彬光「月世界の女」、法律を上回る浜尾四郎「彼が殺したか」、どうも本格としては苦しい設定の気もするが角田喜久雄「印度林檎」、精神異常者の狂気小説・横溝正史「蔵の中」、探偵を捜せ・錯覚の犯罪者・大下宇陀児「烙印」を収録。 ☆☆☆☆☆−
01b 妖異金瓶梅 角川文庫 山田風太郎 「赤い靴」「美女と美童」「閻魔天女」「西門家の謝肉祭」「変化牡丹」「麝香姫」「漆絵の美女」「妖瞳記」「邪淫の烙印」「黒い乳房」「凍る歓喜仏」「女人大魔王」「蓮華往生」「死せる潘金蓮」収録の連作短篇。まさに妖異で、妖婦淫婦を欲しいままにしている恐るべき嫉妬の動機。筆舌に尽くし難き面白さだ。しかも本格探偵トリックを使用したその魔の犯罪の連続。そしてどれもこれも面白いのだからもうたまらない、の一言。水滸伝、金瓶梅という中国の奇書のキャラを借りたこの作品群には、変態性欲の極まりを見るのである。そしてそのラストまでも物凄い効果だ。 ☆☆☆☆☆+
01a 天狗の面 角川文庫 土屋隆夫 土屋隆夫の第一長篇で当然、本格ある。滑稽とも言える田舎の農村を舞台に繰り広げられる連続殺人事件。それは天狗教ともいうべき新興宗教に絡んで発生した。トリックはそれ程ではない気もするが、異様な構成と盲点が面白い。個人的には「羅馬の酒器」が引用されているのが嬉しい。ただこれを含めて毒殺講義は少し注意が必要だろう。 ☆☆☆☆+
018 黒いリボン 角川文庫 仁木悦子 仁木兄妹シリーズ。それなりには面白いがどうも、所詮それなり、レベルを超えない。幼児誘拐事件から展開していくのだが・・・・・・。 ☆☆☆☆
016 人外魔境 角川文庫 小栗虫太郎 秘境物13編の連作短篇集である。「有尾人」「大暗黒」「天母峰」「「太平洋漏水孔」漂流記」「水棲人」「畸獣楽園」「火礁海」「遊魂境」「第五類人猿」「地軸二万哩」「死の番卒」「伽羅絶境」「アメリカ鉄仮面」の13話。「天母峰」以降は折竹孫七が活躍。色々な魔境を探検・紹介していく。特に面白く感じたのは「有尾人」「太平洋漏水孔」漂流記」「遊魂境」あたりか。もっとも全体的にもなかなかの面白さであるが。 ☆☆☆☆+
018 十三番目の陪審員 角川文庫 芦辺拓 森江春策シリーズで、いわゆる名探偵でなく、本来の刑事弁護士として活躍。
陪審制の復活した架空の未来を舞台にした社会派本格。冤罪計画の倒叙的始まりを見せたこの事件は、圧巻の不可解法廷小説へ雪崩れ込み、あらゆる悪意から本格の法の正義を守り抜く十三人の陪審員の闘いに発展していくのである。その決めてのトリックには全く感心するばかりである。また私も法学部生としても、一国民としても陪審制度の復活には興味があるのは言うまでもないし、現実での司法制度の革変を期待したい。
☆☆☆☆☆
015 保瀬警部最大の冒険 カドカワノベルス 芦辺拓 冗談のように多岐に渡ったスーパー能力を有するヒーロー保瀬警部が悪の秘密結社相手に大暴れ。まさに明るい爆笑ユーモア+ドタバタ活劇である。最初は唖然と開いた口が塞がらぬ圧巻状況だったが、最終的にはその冗談のような世界に引き込まれ、つまりは爆笑の嵐なのであった。エンターテイメントの固まりのような作品。 ☆☆☆☆+
011 大いなる幻影 角川文庫 戸川昌子 昭和37年の江戸川乱歩賞受賞作である。決して本格ミステリではなく、心理的推理小説とも言えるものだ。過去の幻影を引きずる心の病者たちの切ない物語であり、絶賛の一書だ。乱歩好きとして、江戸川乱歩選考委員の絶賛の言葉を引用させていただくと、「『大いなる幻影』は犯罪の謎解きではあるが、普通の本格推理小説ではなく、私のいわゆる『奇妙な味』の加味された作風で、プロットが実によく考えてある。日本人の作品にはあまり前例がなく、私はこれを読んで、プロットは全く違うけれど、カトリーヌ・アルレェの『藁の女』の読後と似たものを感じました。ことに、今まで何の関係もないように見えた挿話が、ことごとく意味を生じてくるという、推理小説の、最も大切なコツをよくわきまえた作風」と角川文庫の解説にある。また大下宇陀児選考委員も意外性を絶賛している。こうまで書くと、もはや私が追加して言うまでもないことがわかるであろう。心理的文学味のある普通小説らしきものがいつの間にやらミステリに化ける。私も騙された者の一人なのだった。 ☆☆☆☆☆+
000 金融腐食列島II 
呪縛(下)
角川文庫 高杉良 下記同様である。第一勧銀の小池総会屋事件がモデルっぽい銀行小説。なお、下の続編ではないので注意。 ☆☆☆☆☆
000 金融腐食列島II 
呪縛(上)
角川文庫 高杉良 ☆☆☆☆☆−
000 金融腐蝕列島(下) 角川文庫 高杉良 友人に借りた経済小説。いやはや商法のゼミ発表で総会屋云々が担当だったから参考に。
結構面白く参考になる小説だった。
☆☆☆☆☆−
000 金融腐蝕列島(上) 角川文庫 高杉良 ☆☆☆☆+
008 少女地獄 角川文庫 夢野久作 表題作の「少女地獄」([何でも無い][殺人リレー][火星の女]の三編)と「童貞」「けむりを吐かぬ煙突」「女坑主」を収録。特に面白く感じたのは「少女地獄」の[何でも無い]と「童貞」だろう。 ☆☆☆☆
01a 地獄の道化師 角川文庫 江戸川乱歩 『地獄の道化師』『猟奇の果』の再読要員。他に『二癈人』 ☆☆☆☆☆
017 屋根裏の散歩者 角川文庫 江戸川乱歩 『人間豹』の再読要員。他「屋根裏の散歩者」「押絵と旅する男」「恐ろしき錯誤」を収録 ☆☆☆☆☆−
017 パノラマ島奇談 角川文庫 江戸川乱歩 『偉大なる夢』再読要員。それと少し前に『パノラマ島奇談』の再読にも使用。他、『盲獣』も収録。 ☆☆☆☆+
012 蜘蛛男 角川文庫 江戸川乱歩 『蜘蛛男』の再読に利用。多分一番読んでる部類長篇だろう。四回目かもしれない。他に『湖畔亭事件』収録 ☆☆☆☆☆
00b 一寸法師 角川文庫 江戸川乱歩 『一寸法師』の再々読と『闇に蠢く』の再読に利用。お奨め度については下記の通りの扱い。参考までに他に「人間椅子」「二銭銅貨」「夢遊病者の死」を収録。 ☆☆☆☆☆−
008 芋虫 角川文庫 江戸川乱歩 『幽霊塔』の再々読(確か3度目)に利用。他にこの本は「芋虫」「赤い部屋」「踊る一寸法師」という傑作短篇が収録されていることも一応つけ加えておこう。ちなみにお勧め度=三度目の『幽霊塔』のことね。 ☆☆☆☆☆−
008 暗黒星 角川文庫 江戸川乱歩 「暗黒星」「幽鬼の塔」の再・・・読に利用。他に今回は下記の理由で見送ったが、「お勢登場」「目羅博士」「木馬は廻る」も収録。説明等の詳細も下記の通り。 ☆☆☆☆☆
007 白髪鬼 角川文庫 江戸川乱歩 「白髪鬼」「恐怖王」の再読に利用。「白髪鬼」は再読で改めて評価がアップするほどであったが、「恐怖王」は改めて駄作だったと認識した。ちなみに、今回はちくまの再読から間もないために「盗難」「一枚の切符」「人でなしの恋」は読むのを控えた。どちらにせよ、乱歩作品は専門のコーナーで参照すべし。 ☆☆☆☆+
024 鍵孔のない扉 角川文庫 鮎川哲也 これもまた鬼貫警部シリーズの傑作だ。声楽家の妻とピアニストの夫は不幸にも破綻してしまうが、その破綻に奇々怪々な殺人事件が絡んでくるのだ。東京、山形、軽井沢などなど・・・を結ぶ壮大なスケール。論理を駆使した分かりそうで隠された絶大なアリバイトリックに、奇妙な靴の謎、そして鍵孔のない扉・・・・・・。何げに犯人の緻密な論理の中に予告状が登場するなど愉快な点は、まさに満載である。原型短篇「霧の夜」を知っていても面白さは増すばかりなのだ。 ☆☆☆☆☆
016 偽りの墳墓 角川文庫 鮎川哲也 いつも思うことだが、鮎哲長篇ほど確実に満足以上を得られるものは、他には見当たらないように思う。この長篇もアリバイ崩しのトリックがまさにフェアプレイ本格であり、それが何と言っても凄いのである。また某掲示板で話題になっていたことだが、この昭和38年の作品でハンセン氏病に触れられており、これが最近の英断と繋がり、誠に勝手ながら感動を呼ぶのである。 ☆☆☆☆☆−
014 死が二人を別つまで 角川文庫 鮎川哲也 秀作揃いの短篇集。特に表題作のあのトリックには驚くばかりだ。他に前読んだばかりゆえ今回は飛ばした「汚点」、崩れるアリバイが面白い「蹉跌」、何やら再読だった犯人当て「霧笛などなど、他に「鴉」「Nホテル・六〇六号室」「伝説の漁村・雲見奇談」「プラスチックの塔」「晴れのち雨天」「赤い靴下」を収録。倒叙物本格の味わいを贅沢に盛り込んだ一冊だ。 ☆☆☆☆+
00b 積木の塔 角川文庫 鮎川哲也 鬼貫・丹那が最初の方から登場。本格ミステリであるが、動機部分は社会派的だ。鉄道を使ったアリバイ崩しもので福岡〜広島・東京を舞台にする。 ☆☆☆☆+
009 砂の城 角川文庫 鮎川哲也 お馴染みの鬼貫警部がラスト1/4くらいで登場。二つの事件と各々の完全無欠のアリバイ、それを苦戦しつつも解いていく。その過程の美しさ、特にダイヤグラムマジックというべきアリバイ崩しの方には感動すら覚えるではないか。個人的には鮎川さんらしくロシヤ文字がちょっとした謎の解明で活躍したりしたところも楽しめた鳥取から東京までの壮大なアリバイもの本格ミステリである。 ☆☆☆☆☆
008 金貨の首飾りをした女 角川文庫 鮎川哲也 短編集。「井上教授の殺人計画」「扉を叩く」「非常口」「ブロンズの使者」「北の女」「金貨の首飾りをした女」「夜を創る」「夜の散歩者」を収録。特に絶賛クラスなのが長篇バリの複雑さで鬼貫丹那も出てくる「金貨の首飾りをした女」、次に続くのが「ブロンズの使者」「北の女」「夜の散歩者」でこれらも秀作で面白かった。もちろん他のも並以上である。 ☆☆☆☆☆−
006 人それを情死と呼ぶ 角川文庫 鮎川哲也 前中盤には鬼貫はほとんど出てこず、サスペンス的に動機の有無から犯人探しが描かれていて、後半で鬼貫がその仮想犯人のアリバイを崩していく展開。私的には犯人は何となくはわかったものの、トリックは全然だった。 ☆☆☆☆☆
006 呼びとめる女 角川文庫 鮎川哲也 短篇『下着泥棒』『夜の訪問者』『霧の夜』『月形半平の死』『或る誤算』『偽りの過去』『牝の罠』『呼びとめる女』を収録している名作選10。特に面白かったのは『霧の夜』『牝の罠』『呼びとめる女』。いずれにしてもどれも本格ミステリとして面白く犯罪の破綻を楽しく読むことができた。 ☆☆☆☆
004 準急ながら 角川文庫 鮎川哲也 鬼貫警部ものの本格長篇。アリバイトリック崩しもの。もうラストもいいところにならないと、私は任務を完遂できなかった。しかし答える材料はとうの昔に提示されてるのである。ちょっとした盲点をついた作品。ちなみにこのながら≠ヘまだ夜行(ムーンライトながら)としてのみ、現在でも生き残っている。 ☆☆☆☆
004 黒いトランク 角川文庫 鮎川哲也 鮎川哲也氏の不朽の名作。本格。
鬼貫警部が「黒いトランク」に代表される謎を解く。
私の推理は迷推理に終わってしまった。
☆☆☆☆☆
004 ペトロフ事件 角川文庫 鮎川哲也 中川透名義で出した氏の処女作。戦前の旧南満州を舞台とした本格推理で鬼貫警部の初登場作品でもある。若かりしころの鬼貫警部の活躍。 ☆☆☆☆+
001 Wの悲劇 角川文庫 夏樹静子 その名に恥じぬ本格ミステリです。
半ばぐらいで、消去法的にわかりかけたような気がしましたが、証明までは無理でした。一つ難を言えば、決定的証明のためにはある一点しか材料がないことでしょうか。
それとフレデリック・ダネイ氏の解説には感動しました。
それに引き換え、権田氏の解説は最低クラスのような気がしました。この解説、両者とも読前に見るべきではないもの(少なからずネタばれ有り)なんですが、さすがにダネイ氏の方は注意書きがあるのに、権田氏のには全然皆無なのですから
☆☆☆☆☆−
99b 道頓堀川 角川文庫 宮本輝 読み終わって、気がついたが、川三部作のラストらしい。作者の経験から描かれており、読む者にはおそらく非日常的ながら、感動させる力を持っている。ただし私は物語に入りきることは出来なかったみたいだ。 ☆☆☆
055 魔弾の射手 角川文庫 高木彬光 神津恭介シリーズの第三長篇。魔弾の射手を名乗る殺人請負者が徘徊し、神津恭介を苦しめる。東京、青森、京都と舞台の移り変わりつつ、密室殺人などの不可解な事件を展開。そして神津恭介も命からがらという場面も。さて、魔弾の秘密と魔弾の射手の秘密とは何だったか? 神津恭介の恋愛模様も楽しめる古きよき探偵小説が本篇だ。 ☆☆☆☆
033 邪馬台国推理行 角川書店 高木彬光 「邪馬台国の秘密」の一年後位に執筆された小説形式を採らない研究詳細書。批判に対する言い訳書とも言う。推理的に弱い点もいくつか見られるが、諄い位に念を押して来ているし、全体的に見て、説得力はありそうに見える。 ☆☆☆☆☆
029 首を買う女 角川文庫 高木彬光 神津恭介シリーズの短篇集。はっきり言って駄作ばかりである。「青髯の妻」「恐しき毒」「首を買う女」「鎖」「湖上に散りぬ」「モデル殺人事件」「棋神の敗れた日」を収録。些かマシだったのが、「恐しき毒」と「鎖」だろうか。 ☆☆☆−
023 悪魔の嘲笑 角川文庫 高木彬光 神津恭介シリーズ。新聞社に現れた男はらしくない弁護士を名乗るが、いきなり毒殺された。しかも即効性のはずの青酸カリなのである。この男の最後のセリフと過去の毒殺事件から、複雑に事件が入り組んでいくのだ。ただ面白味に欠けるとしかいいようがない。個人的好みの本格型で無いし、驚きという物にも欠けているのである。 ☆☆☆+
017 狐の密室 角川文庫 高木彬光 私立探偵・大前田英策・龍子夫妻と法医学者・神津恭介の夢の競演。緻密な本格の密室などは神津恭介が、大振りな侠客ぶりは大前田が発揮。私的には密室トリックは詰まらない、むしろ大前田が最初に依頼された兄妹相姦の恐怖の謎の方が面白いと言える。事件は新興宗教の教祖と幹部たちの間で発生し、足跡のない密室が構成される。犯人は狐だと言うのか!? ☆☆☆☆+
000 火車と死者 角川文庫 高木彬光 神津恭介シリーズの長篇探偵小説。最初こそ怪奇性に溢れて興味深くあったが、終わってみればどうも今一つ。話がどうも神津長篇らしくないのだ。 ☆☆☆
00a 恋は魔術師 角川文庫 高木彬光 大前田英策シリーズの軽ハードボイルド作品集。
「殺しますわよ」「恋は魔術師」「人を呪わば」「魔炎」「着衣の裸像」「七つの顔を持つ女」を収録。前半、特に「殺しますわよ」と「人を呪わば」はかなりの駄作であり、どうなることやらと思っていたが、「魔炎」以降の三作、殊に「魔炎」と大前田でなく川島竜子活躍の「七つの顔を持つ女」はスリラー性とサスペンス性で非常に楽しめる作品であった。
☆☆☆☆−
009 邪教の神 角川文庫 高木彬光 神津恭介シリーズの作品集。
怪奇性に満ちた本格短篇「邪教の神」、ハラハラさせる大展開の短篇「私は殺される」、後味悪いも現実の厳しさか、の短篇「これが法律だ」と神津恭介、一高時代の大事件で初恋も描いた長篇『輓歌』を収録。特に『輓歌』は下で絶賛クラスと言った長篇『わが一高時代の犯罪』に匹敵以上だと言えるだろう。
☆☆☆☆☆−
008 わが一高時代の犯罪 角川文庫 高木彬光 表題作の中篇「わが一高時代の犯罪」と短篇「幽霊の顔」「月世界の女」「性痴」「鼠の贄」を収録。若かりし神津恭介や松下研三活躍で何かしら美流を感じるタッチと不可能犯罪を扱った「わが一高時代の犯罪」と怪奇性に秀でた本格「鼠の贄」は絶賛クラスの作品で、幻想性に秀でた「月世界の女」と意外性の「性痴」もかなりの秀作で、かなり優れた作品集である。 ☆☆☆☆☆
007 ハスキル人 角川文庫 高木彬光 高木彬光の唯一のSF長篇。最初は愉快な展開で、進んで行くが、ラストの方になると当時の国際情勢が問題になってくる。なかなか面白かったと言えるだろう。 ☆☆☆☆
007 死を開く扉 角川文庫 高木彬光 神津恭介、松下研三登場の長篇本格探偵小説。その意味深なタイトルの示すとおり密室物で怪奇性、SF性も十分に含んでいる秀作。 ☆☆☆☆+
007 幽霊西へ行く 角川文庫 高木彬光 ノンシリーズ短篇集。顔のない死体トリックの『大鴉』、真実はいくつもある!思いこみを扱った興味深い『幽霊西へ行く』、その繋がりのある犯罪小説『公使館の幽霊』、5つの犯人当て短篇小説の『五つの連作』、ヴァンス登場の贋作だが、トリックに新鮮味(前読んだ某彬光短篇とトリック全く同じ)『クレタ島の花嫁』、ポーの「盗まれた手紙」を扱った『第三の解答』、『五つの連作解答編』を収録。 ☆☆☆☆−
006 白雪姫 角川文庫 高木彬光 - 『小指のない魔女』『女の手』『蛇性の女』『嘘つき娘』『加害妄想狂』『眠れる美女』『白雪姫』を収録。全体としては凡作が多い感がしたものの、『白雪姫』は大胆不敵な準密室トリックも含めるが、全体の犯罪方法が意表的で良いかと思われる。 ☆☆☆☆−
005 ノストラダムス大予言の秘密 角川文庫 高木彬光 既に2000年を無事に迎えてるので、注目度は落ち気味だと思うが、ノストラダムス大予言、殊に1999年7月における五島氏や諸氏の珍解釈を鮮やかに翻していく本。高木氏をより良く知る上でなかなか楽しめる一冊でした。 ☆☆☆☆+
005 妖婦の宿 角川文庫 高木彬光 神津恭介活躍の4つの短篇を収録。
「妖婦の宿」と「紫の恐怖」が特に面白かった。
「妖婦の宿」では、その盲点的トリックに騙され、「紫の恐怖」では展開にゾクゾクとし、「殺人シーン本番」では本格の醍醐味を堪能し、「鏡の部屋」では、その「鏡」の魔術に酔いしれました。
☆☆☆☆☆
990 邪馬台国の秘密 角川文庫 高木彬光 こんなに楽しませてもらえるとは!まったく邪馬台論争なんぞ、歴史一般は好きだとは言え、あまり積極的に考えたこともなかったのだが、つまり当然のように従来説しか知らず、陳寿のミスではないかと軽く考えていたのだが、こういうアプローチもあるんだと知ると同時に、最近の他説も読みたくなってきた。それと親魏倭王の金印の行方はぜひ大袈裟に言えば、生きてる内に見つかってもらいたいものだ。 ☆☆☆☆☆+
99b 成吉思汗の秘密 角川文庫 高木彬光 読後、しばらく感動のあまり惚けてしまった。義経がチンギスハンなんて、馬鹿馬鹿しい説だと一笑に伏していたはずの私だったのに、である。それに昭和30年代の歴史的作品だから、期待もほとんどしてなかったのだ。事実私はこれほどまでに暗示があるとは思いもしなかった。その符合のあまりの多さに実際十分あり得るのではないかと、思うほどだ。あるいは成吉思汗の墓が見つかれば、解答が出るのかもしれない。 ☆☆☆☆☆
99b 古代天皇の秘密 角川文庫 高木彬光 歴史好きとしては面白い作品でだった。古事記や日本書紀に縁のない世代だったので、その推理には驚くばかり。前面信頼は不可だけど、十二分に勉強させてもらった。 ☆☆☆☆☆−
993 バースディ 角川書店 鈴木光司 三部作外伝 ☆☆☆
ループ 角川書店 鈴木光司 この中では私のお気に入りのSF ☆☆☆☆☆
983 らせん 角川書店 鈴木光司 ホラーとSFの架け橋 ☆☆☆
983 リング 角川書店 鈴木光司 ホラー ☆☆☆☆
ジーキル博士とハイド氏 角川文庫 スティーヴンソン 大谷利彦 誰もが知る名作でしょ。これは。でもちゃんと活字で読んだ人はいくら居ることか。 ☆☆☆☆
05a 貸しボート十三号 角川文庫 横溝正史 金田一耕助ものの中篇集。「貸しボート十三号」は貸しボート上で見つかったちぎれかけた首の心中死体の謎を解き明かす。その謎のあまりの魅惑が、青春的な流れも加わって読者をハラハラ楽しませるのが良い。
横溝作品らしい田舎の旧家周辺で起こった事件の「湖泥」。プロットと解決にも古くささを感じさせるがこれも横溝金田一の魅力である。
「墜ちたる天女」は同性愛者も絡め、石膏像の死体塗り込めなど乱歩風な遊び心も楽しい。
☆☆☆☆☆−
043 病院坂の首縊りの家 角川書店 横溝正史 金田一耕助最後の事件でサービス精神にも溢れている。前半部で昭和20年代後半の事件のあらまし。金田一耕助も深く関わったこの事件。物語の中心にあるのは名家・法眼家。その法眼家の娘が奇怪な誘拐にあうなどの事件が発生したほか、その法眼家にも関わりを持っていたジャズバンドのリーダーが風鈴と化してしまった前半部。しかし解決は二十年後の後半部となった金田一耕助の最後の事件。さて世代間を渡ったその驚きの真相とは!? ☆☆☆☆☆−
033 花髑髏 角川文庫 横溝正史 長篇「白蝋変化」、短篇「焙烙の刑」、中篇「花髑髏」を収録。いずれも由利先生、三津木俊助活躍譚である。「白蝋変化」は通俗長篇で滅茶苦茶な掻き回した筋ながら恐るべき真相と結末の皮肉さが際だった作品。「焙烙の刑」は取るに足らない作品ながら嫉妬の炎の脅威を、「花髑髏」は復讐鬼の由利先生への挑戦で、意外な犯人が楽しめる。 ☆☆☆☆+
031 八つ墓村 角川文庫 横溝正史 これは怪奇犯罪小説とも云うべきもので、本格推理と云うには材料の提供が半端すぎである。二十数年前に大量三十二人殺しのあったいわく付きの村、岡山のど田舎で巻き起こる恐るべき連続殺人劇。主人公は、その村一番の旧家の跡継ぎだと云われてやって来たのだが、それがイコール前の事件のキチガイ犯人の息子と云う事であり、浴びせられるのは冷ややかな視線ばかり、と言う序盤展開。乱歩「孤島の鬼」と同一要素も数多く散見する本作はさすがに傑作と言えるだろう。 ☆☆☆☆☆
026 びっくり箱殺人事件 角川文庫 横溝正史 笑わせてくれるタッチで描かれた異色作。箱を開けたら、ビックリ!ナイフが飛びだして殺人事件なのだ。もう一つ金田一物の短篇「蜃気楼島の情熱」を収録 ☆☆☆☆−
025 死神の矢 角川文庫 横溝正史 長篇の表題作と、短篇「蝙蝠と蛞蝓」を収録。ちなみに後者は既読との事で今回は読んでいない。表題作、金田一物である。奇矯な博士は娘の結婚相手を、ならず者三人集から選出しようという又奇妙な試み。しかもそれが那須与一ばりの海岸の弓矢当て遊戯なのだ。そしてその矢が殺人事件に絡んでくる。無理のある事実や、フェアとは言い難い展開が全く多すぎるが、それなりには面白い犯人当てだろう。 ☆☆☆☆−
019 蝶々殺人事件 角川文庫 横溝正史 死体の動きなどに興味がある圧倒本格の「蝶々殺人事件」、他に「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」を収録。全て由利先生と三津木記者シリーズである。 ☆☆☆☆☆
018 迷路荘の惨劇 角川文庫 横溝正史 秘密の通路やら人口的地下通路やらが迷路のように立て込んだ屋敷で起こった恐るべき連続殺人事件。片腕の怪人を巡るこの本格は、あらゆる状況が面白い本格である。 ☆☆☆☆☆−
018 犬神家の一族 角川文庫 横溝正史 恐るべき暗示的連続殺人事件。異常な状況の中、さすがのプロットで描く本格探偵小説である。 ☆☆☆☆+
018 殺人暦 角川文庫 横溝正史 「恐怖の映画」「殺人暦」「女王蜂」「死の部屋」「三通の手紙」「九時の女」を収録。どうも移行期のせいか、全体として不足しているものがある。表題作はルパン風の怪盗ものだが、これも同様だ。 ☆☆☆☆−
015 夜光虫 角川文庫 横溝正史 不気味な人面瘡を肩に持つ美少年を中心とした長篇探偵活劇。今回些か悪めいたところもあった由利先生と三津木記者の活躍である。ご都合主義は恐るべきだが、そんなものを吹き飛ばす幻想性みたいなものがバックに流れているのである。 ☆☆☆☆
015 悪魔の家 角川文庫 横溝正史 不気味なデスマスクを巡る「広告面の女」、三津木俊助活躍の悪魔的事件が楽しめる「悪魔の家」、恐るべきサスペンスが面白い「一週間」、怪盗の意外な一面の「薔薇王」、恐るべき謎を由利先生と三津木記者が解き明かす「黒衣の人」、同じく由利三津木コンビが活躍する道化師の影に隠れた犯罪「嵐の道化師」、幻想的物語が効果的な「湖畔」を収録の短篇集。 ☆☆☆☆
013 悪魔の設計図 角川文庫 横溝正史 名探偵の由利先生と三津木記者シリーズの作品集。サスペンススリラーで痛快である。収録作品は異様な状況の「悪魔の設計図」、シリーズ最初の事件で恐るべき結末の中篇「石膏美人」、由利先生若き日の事件でSF探偵小説「獣人」。 ☆☆☆☆+
00a 鬼火 角川文庫 横溝正史 全作幻想と怪奇、幽美に満ち満ちており、まさに全編通じて絶賛クラス以上である。これが絶版な理由が全く理解の苦しむところとしか言えない。それで収録作は中篇「鬼火」、短篇「蔵の中」「かいやぐら物語」「貝殻館奇譚」「ロウ人」「面影双紙」の六編。 ☆☆☆☆☆+
008 恐ろしき四月馬鹿 角川文庫 横溝正史 最初期短編集。「恐ろしき四月馬鹿」「深紅の秘密」「画室の犯罪」「丘の三軒家」「キャン・シャック酒場」「広告人形」「裏切る時計」「災難」「赤屋敷の記録」「悲しき郵便屋」「飾り窓の中の恋人」「犯罪を猟る男」「執念」「断髪流行」を収録。特に楽しめたのは「丘の三軒屋」「赤屋敷の記録」「飾り窓の中の恋人」あたりであろう。ちなみに「犯罪を猟る男」は乱歩名義で発表されたうちの一つである。 ☆☆☆☆
007 真珠郎 角川文庫 横溝正史 由利麟太郎が登場する長篇小説「真珠郎」と他、短篇「孔雀屏風」を収録。「真珠郎」はミステリ的謎解きはもちろんのこと、更にそのバックに流れる怪奇性、耽美性も素晴らしかった。これぞ探偵小説だ!というべき作品である。 ☆☆☆☆☆
007 金田一耕助の冒険1 角川文庫 横溝正史 金田一耕助と等々力警部の登場する短篇集。
『霧の中の女』『洞の中の女』『鏡の中の女』『傘の中の女』『瞳の中の女』『檻の中の女』収録。どれも少なからずの意外性があり、一様に楽しめた。
☆☆☆☆+
005 扉の影の女 角川文庫 横溝正史 表題長篇「扉の影の女」と中篇「鏡が浦の殺人」の2篇を収録。「扉の影の女」はさすが異色作とされてるだけあり、推理小説以外のところで楽しめた。金田一耕助ファンなら知りたいであろう彼の日常の生活の一面が覗けるのである。名探偵の人間味を楽しむことが出来る。「鏡が浦の殺人」の方は、読唇術がキーポイントとなるように推理として楽しめる。 ☆☆☆☆+
004 殺人鬼 角川文庫 横溝正史 中篇「殺人鬼」「黒蘭姫」「香水心中」短篇「百日紅の下にて」を収録。やはりもっとも面白かったのは、「獄門島」の前日談で復員後最初の事件の「百日紅の下にて」だった。 ☆☆☆☆
990 角川文庫 横溝正史 中編小説4編。表紙は気持ち悪すぎ。「生ける死仮面」はいまいちだったような。それと改題したのはなぜだろう? ☆☆☆+
悪魔が来りて笛を吹く 角川文庫 横溝正史 ☆☆☆☆
本陣殺人事件 角川文庫 横溝正史 ☆☆☆☆☆
獄門島 角川文庫 横溝正史 ☆☆☆☆☆
真田幸村(上) 角川文庫 海音寺潮五郎 ☆☆☆☆
真田幸村(下) 角川文庫 海音寺潮五郎
新選組血風録 角川文庫 司馬遼太郎 ☆☆☆☆
阿Q正伝 角川文庫 魯迅 増田沙 ☆☆☆