恐怖王


登場人物(ダブり含む)
恐怖王一味(ゴリラ男〔他称:黒瀬三吉〕,ロイド目がねの男〔自称:荒目田,黒瀬正一〕),吉,写真師,布引庄兵衛,布引照子,鳥井純一,布引園子,布引氏の運転手,布引家女中,大江蘭堂,花園京子,喜多川夏子,五、六人の子供,喜多川家女中,花園伯爵夫妻,警視庁捜査一課のK刑事,D百貨店店員,警視庁捜査課長のS氏,医員,その他警察関係者など

主な舞台
東京市内〈牛込の矢来に近い、非常に淋しい屋敷町の真ん中(牛込区S町),麹町区内のとある大通り,上野公園に近いある淋しい屋敷町,上野公園近くのD百貨店〉,鎌倉

※(ちょっとした“うんちく”)
牛込区S町とは、矢来町に近いというヒントで考えると、細工町,白銀町,水道町のいずれかだと思われる。なお、これらの番地は現在でも同名同地で、区名だけ変わり新宿区に位置している。

D百貨店だが、私の調査では、これは存在しないことが判明した。上野公園に近い百貨店は当時は松坂屋だけである。なお、松坂屋の場所は今と同じ。

作品一言紹介
トリックで死体を乗せた葬儀車を奪い取った恐怖王たち一味、彼らはその奪った布引照子の遺体から悪巧みを考えていたのだ。それは死骸花嫁婚礼からはじまるものだったが・・・・・・。探偵小説作家の大江蘭堂が自己宣伝狂の恐怖王と闘いを演じる一篇。

ネタばれ感想
(ネタばれ感想コーナーの「「恐怖王」が残したもの前編同後編」です。「恐怖王」、「妖虫」、「人間豹」のネタバレを含みます。未読の方は読まないようにして下さい。)

章の名乱舞(旧角川文庫参照)
【死骸盗賊】【恐ろしき婚礼】【怪自動車】【鳥井青年】【電話の声】【悪夢】【恐ろしき情死】【恐ろしき文身】【米つぶが五つ】【空中の怪文字】【尾行曲線】【夏子未亡人】【妖術】【浴槽の怪】【令嬢消失】【片手美人】【うごめく者】【持参金十万円】【闇を走る怪獣】【百貨店内の結婚式】【怪画家】【注射針】【悪魔の正体】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
恐ろしき文身→【恐ろしき入れ墨】,持参金十万円→【持参金一千万円】,闇を走る怪獣→【やみを走る怪獣

著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「講談倶楽部」昭和六年六月号より翌七年五月号まで連載したもの。しかし、十二ヶ月書きつづけたにしては短すぎるので、おそらく幾月も休載をしたのにちがいない。「死骸泥棒」という初めの出は、ちょっと面白いのだが、例によって全体の筋ができていないまま書きはじめるのだから、あとは全く運次第、この作はごく運の悪かった方の一例である。うまく書けないので休載に休載をかさねた末、苦しまぎれに、こじつけのみすぼらしい結末をつけて終わったものである。

比較的最近の収録文庫本
角川文庫・江戸川乱歩作品集『白髪鬼』
講談社文庫・江戸川乱歩推理文庫『盲獣』
春陽文庫・江戸川乱歩文庫『幽鬼の塔』

(注意)残念なことに角川文庫と講談社文庫は品切・絶版中・・・


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