化人幻戯

登場人物(ダブり含む)
庄司武彦,大河原義明,武彦の父,江戸川乱歩,明智小五郎,大河原由美子,大河原家使用人たち(黒岩源蔵,玄関番の少年の五郎,由美子の元乳母の種田とみ,小間使いのキク,もう一人の小間使い,自動車運転手夫妻,料理女,女中二名,庭番の弥七爺さん,別荘番の老人夫妻),姫田吾郎,村越均,熱海警察署長,熱海主任刑事,魚見崎の茶店のマダムと女給たち,依田一作,鼠色の男,姫田の父,杉本正一,警視庁捜査一課の蓑浦警部補,安田捜査一課長,小林少年,矢野目はま子,讃岐丈吉,高橋夫妻,坂口十三郎,,神南荘管理人,警視庁捜査一課の花田警部、その他

主な舞台
港区の大河原邸,大河原邸近くの都電の停留所の向こうにある小公園,熱海の魚見崎の南方山腹にある大河原別荘,魚見崎の茶店,魚見崎の崖上,丸ビルの日東製紙,中野の杉本アパート,千代田区采女町「麹町アパート」の明智住宅兼事務所,渋谷駅から五、六分の神南荘の村越家,国電赤羽駅から十分の城北製薬会社,日暮里の倉庫,千住大橋から一キロほど下流の隅田川,神宮外苑,市ヶ谷駅,元の麹町区内の防空壕

作品一言紹介
本格的構成を取った二つの時間的空間的不可能犯罪・・・、化人幻戯の怪物を想起させる恐るべき異様な動機・・・、その狂ったような動機こそこのストーリーの主題であるのだ。さて、五十才の明智小五郎の推理は!?

ネタばれ感想
きーすさんが「ネタばれ感想掲示板」に書き込まれた記事をリンクしておきます。「「化人幻戯」とアイリッシュ「幻の女」 」です。両作品読んだ方のみご覧下さい。

章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【大貴族】【秘密結社】【胎内願望】【双眼鏡】【目撃者】【暗号日記】【容疑者】【浴室痴戯】【尾行戦術】【怪画家】【神南荘】【明智小五郎】【由美子の秘密】【由美子の推理(1)】【由美子の推理(2)】【防空壕】【幻戯】【化人】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
無し

著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
「宝石」昭和二十九年十一月増刊「江戸川乱歩還暦記念号」から三十年十月号まで連載。二十九年は私の還暦に当たり、東京会館で盛大な祝賀会を開いてくださったのだが、その席で私は調子にのって、江戸川乱歩賞基金百万円を探偵作家クラブに寄与することと、還暦を機会に若返って、来年(三十年)は必ず小説を書きますと宣言したのである。
 その口約を守って、三十年には、この「化人幻戯」の「宝石」連載と、「影男」の「面白倶楽部」連載と、講談社の書き下し長篇探偵小説全集第一回配本として、渡辺剣次君の助力を得て「十字路」を書き上げ、また短篇「月と手袋」と「防空壕」を雑誌に発表した。このほかに前から書きつづけていた少年ものなどもあり、三十年には私としては相当の仕事をしたわけである。その中では「化人幻戯」に最も力を入れたはずであったが、長篇構想の下手な私は、書いているうちに筋や心理の矛盾が無数に現われてきて、例によって、そのつじつまを合わせるために、毎月毎月苦労したのだが、トリックにはほとんど創意がなく、犯罪動機には新味があったけれども、万人を納得させる必然性に乏しく、私のすべての長篇と同じく、これもまた失敗作であった。「化人幻戯」とは妙な題をつけたものだが、化人は女主人公の妖怪性を表わし、幻戯はその犯罪トリックの魔術性を意味したのである。例によって一人二役、変身願望を描いたもので、私の執拗な好みは六十才を越してもなおらなかったのである。それにもう一つの不可能興味「密室」まで取り入れたのが、かえってこの作の弱点になっている。


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