偉大なる夢

登場人物(ダブり含む)
陸軍大臣官房の少年給仕の高橋喜一,もう一人の給仕,陸軍大臣,参謀次長,航空技術本部長,兵器行政本部長,一寸法師のような不精髭の紳士を含む背広覆三人,五十嵐東三,五十嵐新一,五十嵐夫人,五十嵐家女中,本田少将,ルーズベルト大統領,スチムソン陸軍長官,機密局長オブライエン,F3号,H三十三号,航空技術本部の木本工学博士,大学助教授南工学博士,南京子,山下憲兵伍長と三好曹長を含む護衛役の私服憲兵下士官,上田市の警察署長,司法主任,上田市外科病院長と看護婦,望月憲兵少佐,検事一行,警視庁指紋係,警視庁捜査一課の北村刑事,韮崎庄平,韮崎の家近くの交番巡査,モンペ夫人など,芝区XX町一丁目の人々,前駐日大使グルウ,Q三十一号,Q七号,マツオカ(松岡洋右),ヒトラー,チャーチル,けだもののような鬚もじゃの大男,大和航空製作所の工場長と遠藤技師長,北川医師,空襲下の都民など,X大学病院の人々,世田谷の怪屋の国民服十名,ジョン・ブウリー,花輪トミ,大川新太郎,堂本お花,大川幸子,野田某,北沢博士

主な舞台
(陸軍省の)大臣室隣の小会議室,麻布区XX町の五十嵐東三邸,(ワシントンの)白堊館,長野県上田市より程遠からぬXX温泉の裏山にある某貴族の別荘周辺,警視庁,愛宕警察署,芝区XX町一丁目周辺,その一丁目六二番地にある韮崎邸,高原地帯にある大和航空機製作所,山の手にあるX大学病院,目黒区の望月邸,憲兵隊司令部,世田谷区XX町の淋しい屋敷町

作品一言紹介
新潮社の「日の出」に昭和十八年十一月号〜昭和十九年十二月号まで連載された科学スパイ小説。しかし単なるスパイ物ではなく、本格的トリックと犯人(スパイ)当ての要素があり、さすがは乱歩である。もっとも乱歩らしい部分は、その本格トリックと、錬金術師の空想が一部現実化された部分にすぎず、防諜小説らしく、時代の制約を感じさせるのは当然である。とにかくも、この大東亜戦争を勝利に導く偉大なる夢の行方は行く末はどうなったか!? という大筋のストーリーで超異色作として一読する価値は十二分にあるであろう。

章の名乱舞(参照は旧角川文庫)
【巨人の脈搏】【脳髄の断崖】【予感】【白堊館の密話】【暗影】【敵国の触手】【破局】【博士夫人の行方】【望月憲兵少佐】【指紋の主】【火焔放射器】【大人国】【鉄の指】【何者】【穴居人】【F3号】【滝の乙女】【女工員】【爆弾】【世紀の怪物】【横穴待避壕】【敵機来襲】【聖女】【二重の地下室】【大秘密】【月光の妖術】【偉大なる夢】

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
白堊館の密話→【ホワイトハウスの密話】,博士夫人の行方→【博士夫人の行くえ】,火焔放射器→【火炎放射器】,滝の乙女→【滝のおとめ

著者(乱歩)による作品解説(河出文庫引用)
桃源社版全集に未収録であるため、自注自解は無し。
なお,参照すべき文章は河出文庫『謎と魔法物語』所収の「戦争中唯一の長篇」というエッセーが良いと思う。

長篇小説作品集に戻る乱歩の世界トップへ戻る