心理試験


主な登場人物
蕗屋清一郎,斉藤勇,老婆,笠森判事,明智小五郎

主な舞台
寂しい屋敷町

作品一言紹介
老婆が殺され、斉藤と蕗屋が疑われた。蕗屋は巧みに疑われないように振る舞い、笠森氏の心理試験でも動揺の跡はみられず、逆に斉藤が反応しきっていた。そこで明智が推理を披露する

章の名乱舞(参照はちくま文庫)
1から6まで

※(異本たる春陽堂バージョンに於ける異章題)
異章題は無し

著者(乱歩)による作品解説(ちくま文庫引用)
「新青年」大正十四年二月号に発表。この作を森下さんと小酒井不木博士に見せて、作家として立てるだろうかと相談し、両氏の賛同を得たので、大阪から東京へ引越しをして、いよいよ作家専業となったのである。
 この作にも明智小五郎を出したが、これは「D坂」から数年後の事件で、明智はもう二階借りの貧乏書生ではなくなっている。「D坂」に連想診断による心理試験のことが出てくるが、その方法を具体的に示してはいない。それを補う意味で、「心理試験」には、試験のやり方を詳しく書いた。だから、「D坂」と「心理試験」とは一対の作といってもよいので、ここにならべてのせるわけである。これは倒叙探偵小説の形式だが、やはり本格ものの一種といっていい。この作はジェームス・ハリス君訳によるタトル社版の私の英訳短篇集 Japanese Tales Of Mystery and Imagination(1956)の中に The Psychological Test と題して編入されている。
「心理試験」は戦争直後、大映で「パレットナイフの殺人」と題して(この題をつけたのは、当時の大映社長菊池寛氏であった)映画化された。プロデューサー加賀四郎、脚本高岩肇、監督久松静児、主演宇佐見淳、昭和二十一年十月十五日封切りであった。私の原作映画のうちでは、昭和三十一年の日活映画「死の十字路」についでよくできていたと思う。


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