新青年 十二月號
「ドンドの淵事件」/延原謙/16ページ(2001/10/3読了)
犯罪動機が面白い本格物。ドンドの伝説に繋がる展開だ。
「黒白[こくびゃく]殺人事件」/西田政治/14ページ(2001/10/3読了)
満州国承認など時局も少し絡んでいるが、米国らしきA――国人が殺され、日本人が疑われた。この事件を解く本格物。さすが西田で神戸を舞台としている。
「カンカン蟲殺人事件」/大阪圭吉/13ページ(2001/10/3読了)
青山喬介シリーズ。本格論理の美事さ。ただ前の「デパート」に比べるとインパクトに欠ける感がある。
懸賞読者採点の当選発表があった。十月号の創作に対するもので、以下に掲げる。(数字は総ポイント数だと思われる。)
1位.海野十三「爬蟲館事件」 507428 平均90
2位.大阪圭吉「デパートの絞刑吏」 477808 平均85
3位.渡邊啓助「美しき皮膚病」 465540 平均83
4位.甲賀三郎「川波家の祕密」 459756 平均82
5位.夢野久作「幽靈と推進機」 455352 平均81
6位.葛山二郎「染められた男」 452864 平均80
7位.延原謙「金・金・金」 438360 平均78
8位.勝伸枝「これでいゝのかい」 432740 平均77
新青年 十一月號
「三稜鏡 ―笠松博士の奇怪な外科醫術―」/佐左木俊郎/27ページ(2001/10/3読了)
首無しバラバラ事件の真相は、恐ろしい外科手術、接合術の誤解あり・・・、それがまた・・・で、何という戦慄!無器用なXX志願者とXX師の恐怖!ハッキリ言って圧巻の本格味もある怪奇幻想の大傑作である。まさに二重の花丸。
「豚と緬羊」/石濱金作/11ページ(2001/10/3読了)
何ちゅう変態性欲だ。人の糞を食う豚の話の連想から女の捨てる紙を食う羊に繋がり、とうとう主人公は無気味な羊になってしまったのだ。嗚呼変態よ。
「三ヶ月の日記」/延原謙/15ページ(2001/10/3読了)
連続短篇第六話。オチはしょうもないものだったが、何故かニュースにならない泥棒事件の泥棒の心理の動き。取り立てたものはないが、まぁそれなりの面白さだろう。
「第十二回 武州公秘話」/谷崎潤一郎/14ページ(一段組)(2001/10/3読了)
則重の運命と食い物の事など、半端なゼン編の終了・・・・・・。
新青年 昭和七年 十月號
「金・金・金」/延原謙/15ページ(2001/9/27読了)
連続短篇第五話であるが、「身売」「大尽」の二篇から成る。さすがにネタも尽きたのか、単なる金が絡んだペテン小説、詐欺小説に過ぎず、全然駄目である。
「染められた男」/葛山二郎/20ページ(2001/9/27読了)
花堂弁護士シリーズの法律探偵小説。意表を衝くトリックで面白い。しかし花堂氏よ、君は弁護人ではないのか(笑)。なんちゅうことを。
「デパートの絞刑吏」/大阪圭吉/14ページ(2001/9/27読了)
この枚数で絶大な論理!これは凄いとしか言えないだろう。大阪圭吉の新青年デビュー作であり、導き出された論理もユニークでなものだった。
「美しき皮膚病」/渡邊啓助/16ページ(2001/9/27読了)
比喩的にも皮膚病は美しかった。異常だが愛の力だ。恐怖証拠の刺青はこう展開するとは!なかなか意外な幻想怪奇。
「第十一回 武州公秘話」/谷崎潤一郎/7ページ(一段組)(2001/10/3読了)
少ないページで一気に展開。
新青年 1932 九月號
「第十一回 武州公秘話」/谷崎潤一郎/24ページ(一段組)(2001/9/25読了)
異常性も発露、道阿彌を使っての再現は恐ろしい物であった。
「N崎の殺人」/延原謙/16ページ(2001/9/25読了)
連続短篇。またも大工の鐵の出てくるシリーズ。本格物。
「エル・ベチョオ」/星田三平/18ページ(2001/9/25読了)
偶然の勘違いから巻き込まれた主人公の龍さんがエル・ベチョオに取り憑かれた屋敷の父親の死などの謎を如何に処理するか・・・!? 一応本格物だろう。そして蚊の真実とは!
新青年 1932 八月號
「悪運を背負ふ男」/延原謙/16ページ(2001/9/19読了)
連続短篇第三話。欺瞞の本格だが、これも今一つだ。
「夜泣き鐵骨」/海野十三/20ページ(2001/9/19読了)
間違えて読み始め、再読してしまったが、本格物として十分面白いものだ。電気無しで動く夜泣き鉄骨の秘密は、如何なる真相に繋がっているというのか!?
「湯原御殿殺人事件」/西田政治/15ページ(2001/9/25読了)
数十年ぶりに帰国した者を襲った殺人事件の真相は、多くの真実を暴く物で、なかなかの面白さ。
「夢の殺人」/南澤十七/13ページ(2001/9/25読了)
夢の殺人とはバックに流れる音楽そのもの。夢野罪悪なのだ。
「武州公秘話」/谷崎潤一郎/14ページ(一段組)(2001/9/25読了)
鼻散る里と物真似・・・。
「最後の人類 ―リウ・キノウ第二話―」/大下宇陀兒/5ページ(2001/9/25読了)
SF幻想ショート・ショートの傑作。黒半球と白半球の世界になった地球・・・・・・。
新青年 1932 七月號
「武州公秘話」/谷崎潤一郎/12ページ(一段組)(2001/9/19読了)
織部正の更なる奇危禍。そしてとうとうその鼻は!?
「レビウガール殺し」/延原謙/18ページ(2001/9/19読了)
連続短篇第二話、怪自動車ではじまるとりあえずの本格物だが、大したことない。
「愛慾埃及學[あいよくエヂプトロジイ]」/渡邊啓助/15ページ(2001/9/19読了)
エジプト復讐恐るべし!ただどうも効果が弱く思う。
新青年 1932 六月號
「武州公秘話 第七回」/谷崎潤一郎/18ページ(一段組)(2001/9/19読了)
少年時代に繋がるエピソード。桔梗と河内介の対面。
「氷を碎く」/延原謙/15ページ(2001/9/19読了)
連続短篇第一話。気狂いの復讐劇。それほど面白くはないが、氷を砕く時はまさに気狂いの目だったことだろう。
「鮫人の掟」/橋本五郎/17ページ(2001/9/19読了)
これは美事なる怪奇本格物と言えるだろう。潜水夫が潜水中に殺されるという怪事件。しかもその容疑者が幽霊だというのであるから奇々怪々というしかない。それとも魚類というのか。とにかく潜水中の殺人事件という面白い題材を、強力な動機と恐るべき幽霊の怪奇で構成させた面白さ。さて、幽霊の正体やらその恐るべき真相とは如何なるものだったか!?
新青年 1932 五月號
「血妖」/大下宇陀兒/20ページ(2001/9/19読了)
同一人を二度斧で殺した、という謎が少し面白い本格物と言っていいだろう。もっとも真相は大したものでもない。さて、麻雀と保険勧誘ではじまるこの事件の顛末とは。
「暗視夜」/葛山二郎/14ページ(2001/9/19読了)
理化学的なものを用いての欺瞞。まぁ、それほどのものではない。
「水晶線神経」/南澤十七/9ページ(2001/9/19読了)
科学犯罪小説と悲劇を描いたものだが、ラストが頂けない。
「武州公秘話」/谷崎潤一郎/17ページ(一段組)(2001/9/19読了)
河内介は進む!異様性の展開。
新青年 1932 四月増大號
「第五回 武州公秘話」/谷崎潤一郎/9ページ(一段組)(2001/9/19読了)
元服した法師丸こと河内介輝勝。龍とは・・・。
「幇助者」/瀬下耽/6ページ(2001/9/19読了)
何という病人の計画復讐劇!予想は出来るが、面白さは変わらず!果たして被害妄想狂なのか!? そして悪夢のような幇助者の悲劇!
「血劇」/米田三星/5ページ(2001/9/19読了)
血液による父子鑑定依頼にやってきた男の話。ユーモアコント。
「光彩ある絶望」/城昌幸/5ページ(2001/9/19読了)
恐るべき書函202の内容!生命の取引、金の栄華、これは誰でも迷う選択に違いあるまい。
新青年 昭和七年 三月號
「妄談銀座」/佐藤春夫/12ページ(一段組)(2001/8/30読了)
詩人は妄想家なのか、長篇小説第一回。
「蛭」/南澤十七/15ページ(2001/8/30読了)
やはりこれは恐るべき怪奇小説である。吸血器の恐怖など不木風医学怪奇!
「謎の女」/冬木荒之介/10ページ(2001/8/30読了)
一月号の平林初之輔の未刊遺稿を引き継いだ続編。結論から言うと、少し効果を殺いでいる感もあるものの、なかなかの面白さだ。妻もどきの話は変態性欲の塊だったのだ。
「アヴェ・マリヤ」/妹尾アキ夫/15ページ(2001/8/30読了)
これは美事な幻想小説だ。血の悪夢を知りながらも、アヴェマリヤへの祈りは幻想へとなるのだ。
「墜落」/瀬下耽/11ページ(2001/8/30読了)
何か中途半端な感のあるちょっと本格風のもの。曲芸団で起こった死亡事件である。
新青年 昭和七年 二月號
「連作探偵小説 諏訪未亡人」(2001/8/7読了)
「第一話 旅客機墜落事件」/延原謙/8ページ
女中と未亡人の子供が誘拐され、その飛行機から墜落人が出たと言うが・・・・・・。
「第2話 死!」/吉岡龍/6ページ
青年発明家の謎の死。そこには不可思議な遺書?落書きが残されていたのだが・・・!?
「第三話 地下街第七號室」/海野十三/12ページ
一気に第一話の謎を展開し、二話の方も進展、更に謎の祕密結社らしきものも!それに気球の少年が江戸川乱歩の小説のようだとの形容がある。
「第四話 G・P・U」/角田喜久雄/11ページ
G・P・Uの陰謀。諏訪式瓦斯を巡る攻防。
「第5話 地下街の崩壊」/横溝正史/11ページ
美事に解決。野望は潰えたのである。
連作全体としては海野が一番面白いかな、いや全体では矢張りヘボなのだが・・・。
「武州公秘話」/谷崎潤一郎/14ページ(一段組)(2001/8/7読了)
法師丸時代はこの第四話で終了。敵陣の法師丸、成功せずとも気づかれぬ一大事件。
新青年 1932 新年特大號
「謎の女」/平林初之輔/14ページ(2001/8/7読了)
遺稿であり、未完小説。何やら続編募集の記事があったが、この時点ではわからない。話は、名義上だけのいわゆる仮面夫婦になってくれと頼んだ謎の女。新聞記者の主人公とその謎の女は仮面の同棲を始めるが・・・、となかなか興味深い。
「魔人」/大下宇陀兒/12ページ(一段組)(2001/8/7読了)
これで完結。なるほど運命の恐ろしさと言えば、面白く話は簡単だ。しかし全てが単なる偶然だけで構成されているのは問題だろう。しかも長篇自体スケール的に陳腐で謎もなにもない。駄作長篇と言える。
「武州公秘話」/谷崎潤一郎/14ページ(一段組)(2001/8/7読了)
何という妖美な空想!首になってしまいたいとは!そして鼻を切る!