復刻版「新青年」を読んでの感想〔昭和六年〕

新青年 昭和六年十二月號

「ポプラ荘事件」/大庭武年/24ページ(2001/7/31読了)(2001/8/7読了)
相変わらず大庭本格は西洋的すぎるが、面白いし、良く出来ている。これも郷警部もので、部屋の状況、兇器の動き、アリバイ、心理状況などから事件を解決していく。


「落下傘孃[パラシユートガール]殺害事件」/星田三平/20ページ(2001/8/7読了)
パラシュートの紐が切れて、うら若き命が失われた。この殺人事件は意外に複雑な動機の上で構成されていてなかなかの面白さと言える。


「魔人」/大下宇陀兒/20ページ(一段組)(2001/8/7読了)
何という都合の良さ!思わぬ所に味方が再登場したのである。


新青年 昭和六年十一月號

「十八號室の殺人」/光石太郎/22ページ(2001/7/31読了)
新人十二ヶ月の八で、本格物。なかなかの出来ではあるが・・・・・・。


「丹夫人の化粧臺」/横溝正史/18ページ(2001/7/31読了)
大したこともないが、部分的には決闘、監禁は良いかな。


「魔人」/大下宇陀兒/16ページ(一段組)(2001/7/31読了)
悪人共の悪知恵。


「武州公秘話」/谷崎潤一郎/16ページ(一段組)(2001/7/31読了)
戦場の様子を見たがっていた法師丸は取り敢えず首を見て満足し・・・・・・・。


新青年 昭和六年十月増大號=八十錢

「武州公秘話」/谷崎潤一郎/14ページ(一段組)(2001/7/30読了)
連載第一回。武州公。


「自白心理」/夢野久作/11ページ(2001/7/30読了)
破れし完全無欠。


「省線電車の射撃手」/海野十三/28ページ(2001/7/30読了)
帆村荘六[※しょうろく]活躍譚の本格探偵小説。省線電車で美少女が次々と銃弾に斃れていくという怪事件。ハッキリ言って凡作で、海野色も薄い。


「人を喰つた機関車」/岩藤雪夫/11ページ(2001/7/30読了)
大したものでもない。焼き殺しの人喰い機関車の恐るべき真実は!?


「餓鬼道」/大下宇陀兒/21ページ(2001/7/30読了)
残虐傍観者。期待者、間接者。、忌むべき心理を楽しむ主人公たち。そこみ訪れたのは因果応報の摂理でしかないのだった。


「魔人」/大下宇陀兒/16ページ(一段組)(2001/7/30読了)
やっぱり大して面白くもない。黒衣夫人はどうなる!?


新青年 昭和六年九月號

「麻雀殺人事件」/海野十三/21ページ(2001/7/21読了)
連続短篇その一である。名探偵帆村荘六登場。麻雀の場での毒殺という本格探偵小説だが、麻雀という意味以外で海野らしい所はない。つまり科学SF部分はないのである。


「魔人」/大下宇陀兒/17ページ(2001/7/24読了)
第五回である。離してもいいのか、秘密を!


「密告者」/角田喜久雄/9ページ(2001/7/24読了)
無声芝居から始まる事件。大した物ではない。


「變身術師」/渡邊啓助/12ページ(2001/7/25読了)
牧師と放蕩者の二重人格的変身。この真偽は!?


「カフヱ・チチマンの不思議な客」/橋本五郎/8ページ(2001/7/25読了)
全然大した物ではない。二軒の似たようなカフェのうち、一軒だけが以上に繁盛している謎。


「告げ口心臓」/米田三星/18ページ(2001/7/25読了)
これはなかなかのミステリだ。メイン部でも何でもないが、あの心臓殺しは証拠無しのトリックがこの時代に使われているとは驚きである。錯誤の罠は如何に!?


新青年 昭和六年夏季増刊號=一圓

「影に聽く瞳」/葛山二郎/31ページ(2001/7/21読了)
手紙の交換形式で描かれるセレンと盲などが謎を導く理化学的謎。ただそれほど感心しなかった。


新青年 昭和六年八月號

「鐵の規律」/平林初之輔/19ページ(2001/7/21読了)
正義党という祕密結社の暗躍が、東亜局長を狙う、恐るべき鉄の規律。
なお、今号に平林初之輔及び川田功の訃報が載った。


「魔人」/大下宇陀兒/(2001/7/21読了)
第四回である。黒衣婦人の登場。


新青年 昭和六年七月號

「魔人」/大下宇陀兒/18ページ(一段組)(2001/7/21読了)
探偵小説でないと筆者がとうとう公言。確かにその味は少ない。今回は東京に出てきた不良少年庄平は・・・。


「海の嘆[なげき]」/瀬下耽/12ページ(2001/7/21読了)
海底の恋の成就!これはなかなか凄い幻想小説だ。海底潜夫の主人公の悲劇。しかしよく考えると、旧作の「海底」そっくりの効果なんだな、これが。


新青年 昭和六年六月號

「魔人」/大下宇陀兒/20ページ(一段組)(2001/7/21読了)
第二回である。生まれた赤ん坊の少年時代であり、恐るべき出来事を目撃してしまう。


「恐ろしいキツス」/川田功/10ページ(2001/7/21読了)
之はなかなか面白い。タイトルの恐ろしいキッスはまさにこの通りで、恐るべきものだった。殺されたものは美事にトリックにかかり恐ろしいキッスの前に為す術もなかったのである。


新青年 昭和六年五月號

「魔人」/大下宇陀兒/16ページ(一段組)(2001/7/17読了)
長篇小説の恐るべき第一回である。刑務所に一年半いた女が妊娠し、出産した。しかし猛火は全てを飲み込みやしないのだ。さて、どんな話になるのだ!?


「カリオストロ夫人」/横溝正史/15ページ(2001/7/17読了)
何百年も生きていると称したカリオストロ伯爵。この主人公カリオストロ夫人と称される志摩夫人にもそのような節があった。その恐るべき秘密は!? 恐るべき永遠の命!


「寫眞魔」/渡邊啓介/15ページ(2001/7/17読了)
恐るべき影を盗んで売りつける写真魔。その変態が偶然殺人の現場を写し、強請ったその報酬は!?


「芽は土の中から―或る無頼漢の斷片綺譚―」/佐左木俊郎/3ページ(2001/7/17読了)
ちょっとした掌編。土の中から犯罪の芽は露見してきたのである。


「高い夜空」/妹尾アキ夫/7ページ(2001/7/17読了)
大して効果的とも思えないが少し意外な結末なのである。


「國際殺人團の崩壊」/海野十三/18ページ(2001/7/17読了)
何だ!この科学色スパイ色極めて濃い探偵小説は!? 昭和六年でこの手の小説を連発、恐るべき海野である。とにかく科学者が大量に殺害される事件が起こり、その裏には国際殺人団がいたのである。さて、その団長の秘密は!?


新青年 昭和六年新春特大四月増大號

「蜘蛛」/米田三星/13ページ(2001/7/17読了)
殺意を持った相手を殺して、気が狂いかけているように思われた主人公の的を射た推理。ちょっとくどすぎるような気がするが悪くはない。作者の「新青年」第二作


「眼」/橋本五郎/11ページ(2001/7/17読了)
これは結構面白い。ゾッとする恐怖が意外な所からヌッと現れるのは凄い。眼科病棟での悲劇であり、錯誤の悲劇であった。この疑心のベクトルが悲劇の元になるとは意外性の怪奇探偵小説だ。眼科病棟の眼患者達は目がよく見えないばかりに恐るべき陥穽に落ち込まされるのである。動機は、動機は、人間らしいものであったが、やはり利用の恐ろしさと誤解の悲劇が生んだ悪夢であった。


「假装觀櫻會」/佐左木俊郎/16ページ(2001/7/17読了)
全然探偵小説らしくない。職工と工場長と資本家の話である。一応殺人事件はあるが。


「ココナツトの實」/夢野久作/21ページ(2001/7/17読了)
全然面白味を感じない。運命の・・・・・・なんだろうが。


新青年 昭和六年新春特大二月號

「探偵殺害事件」/星田三平/13ページ(2001/7/17読了)
処女作とは180度転換した本格探偵小説である。夜行列車で探偵が殺害され、開いた窓、指紋の謎、飛んだ男などが謎の材料だが、どうも面白くない。出来という面では処女作を大きく下回るし、もしこれで応募していたら絶対落選だったろう。


新青年 昭和六年新春特大號(第一號)

「毒」/大下宇陀兒/18ページ(一段組)(2001/7/9読了)
これは最大傑作だ。幼い子どもたちを主人公にしたもので、その当然の無知が救った話だ。その物凄さは言いようもないくらい素晴らしい。ジワジワ毒殺の恐怖を誤解した子どもたちだからこそ出来た恐るべき大ドンデンガエシ。こうして野望はついえたのである。ああっ、今までの新青年の宇陀児で最大傑作。第二位「決闘街」、第三位「情獄」以上だ。筋のシンプルさがこの場合、効果を引き出しているのである。


「嵐の陰影」/佐左木俊郎/10ページ(2001/7/9読了)
全然探偵小説でないやん、と一人ツッコミ。いわゆる悲哀小説とでもいうべきものだ。主人公の今後の成功を祈るばかり。


「人造人間殺人事件[ロボツトせつがいじけん]」/海野十三/11ページ(2001/7/9読了)
科学に長けた秘密結社海龍倶楽部はロボット工作員をつくっていた・・・・・・。大して面白くもないがロボットを登場させるのはさすが海野で、そのロボットをラストで効果的に用いている点が少しだけ面白い。


「骨」/葛山二郎/18ページ(2001/7/9読了)
冒頭で「モルグ街」「黄色い部屋」を非難し、自ら密室殺人に挑んでいる花堂弁護士シリーズもの。しかしその心意気の割にはそれほどのものにも思われない。しかしトリックの奇想は面白いし錯覚トリックもよい。事件は密室状態の家での大殺戮でスタートする。