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投稿時間:02/11/17(Sun) 09:27
投稿者名:きーす
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タイトル:黒蜥蜴・初読・この作品こそ二十面相シリーズの原型では?
はじめまして。きーすと申すものでございます。
小中学校の頃、学校や公立の図書館でよく二十面相ものを愛読しておりました。大人向けの乱歩には時々関心がいき、角川文庫版の黄金仮面がお気に入りで、その本に同時に収められた「何者」「心理試験」とともに折りにふれて繰り返し読んでいました。そして、ここのサイトその他で乱歩の作品案内に触れ、つい昨日創元の「黒蜥蜴」「蜘蛛男」「魔術師」「吸血鬼」を購入し、さっそくその日のうちに「黒蜥蜴」を読了したところです。
昭和九年発表のこの作品。創元の文庫には当時の挿絵も挿入されており、それが昭和初期のあのレトロな雰囲気を伝えてくれる挿絵でして、内容の妖しいムードをよりいっそうかきたててくれます。筋立てとか、スーパーヒーロー明智小五郎の活躍のしかたとかに、昭和初期当時の日本人の好みがよく反映されている、換言すれば昭和初期という時代を見事に描き切っているのが乱歩のこのころの作品の特徴なのではないでしょうか。あの乱歩の妖しい世界の魅力、それは戦前の時代の雰囲気と密接に結びついてると思います。
さて、黒蜥蜴ですが、黄金仮面を書いたあとの休筆明けに書かれたこの作品、33歳にして夜トイレにいけなくなるような不気味さと、緑川夫人と明智とのゲーム的な知恵比べ、冒険活劇的要素、そして緑川夫人の妖艶さと最後の明智への恋慕、こういった要素が渾然一体となって私の心に覆い被さってきました。この作品が三島由紀夫によって戯曲化されたり、映画化されたりしたのも納得の傑作であることを、私自身も読んで体感したことになったのです。三島氏は、解説によれば明智と黒蜥蜴との恋愛に重点をおいて脚色したそうですが、逆にその恋愛の要素をあえてこの作品から抜きさったと仮定してみた場合、名探偵と悪人との知恵比べの活劇という要素が残ると思います。そう、その要素こそ、二十面相ものの主題ではありませんか。確かに、黄金仮面でのルパンこそが、二十面相のモデルとなったのは疑いありませんが、私にとっては、物語の構成のしかた、筋立ての運び方、醸し出す雰囲気は、黒蜥蜴のほうがより二十面相シリーズに近いものであると感じられます。事実、黒蜥蜴執筆のわずか二年後に「怪人二十面相」が発表されています。
まだ、ほかの3つを読んでいませんので、続きはまたにしたいと思います。
それにしても、伝えたいことが言葉足らずで上手に表現できないもどかしさよ・・・・・。