*** | 書籍表題 | 出版社 | 筆者 | 訳者など | 一言感想or備考 | お勧め度 |
07a | 町でいちばん賢い猫 | ハヤカワ文庫 | リタ・メイ・ブラウン & スニーキー・パイ・ブラウン | 芽律子訳 | 猫が出て来る小説を探していたら目に止まったので読んだ。(キジ?)トラ猫のミセスマーフィーとコーギー犬のティー・タッカー、そしてその飼い主のハリー(女)が活躍する推理小説。平穏な町で突如巻き起こった連続殺人。猫達が勝手に外に飛び出たり、頭を使って人間にヒントや意思を伝えようとしたりと面白いが、何か突っ込みたくなるような展開だ。 | ☆☆☆☆− |
064 | ミステリ・オペラ 下 | ハヤカワ文庫 | 山田正紀 | 現在と戦前の満洲国が探偵小説または手記によって、1つに繋がる。現在にいるはずが登場人物同様に我々もグングン過去満洲の世界へ引きずり込まれていく。ダイイングメッセージ、密室、カード占い、見立て殺人、暗号、仮面の男、列車消失、空中遊歩などなど古きよき探偵小説のエッセンスをふんだんに含み、そして満州国建国の秘密とオペラ魔笛、南京事件を絡めながら、拡げすぎた大風呂敷はついに古代から現在まで到り…悲劇は続くのである。しかし謎のためのしつこいまでの謎を呼ぶ展開とそのテーマを絡めたことには賛否両論あるのでは無かろうか。 | ☆☆☆☆☆− | |
064 | ミステリ・オペラ 上 | ハヤカワ文庫 | 山田正紀 | |||
062 | 第六大陸 2 | ハヤカワ文庫 | 小川一水 | 今から20年後の世界は現状の紛争問題もあらかた解決し、平和社会になっている上に、日本も奇跡の復活などを経てサイド技術立国になっていた。極限環境下での建設業を生業とし、世界最大旧の実績を上げてきた日本の民間企業は名古屋圏の一大レジャー企業から壮大な受注を受ける。それが月面拠点。宇宙開発は経済的見返りの無さと競争原理の無さから未来社会でもほとんど発展していなかった上に、全て国家レベルの事業だったが、そこに民間で前代未聞の計画に挑もうというのだ。一見地味だが。立案設計から結実までの10年レベルの努力と苦難を描いた本作は果てしない可能性を魅せてくれる。 立案者が幼い13歳の少女であると言う点がジュブナイル的であるが、その微妙な設定こそがこの計画のミソとなっている。成人では思いつかないような大胆かつ繊細が複雑に混じりあった発想こそがミソなのだ。夢のような立案から数々の苦難の中、実現に至るまで10年計画を成し遂げていくところはしっかり出来ていて面白い。 ただ日本SFに読み慣れていないせいで読むポイントがズレているのかもしれないが、各種の感受を与えるパワーや深刻さの描写が物足りないのが気にはなる。またテーマから乖離したようなやり過ぎではないかと思われる点も見受けられるが・・・。 |
☆☆☆☆+ | |
062 | 第六大陸 1 | ハヤカワ文庫 | 小川一水 | |||
053 | 断絶への航海 | ハヤカワ文庫 | ジェイムズ・P・ホーガン | 小隅黎 | 地球は退廃しきっていた。米国、ソ連、欧州、大東亜など陣営同士で熾烈な戦争状態だった。そう言う時代、太陽からもっとも近い恒星系であるα・ケンタウリに生存に適した地球型惑星が発見され、米国は先住要員として、人間の遺伝子を送り込み、ロボットとコンピュータに育てさせた。そしてそれらケイロン人が育ったあと、初の有人恒星間移動を試みを行い、地球人は今や新しい惑星に到着する所であった。というようなスタートである。そしてケイロン社会のあまりの地球離れの異質性に戸惑う。地球外の新しい社会考案としては美事といえる想像性を発揮しているのがこの作品の最大目玉といえるだろう。人類社会にとっての理想の一つが提示されているのだ! | ☆☆☆☆ |
029 | 死の接吻 | ハヤカワ文庫 | アイラ・レヴィン | 中田耕治 | 確かに最初から中盤クライマックスに掛けては面白かったが、肝心の最後の方が興ざめな展開である。そこで大きく評価を下げたと言って良いだろう。恐ろしいエゴに包まれた男は、妊娠した彼女を邪魔に思うようになったのだ。それも自己の野望だけのために。主人公の心理の動きも序中盤は面白い展開だ。ただ事ラストに至ると理解出来なくなるのである。自己顕示欲の権化と化した業とでも言うのだろうか。そしてリスクが大きすぎる。なのにあの解決とは。まぁ、読ませるサスペンスには違いないが、ラスト長姉篇が気に入らなかったという感想として残しておこう。 | ☆☆☆+ |
044 | ファウンデーションの誕生(下) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | アシモフの最後の長篇。「ファウンデーションへの序曲」の直接の続篇で、心理歴史学の具体的発見から、完成までを描く。そして、シリーズ第一作の「ファウンデーション」に繋がっていく話。セルダンの心理歴史学は完成前からピンチの連続。セルダンは物語中で、首相にさえもなっている。その半面、帝国の衰亡の著しさ、そして心理歴史学とは開発中の同時代を生きる一般人にとってみれば、耐え難い存在であるがために、セルダンの命を狙う輩は後を絶たない。それでも未来を得るため、数々の苦難を乗り越えて心理歴史学が完成していく様は感動すら覚えるだろう。既にその前後を知っている我々は。この小説は内容は希薄かも知れないが、銀河帝国興亡史シリーズファンからすれば、絶対見逃せない作品である。よく言われることだが、往年のセルダンとアシモフの姿がダブるというでも注目。 | ☆☆☆☆+ |
044 | ファウンデーションの誕生(上) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | ||
044 | ファウンデーションへの序曲(下) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | 銀河帝国興亡史シリーズを読み続けてしまった以上は、読まずにいられない作品だろう。シリーズ第1作「ファウンデーション」そのものの創造者ハリ・セルダンが心理歴史学の理論の論文を発表した所から実践の礎を作り始めるまでの話。それにしても私が「地球」を読んでから一年半も経っていたとは我ながら時の流れの速さを感じてしまう。これなら一瞬のうちに2万年後以上先のセルダンの時代がやって来ても不思議ではない(って飛躍しすぎだ・・)はともかくとして、セルダンが帝国首府のトランターにやって来、時の皇帝に謁見。心理歴史学理論を利用されそうになるが、と言う展開で、そこからヒューミンやドース、レイチと言った非常に長けた人物と仲間になりながら、トランターの中の異色文化の中を、帝国の魔の手から、逃避行していく。ハッキリ言ってSF的興味は全く稀薄だが、ミステリー的興味は相変わらず充たしてくれる。もちろん間違った意味での確信犯で解りきった興味ではあったが、彼等のやり取りが楽しめた一方、もう一方の最後のセリフが興味深かった。ゆえに前作もという形になるのが面白い。それにつけてもストーリーの妙はさすがとしか言えまい。思わずページが進みまくるのだ。 | ☆☆☆☆☆− |
044 | ファウンデーションへの序曲(上) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | ||
020 | 宇宙気流 | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 平井イサク | 空間分析家だったと記憶している男は記憶を失っていた。場所は惑星フロリナ、トランター帝国はじめとする全銀河系で高級繊維を作り出す唯一の星。しかしそこは一部の貴族階級、というか別星人によって完全に支配されていた。発展途上のトランター銀河帝国にも目の上のたんこぶ的なサーク人に。ミステリタッチで、記憶喪失の男を巡っての推理も展開されるが、それは謎の解答は唐突で、気に入るどころではない。SFとしても、関心するような所は特になく、この設定なら宇宙SFで有る必要性も少ないように思える。記憶喪失の必然性くらいのものだろうか。とはいえ、事件は全銀河帝国にも関係するSF的規模まで展開するのは事実。宇宙気流の巻き起こす物とは一体何かの興味なのだ。これは宇宙SFだけの問題と言えよう。・・・まぁ、別にこれも地球規模でも全く問題なく設定出来るが・・・。 | ☆☆☆☆− |
02a | 宇宙の小石 | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 高橋豊 | 宇宙の小石とは、地球の事である。放射能にまみれて、トランター率いる銀河帝国から差別を受けている地球。そうまだ人は住んでいた段階。GE827年。そこへ1949年、つまりこのアシモフ処女長篇が書かれた時代からタイムスリップしてしまった一人のおじいちゃん。彼が後の銀河帝国の運命を決定づける大事件に巻き込まれていくのだ。これを読むと、1980年代以降のアシモフ長篇が、ますます自作のアイデアの焼き直しで、新味が少なかったんだなと思い知らされるが、それはそれとして、面白い展開。地球絶対主義者に支配され独裁的な地球は六十の掟などによって、宇宙に蔑まれながらも偏狂な世界を築きあげていた。その世界に飛び込まされ、マインドタッチなる超能力を身につけた主人公、銀河帝国の考古学者、地球の科学者父娘の活躍はいかにという展開! ミステリー的手法も多く取り入れられたのが本作なのである。 それにしても既に宇宙には二億の有人天体があるわけだから、スペンサーは滅んでいるんだろうな、とか、鋼鉄都市はどうやって無くなったのか、とか考えると楽しい想像が出来る。 |
☆☆☆☆ |
02a | われはロボット | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 小尾芙佐 | ロボット創世記の20世紀末から21世紀前半の時代を描いた短篇集。ロボット工学三原則に縛られたロボット達だが、それゆえにその取扱いに人間が苦慮するのである。 収録作品は「ロビイ」「堂々めぐり」「われ思う、ゆえに」「野うさぎを追って」「うそつき」「迷子のロボット」「逃避」「証拠」「災厄のとき」。いずれも面白いが、のちに「夜明けのロボット」で伝説とされていた「うそつき」はその意味もあってより楽しめたと言えよう。 |
☆☆☆☆+ |
029 | ファウンデーションと地球(下) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | 何というかこんなにワクワクしながら読み進み、そして残りが少なくなると、先が見たいのと終幕が下りてしまう残念さという相反する二つの心理がぶつかるような読書は珍しい。最後クライマックスあたりははチビチビ読んだほどだ。それほど素晴らしいシリーズが魅せるアシモフ未来史最後の時だった。「ファウンデーションの彼方へ」の直接直後の続編であり、「ロボットと帝国」から二万年を隔てた続編ストーリー。ベイリ・ワールドに加え、オーロラやソラリア等スペーサーの世界の二万年後が見れるという時点で「鋼鉄都市」以下の4作のロボット物を知っていたら非常に楽しめるというのは自明の理。更に地球探索の果てには、予想はしていたが、素晴らしいプレゼントも待っている。それにしても高揚感を味わっている。その素晴らしさに。さて、展開は、ガラクシアか、第一ファウンデーションによる第二銀河帝国か、第二ファンデーションによる庇護ある発展か、ゴラン・トレヴィズが、地球探索の果てに結論した未来の銀河の運命とは!? このロボット&銀河帝国興亡史シリーズは絶賛を持ってお薦め出来ると述べておこう。私にもまだ残している「宇宙気流」「暗黒星雲の彼方へ」「宇宙の小石」「ファンデーションへの序曲」「ファンデーションの誕生」、ロボット物短篇集、そしてその一部でもあるがベイリ、ダニール物の「ミラーイメージ」等を、近いうちにまた読みたい衝動が湧き起こってくるだろう。しかし今はこの読後感に浸っていたいのである。圧倒的な想像を巡らせながら。 | ☆☆☆☆☆+ |
029 | ファウンデーションと地球(上) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | ||
029 | ロボットと帝国(下) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 小尾芙佐 | まさに感動的! なぜロボットに感動するのだろう。不思議な気分だが、圧巻なのである。ソラリアの謎を残しつつ、FINなのだった。ロボット工学三原則に立ち向かう勇敢なダニールとジスカルド。 | ☆☆☆☆☆ |
029 | ロボットと帝国(上) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 小尾芙佐 | ロボット物三部作の続編。「夜明けのロボット」から200年後の世界。宇宙人のグレディアやロボットたるダニールとジスカルドは無論生存しているが、地球人のイライジャ・ベイリはとうの昔に伝説になっている世界。イライジャの回想シーンでは感動してしまうしかないだろう。ロボット物と後の銀河帝国、ファウンデーションへの橋渡しをする繋がる物語。 ソラリアを放棄したソラリア人、そしてそこに残ったロボット達、アマディロ一派により地球へ向けられた悪意。という展開だ。果たしてイライジャの意思を継ぐグレディア、ダニール、ジスカルドの行動は如何に!? ここまでロボット物やファンデーションシリーズに魅せられた者なら読まずにいられない一篇なのは間違いない。 ちなみに前ロボット三作と異なり、本格ミステリではない。 |
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029 | 夜明けのロボット(下) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 小尾芙佐 | 「鋼鉄都市」に比べると本格ミステリ的には些かアンフェアだと思う感も無い事もないが、何という面白さ。心理歴史学、ファウンデーション元素を作り上げたのが、よもやこの時代に遡り、更に・・・とは!? そして後のそれを彷彿させる特異能力。盲点を衝いた意表には、確かに伏線が数度の伏線が張ってあったのだ。とにかくアシモフ未来史に足を踏み込んだならばこれも読まずにいられぬ一作であるのは間違いない。 | ☆☆☆☆☆− |
029 | 夜明けのロボット(上) | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 小尾芙佐 | イライジャ・ベイリとR・ダニール・オリヴォー及びジスカルドの両ロボット活躍のロボット物三部作+の三作目。と言っても執筆までに三十年の時間差がある。今回はダニールのホーム惑星オーロラが舞台であり、ファストルフ博士に掛けられたヒューマンフォームロボット殺害事件の容疑を晴らし、自分の地位と地球、博士、そして未来に生まれる予定の帝国やファウンデーション(笑)を守るためにベイリが推理をしていくというものである。しかしその現場に着くや、当のファストルフ博士曰くには、ロボットの精神的殺害を出来る者は自分しか絶対に有り得ないが、自分は絶対何もしていないと言う矛盾。この事件は果たして偶発的な事故だったのか、それともオーロラ至上主義たる反対勢力の陰謀か、この続きを知るために私は下巻に手を伸ばすのであった。人間殺害でないせいか、不可能性を今一つ理解出来ないせいか、ミステリ的興味は前二作ほど湧かないが、これも下巻で評価は変わるかも知れない。ストーリーとしては読ませる作品である。それにしても、オーロラの慣習は羨ましいのか哀れなのか、やっぱり結論はつまらないと思われる(笑) | |
028 | はだかの太陽 | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 冬川亘 | 「鋼鉄都市」の直接の続篇。イライジャ・ベイリとR・ダニール・オリヴォーのコンビが、ひょんな事から惑星ソラリアで起こった殺人事件を依頼された。ソラリアは人間一人に一万台ものロボットという極端な世界で、地球人はが外気を恐怖するのと同様、ソラリアは人を見る事を恐怖し、常に対人関係は眺める事によって成立していた人間性皆無に近いとしか言えない世界。そこで殺人事件が起こり、近くには原則1を遵守出来なかった衝撃からか電子頭脳に支障をきたしたロボット一台とともに、死体が一つ。眺めずに見ていたのは一人だけ。しかしその一人にも不可能と思われた犯罪。このSF本格ミステリのトリックもまた「鋼鉄都市」同様に、いや些かアンフェアなような気もするが、意外な盲点を衝いた物であり、絶大な面白さなのだ。 | ☆☆☆☆☆− |
028 | 鋼鉄都市 | ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 福島正美 | ロボット工学三原則に従ったアシモフロボットシリーズの長篇第一作。今や鋼鉄都市のシティにどうにかこうにか不安定かつ集団管理主義で生活している地球を舞台にしたSF本格ミステリである。その昔に地球から移民し、そして地球の支配から抜け出し独自の道を歩んでいた宇宙人は、地球に再注目していた。その成果が地球上に設けられた宇宙市であるが、そこは地球人には無縁の場所。普通に行くのは困難であり、外気に触れるという冒険を地球人は恐れていたという状況下、宇宙人が宇宙市で殺害された。犯人は地球側にいるという。この事件に双方に重要な警視総監の後輩の主人公と、宇宙人側のロボット二人が挑む。SFでありながら、本格的な構成で、探偵犯人ともに意外な犯罪方法に驚くばかりなのである。さすがに傑作で読ませる作品と言えよう。 | ☆☆☆☆☆ |
028 | ファウンデーションの彼方へ(下) (銀河帝国興亡史4) |
ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | 美事なる昇華。偉大なる壮大さ。ガイア近辺でトレヴィズ議員の示した決断。銀河の示す意思のぶつかり合いなのだ。 | ☆☆☆☆☆+ |
028 | ファウンデーションの彼方へ(上) (銀河帝国興亡史4) |
ハヤカワ文庫 | アイザック・アシモフ | 岡部宏之 | 初期三部作の続編。ファウンデーションが生まれてから500年が経過していた世界。セルダン計画はまだまだ健在である世界。しかしその余りの適中精度に疑問を投げかけた議員がテルミナス、おっとそれは創元訳だったか、ターミナスの議員に現れたのだったが・・・・・・。そして同時に第二ファウンデーションの一人の発言者も、アンチ・ミュ−ルの存在を意識し始めていたのだった。双方とも、偉大なセルダン計画の前に孤立無援だったが・・・・・・・ファウンデーションの彼方にあるものとは!? そして地球の秘密とは!? 圧倒的な面白さであるこの第四作目。相変わらずミステリーの要素を始めてとして、骨格とも言うべきセルダン計画そのものから展開していく手法は美事しか言いようがないだろう。先が先が・・・、と息つく間もない楽しみ。 | ☆☆☆☆☆ |
027 | ユダの窓 | ハヤカワ文庫 | カーター・ディクスン | 砧一郎 | ヘンリーメリヴェール卿が不可能と思われた殺人事件の弁護を果たす一篇。というのも、被告人は目が覚めた時、密室に死体と同居していたのである。被告人の指紋の付いた矢が被害者に刺さっており、しかも更なる状況証拠は揃いすぎていた。それに被告人を眠らせたと思われた薬入りのウイスキー、痕跡すらもないのだ。密室トリックのユダの窓、なるほど意表を衝かれる盲点だったが、どうもそうなのか、という感じもあり、今一つ大感心とまでは出来かねた。が、法廷ミステリという最初から飽きさせない構成力はさすがと言えるだろう。 | ☆☆☆☆☆− |
018 | 三つの棺 | ハヤカワ文庫 | ジョン・ディクスン・カー | 三田村裕 | フェル博士ものの密室事件などの不可能状況。そして密室講義があるなど興味深い。中盤退屈な部分があるのは仕方がない試練である。解決は美事なのだから。 | ☆☆☆☆+ |
043 | 九尾の猫 | ハヤカワ文庫 | エラリイ・クイーン | 大庭忠男 | 第二次大戦後まもなくのニューヨークを震撼させた連続殺人事件。この《猫》による事件は、首に特徴ある紐が巻き付いている絞殺という以外、関連性も皆無に思われた無差別の恐怖を市民に叩き込み、証拠皆無で手も足も出ない警察機構は無能を罵られた。そこでクイーン父子の登場であるが・・・。精神分析を駆使した恐るべきまでの対決。犯罪の関連性の探索。心理戦。《猫》を巡っての暗部の葛藤の数々。サスペンス性に満ちた本作である(その分本格度は弱い)。 | ☆☆☆☆☆− |
037 | ドルリイ・レーン最後の事件 | ハヤカワ文庫 | エラリイ・クイーン | 宇野利泰 | ドルリー・レーン4部作の最終話。既にネタは聞き及んでいたが、意外な犯人ものである。お馴染みサム元警視の元にやってきた謎の派手な髭をした男。この男曰くの高額な依頼をして去っていった。その後、シェイクスピア本を巡って、事件が紛糾。シェイクスピアの過去に絡んでいく本事件。ペイシェンス・サムを中心にした恋愛や葛藤した推理を含む人間模様には面白い物を感じるが、本格ミステリとしてはどうも粗相な点が目に付くし、道具立ても驚くようなものではない。ただただ意外な犯人を演出するためとしても、それがこの4部作全体の存在にまで問題を投げかけるのはどうも嘆かわしいとしか言えまい。レーンものの逸品については、XとYで終わっていたとしか言いようがないだろう。 | ☆☆☆+ |
036 | 災厄の町 | ハヤカワ文庫 | エラリイ・クイーン | 青田勝 | 架空の町ライツヴィルを舞台にしたシリーズ第一作。クイーン氏は訪れた町で災厄の家と呼ばれる所で下宿することになったが、そこは元々は新婚家庭になっていたはずの家だった。というのも三年前結婚式の日に失踪した花婿ジムがいたためであったが、その花婿が突如戻ってきて、紆余曲折を経つつも花嫁ノーラと今度は本当に結婚し、クイーン氏は余所で移動、元の災厄の家で幸福な結婚生活を送っていたが・・・。そこで発見せられた3通の手紙。そしてそれを実践した毒殺事件・・・。と言うような展開で、ラストの緊迫感は堪らないものがある。全ては解答を差している本格ミステリ。 | ☆☆☆☆+ |
017 | ギリシャ棺の秘密 | ハヤカワ・ミステリ文庫 | エラリイ・クイーン | 宇野利泰 | 国名シリーズ第4弾。エラリーの若き日の事件で展開は二転三転で、難事件の様相だ。ギリシャ人棺の中の死体の謎と、イタリア絵画の謎、これらが絡み合い、意外な真相。おかげで私の下手な推測は失敗に終わったのだった。 | ☆☆☆☆ |
008 | ウッドストック行最終バス | ハヤカワ文庫 | コリン・デクスター | 大庭忠男 | 現代本格作家の処女作でモース警部初登場作品。犯人当て本格ミステリで、黄金期とはひと味違う本格を見せつけられた。サスペンス性にも優れ、何度も構築、再構築を繰り返す推理の過程も面白く、ラストの真相では少々驚いてしまった。 | ☆☆☆☆+ |
006 | 野獣死すべし | ハヤカワ文庫 | ニコラス・ブレイク | 永井 淳 | サスペンス的タッチで描かれた黄金時代の本格ミステリ。 事件は復讐からはじまる。死の様子に猟奇的でおどろおどろしいなど驚くべきものはないが、そのようなものを抜きにしても、興味を離さず、とにかく面白い一編だった |
☆☆☆☆☆− |
005 | 高い窓 | ハヤカワ文庫 | レイモンド・チャンドラー | 清水俊二 | ハードボイルド。この作品は私にはフィットしなかったようだ。 | ☆☆ |
990 | 幻の女 | ハヤカワ文庫 | ウイリアム・アイリッシュ | 稲葉明雄 | これゾ、真のサスペンス、というような展開に引きずり込まれた。意外性と欺瞞にあふれており、一気に読み進めずにはいられなかったほどだ。他人繋がりでしか存在を認識されない人の儚さのようなものも感じられた。う〜ん?ってところをあえて挙げるならば、その「幻」の平凡さか。だからこそ「幻」であり得たのだけどね | ☆☆☆☆☆+ |
99a | 夏への扉 | ハヤカワ文庫 | ロバート・A・ハインライン | 福島正実 | 不完全なタイムマシーンと冷凍睡眠という二つの時間移動方法。腹立たしい状況だった前半部と輝ける後半部の意外な繋がり。時間を超えた見事な繋がりと興味深い点は尽きないようだった。また私的には猫が出てくるのも良い。 | ☆☆☆☆☆ |
99a | 華氏451度 | ハヤカワ文庫NV | レイ・ブラッドベリ | 宇野利泰 | 中盤まではなかなか面白かったが、ラスト終盤が今一つのような気がした。やはりSFと言うより、ファンタジー臭い。 | ☆☆☆ |
99a | 火星年代記 | ハヤカワ文庫NV | レイ・ブラッドベリ | 小笠原豊樹 | ブラックユーモア的な文明批判が素晴らしかった。また一本の時間的物語を下地に短編をつなぎ合わせて、長編を形作るやり方は初見だったので、驚かされた。 | ☆☆☆☆☆ |
オペラ座の怪人 | ハヤカワ文庫 | ガストン・ルルー | 日影丈吉 | ちょっと前にはやってたな。活字で読みと昔の訳のせいか、作品独自のものなのか、妙な表現が多い。 | ☆☆☆☆ | |
027 | 予告殺人 | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 田村隆一 | 新聞広告に突如と載った予告殺人の文面。友人知人達は冗談と思ってパーティのつもりで、その舞台に姿を見せるも、予告時間ピッタリのホールドアップと停電。そして銃弾が三発飛び、強盗が死に、舞台の主人は九死に一生を得た形となった。この予告殺人から始まる連続殺人事件に挑むのが、我等がミス・ジェーン・マープル。この難事件を如何に解いたか!? トリックは既に知られた有名トリックを使っているに過ぎないが、サスペンス性と展開力が美事である。そして魅力ある登場人物達と、深まる謎。本格を堪能出来る作品と言えよう。ちなみに私はと言えば、マープル活躍前に、犯人を推定は出来たが、些か推定材料には乏しかったと言っておこうか。 | ☆☆☆☆☆− |
002 | 杉の柩 | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 恩地三保子 | 本格と言うより、サスペンス的な作品。展開的に必ずしも推理小説に縛られる必要もないと言える。なぜか後書きはなかった。 | ☆☆☆☆ |
そして誰もいなくなった | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 清水利二 | クリスティの中で私の最も好きなのはこの作品だ。 | ☆☆☆☆☆+ | |
複数の時計 | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 橋本福夫 | − | ☆☆☆ | |
ひらいたトランプ | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 加島祥造 | − | ☆☆☆ | |
死者のあやまち | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 田村隆一 | − | ☆☆☆ | |
ポケットにライ麦を | ハヤカワ文庫 | アガサ・クリスティ | 宇野利泰 | − | ☆☆☆☆ |