ハルキ文庫

*** 書籍表題 出版社 筆者 訳者など 一言感想or備考 お勧め度
065 女たちの大和 ハルキ文庫 辺見じゅん 当事者及び戦争遺族の悲劇が伝えるドキュメント。独立した十篇の話から構成されている。大和に関係あるもの二篇であるが、残り8篇も大東亜戦争の悲劇に見舞われた普通の人々・家族達の悲痛の叫びである。いずれにも浮かび上がるのは我々は戦争の実体をもっと知るべきだということである。体験していないから真にはわかりはしないが、想像してみるだけの材料を誰もが記憶に残しておくべきなのだ。戦争は悪だが、その中で家族の幸福を摸索しか生きる道が無かった時代について考えるべきなのだ。それを何もかも中身は軽んじて彼らの生き様を単純に被害者、犬死だとして平和を語るのは大いに間違っているのである。もっと早くに気付くべきだった。しかしこれからは大東亜戦争について多角的に捉えていこうかと考えている。 ☆☆☆☆☆
064 戦艦大和発見 ハルキ文庫 辺見じゅん
原勝洋
戦艦大和が発見された当時のドキュメンタリー。その感激の様子が伝わってくる。また大和についてのエッセイや搭乗員たちの記憶の声も収録。決して忘れてはいけない昭和史である。

それにつけても未だに涙が出る。映画でも出てきたこの矛盾した悲しいセリフ「…おかあさん、どうかわたしのことはけっしてけっしてお忘れ下さい。さようなら、さようなら…」決して忘れはならない。
☆☆☆☆☆
063 男たちの大和 下 ハルキ文庫 辺見じゅん 小説ではなく、生存者たちの証言をもとに、大和の完成から乗組員の戦後を描いたノンフィクションドキュメンタリーもの。

実際の生の証言で構成されているだけに、戦時中の生々しい描写がそこにはある。その重みは計り知れない。きれいごろでは済まない現実がそこにはあったことを刻み込まなければなるまい。戦後編は更に辛い。その精神を抉るような残酷なセリフ。彼らにとって、海軍内の厳しい戒律は戦時真っ只中よりある意味辛い物だったというが、戦後のそれもまたそうなのではないかと思うくらい。まだ全然足りない。もっと理解しないとあまりにも申し訳が立たないんではないか。

映画については、証言者の内田さんのエピソードを軸にして、本ドキュメンタリーを下敷きに小説化したような形になっている。映画には直接的な戦後編はなかったために、ぜひやっていただければ嬉しいところだ。
☆☆☆☆☆
063 男たちの大和 上 ハルキ文庫 辺見じゅん
024 名探偵Z 不可能推理 ハルキノベルス 芦辺拓 乙名探偵こと、すんなり漢字変換出来っこない《名探偵Z》を主人公にした爆笑推理の短篇集。保瀬警部同様、Q市を舞台にしており、保瀬七郎も一話登場するのが面白い。更に少女怪盗Ψには、爆笑を通り過ぎてしまうのだ。とにかく電車など衆人の前では読み得ない、ニヤつかずには読み得ない、思わず声に出して突っ込んでしまう程の展開なのである。 ☆☆☆☆☆−
017 黒衣の聖母 ハルキ文庫 山田風太郎 戦争の悲哀や悲劇の逆の喜劇。「戦艦陸奥」「戦艦呂号99浮上せず」「裸の島」「女の島」「腐爛の神話」「魔島」「黒衣の聖母」収録。現実に似たような悲喜劇があったと思うと戦慄も感じ、滑稽な狂気を感ずるばかり。 ☆☆☆☆+
006 厨子家の悪霊 ハルキ文庫 山田風太郎 中篇『厨子家の悪霊』、短篇『殺人喜劇MW』『旅の獅子舞』『天誅』『眼中の悪魔』『虚像淫楽』『死者の呼び声』を収録。特に面白かったのが、どんでん返しの極とも言える『厨子家の悪霊』で、ラストがホントの真実なのか判断するのも脳味噌が処理できる範囲を越えているとしか言えない。恐るべき探偵小説であった。同じような心理的効果を狙ったと思われる『眼中の悪魔』『虚像淫楽』『死者の呼び声』も引き込まれるほど面白かった。 ☆☆☆☆☆
004 人形はなぜ殺される ハルキ文庫 高木彬光 神津恭介活躍の長編本格推理。
題名の通り、人形が殺される理由が最大のミステリである。私は第2の事件、半分くらい読んだところで犯人の名前とその第2の事件のトリックはわかった。しかし残りの部分は完破できなかった。やはり完全解決は難しい。
☆☆☆☆☆
990 刺青殺人事件 ハルキ文庫 高木彬光 高木彬光が乱歩に送り、絶賛されたレビュー作。神津恭介シリーズの走りでもある。日本探偵小説史上で密室を使った走りとも言える重要作品であり、ことに心理の密室には愕然した。アリバイ崩しには首をひねるような内容だが、大東亜戦争終戦直後に作られた作品と考えると、マイナスにもならないか。 ☆☆☆☆☆−
99b 遠野殺人事件 ハルキ文庫 内田康夫 フィルムのトリックには驚かされたが、全体はとみると何かしっくりこないような気がした。 ☆☆☆