《第7話 「真の居場所」》のネタバレ感想


出典:(コミックバンチ2004年32号(7月23日号(実際は7月9日発売日)))


今回の話は、ヤヤ頂けなかった。人間椅子の男が、人間界に出てきて、主の結局、再び椅子に戻りたいというのは、それは普通の恋なのではないのか? 人間椅子としての人外の恋にスポットライトを当てるには些か弱い。
さて、レビュー。

恋人の佳子が桐畑工房へ行ったことを知った野上。というのも例の番頭が野上商店に帰ってきて喋ったからだが、この番頭も立場上、更に事情を知らぬだけに言いにくそうな雰囲気である。だが、野上が思うは佳子の当てつけがましさのみ。

一方、桐畑工房では、桐畑と佳子の話が弾む弾む。桐畑は佳子のために作った安楽椅子の座り心地を強調するために、あの手この手とアプローチ。佳子も座り心地の良い椅子の構造や名工の手について興味を持ったものだから、ついに桐畑に握手を求めるまでに至る。

桐畑は佳子の手を感じながら思う。切れない小刀のために痛めている手。野上を刺しそうになった忌まわしき小刀はもはや提供できないが、刃物の切れ味を維持する効果があるという油紙を佳子に差し出すことに。もちろん無理のありそうながら自然な理由と同時にだ。
佳子はそんな桐畑の優しさに感銘を受けてしまう。桐畑も照れ隠しのような顔。端から見ると、なかなか良い雰囲気だ。

そこへ野上がやって来る。野上は佳子を送り迎えにきたのだ。そして桐畑には、専門家具デザイナーとしての、とても素晴らしいオファーを用意してきていたのだ。小さな工房主に対しての、その夢のような話に、飛びついてくるものだと期待していたのだ。しかし桐畑は保留の返事、これには野上もその意外な冷めた返事に驚きつつも、まだまだそれを体裁ぶったと判断していた。しかし人間椅子を知ってしまった桐畑には、高級家具を作ることには魅力を感じ得なくなっていたのが真実だった。桐畑は自信の安楽椅子に体を投げ出すようにして、本話は終了した。ちなみに佳子は野上の自動車で帰っていった。

《名工のカタルシス》TOPへ前話へ次話へ「乱歩の世界」TOPへ