山下利三郎[やました・りざぶろう]

【頭の悪い男】(2001/11/9)
山下利三郎の短篇で、乱歩「二銭銅貨」と並んで、「新青年」大正12年5月号に載ったもの。大乱歩に比すと涙が出るほどヘッポコ作である。見知らぬ男に知人と勘違いされた主人公はその男を盗人だと思い込み、自分を刑事だと勘違いしているな、と推理した。それが悲劇の始まりで、大体頭の悪いのになまじその自分の推理に感じ入ったために、小心の悲しさで懐の大金をパーに、何という愚か。きっと絶望の淵だ。でもそれなりには笑える事をつけ加えておこう。なお現在、春陽堂「創作探偵小説選集1」で読める。


【誘拐者】(2003/9/25)
「新趣味」大正11年12月号発表の山下利三郎処女作。娘を誘拐した旨の脅迫状が届いたのだが、その文面と表沙汰にしたくない心理が重なって、警察には知らせずに私立探偵に依頼した。しかし私立探偵は相手先に出向こうとはせずに、娘の部屋を調査したり、宅地の値を調べたり、生徒手帳を調べるというトンチンカンらしきことをやってのける。さて、その真意とは!? 大した事ないのは言うまでもないが、推理形式を採っており、この時代の処女作としては充分なものである。なお現在光文社文庫「『新趣味』傑作選」で読める。


山本禾太郎[やまもと・のぎたろう]

【窓】(2001/11/19)
山本禾太郎・懸賞当選の処女作で「新青年」大正15年6月号に載った。複数の影が現れた後に残ったものは死体が一つだった。容疑者・関係者達の聴取書や被害者の鑑定書など様々な報告書から構成された実務に沿った特異とも言える探偵小説で、それらからデーターが拾われて解決に至るという物である。しかし恋愛も絡む様々な矛盾した供述や思惑などが噴出したために五里霧中に落ち込んだこの難事件も意外な窓の眼は逃れえなかったのであった。なお現在、立風書房「ミステリーの愉しみ3 パズルの王国」で読める。

【龍吐水の箱】(2002/1/20)
山本禾太郎、「新青年」昭和4年3月号発表。囚人と看守による回想形式で面白い味な逸品。久山秀吉こと隼の秀は独房で更に目に余る乱暴者だったが、隣の独房に来たりし美しき囚人を境に従順になっていく。この犠牲的同性愛心理。そして誰にも優しき看守に対して巻き起る悪魔世界の猛烈な嫉妬。この嫉妬が龍吐水の箱で復讐を生みだしたのだ。しかしその奸計から看守は救われた。その意外性。隼の秀は完全なる敗北を喫したのだ。様々な秀要素が混じった一流の面白さ! なぜ単行本に採用されないのか、それこそ謎である。

【閉鎖を命ぜられた妖怪館】(2003/9/25)
山本禾太郎、「新青年」昭和2年4月号掲載の短篇。妖怪館を好む主人公は弁護士業。それが人の山を嫌い、夜一人で妖怪館に行くと、卒倒者が発生し、それが後に大いに関係して来るという展開。妖怪館は閉鎖の憂き目を見るが、その後、主人公、デパートからの身投者が通行人を圧殺するという事件に絡み、大いに苦しめられるが、恐るべき藁人形の呪いは、大いなる天啓となったのである。大した物とも思えぬが、なお現在、角川文庫の新青年傑作選「君らの狂気で死を孕ませよ」等で読む事が可能だ。


夢野久作[ゆめの・きゅうさく]

【犬神博士】(2002/2/18)
夢野久作、「福岡日日新聞」昭和6年9月から翌年1月まで連載した長篇。犬神博士の幼少年期が描かれている。不思議な才能を発揮するその七歳のチイ少年は当初両親らしき人達とそれはもう酷い生活をしていたが、ひょんな事から禿茶瓶知事やら玄洋社の人達やらに対し強い関心力のような物を持つようになるが…。福岡市から直方市を舞台しヘンテコな展開を魅せる本篇、チイ少年が振りまく正直的な魅力の前につい目が離せなくなるのである。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集5」等で読む事が出来る。

【難船小僧】(2002/4/14)
夢野久作、「新青年」昭和9年3月号発表の短篇。S・O・S・BOYと読む。これも理を越えた変格物。難船小僧、それはこの小僧が乗った船と言う船が全て難船沈没の憂き目を見る事から付けられた悪夢のあだ名、しかもその都度救助されるのである。今、主人公の乗る船にも難船小僧が乗り込んでいた。しかもそれは船長の贔屓によるものだったのだ。その恐るべき真意と言う点では本格物とも言えない事はないだろう。さて、難船小僧の呪いの恐ろしさとは如何なる物だったか!? なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読める。

【ココナットの実】(2002/11/23)
夢野久作、「新青年」昭和6年4月号発表短篇。疑問の美少女エラ子の関連記事は新聞に現れていた。党による犯罪ではないという財界の実力者の粉砕殺事件。しかも裸形の運命の神様の信心者の殺害死体があったのである。エラ子は滅茶苦茶な新聞記事を読んで愉快で仕方がなかったのだ。しかも誰もその若返りのお姫様に気が付きはしないゆえの悪戯心の置き手紙。ココナットの実、それは恐るべき威力なのだ、そのオモチャは大いに活躍を示してくれる。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能である。

【死後の恋】(2002/6/2)
夢野久作、「新青年」昭和3年10月号に掲載の短篇。死後の恋、それは何という意思の力だったことか。それともこの物語は狂人の戯れ言なのか。主人公のロシア人は語り始めた。それによると、主人公が巻き込まれた白軍の一仲間はロマノフ王家にも繋がっているというのだ。それを表す珠玉の宝石多数。聞かされた話。そして混乱の中その後判明した死後の恋とはどのようなものだったか!? 何という悲しい物語だった事か、面白さ抜群の短篇である。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能である。お奨めだ。

【木魂】(2001/10/28)
夢野久作の作品で、昭和9年5月号の「ぷろふいる」で発表短篇。「すだま」と読む。小学校数学教諭を主人公にしたこのストーリーは、あまりにも哀しきものを感じさせる。少年時代から。突如脳髄に響き渡る声・木魂が聞こえていた主人公。彼は鉄道線路を歩く悪習慣を止められぬばかりに大事なものを失う悲劇に繋がってしまう。その絶望的な悲哀さの前に幻をも望む。あと、現在にも全く通じる教育法への糾弾も少し興味深いだろう。なお、現在、ちくま文庫「夢野久作全集 8」等で読む事が可能だ。

【戦場】(2002/9/22)
夢野久作、「改造」昭和11年5月号に遺作として掲載された短篇。久作の戦争観を如実に表した反戦小説だ。ドイツ軍を舞台に、残虐が繰り広げられる。国の為、民族の為、というスローガンに下には隠された自己の為金の為がちらつくではないか。軍事医者の主人公は悲惨時を体感し、別の軍事医者は探偵行為をしていたというのか!? 恐るべき戦争の意味を考えさせるではないか。そこには愛国心だけがあったのだろうか!? それとも…。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能である。

【鉄槌】(2002/10/22)
夢野久作、「新青年」昭和4年7月号掲載の短篇。父親に叔父は悪魔だと育てられた主人公。それが父の自殺で、幸か不幸かその悪魔の世話になる事になるのだが、そこは相場の世界、毒々しい空気ばかりなのだ。そこに現れたる叔父の姪という女。これがまた波乱の元になるのである。鉄槌行進曲は悪魔を欲していたが、果たして鉄槌で頭をポカッと潰されるべき悪魔は誰であったろうか。そしてその悪行の限りとは!? なお現在、角川ホラー文庫の新青年傑作選「ひとりで夜読むな」で読む事が可能だ。

【一足お先に】(2003/11/17)
夢野久作、「文学時代」昭和6年2月〜4月号発表の中篇探偵小説。夢、夢野久作に与えると、いかにも怪夢に化けてしまう典型。足を失った主人公は、病院同室の男から奇妙にも恐ろしい話を聞かされる。足の夢を見るというのだ。感覚がまるで生きているが如く、そして感覚が暴走するが如く。そのテーマは夢遊病にまで展開し、見ていた夢と現実との境目が至極曖昧模糊となる。病院に突如としてやってきた後家さん。副院長となりやら関係と言う噂も、しかし入れ子の夢から覚めた主人公は、何を思うやキチガイの夢。

【人の顔】(2002/12/24)
夢野久作、「新青年」昭和3年3月号発表の短篇探偵小説。何の事やら分からぬ小さな女の子の癖が最後に絶大な効果を導き出し真実を暴いてしまうとは。それは聞く側にとればあまりにも残酷だったかも知れない。色んな物を人の顔に擬人表現的に見てしまう女の子、その癖は仲の良い義母と活動写真に出かけた時から出始めていた。母親はなぜかそれを嫌い、女の子との仲も冷めつつあったのだが…。なお現在、角川ホラー文庫「爬虫館事件(新青年傑作選)」等で読む事が可能だ。

【瓶詰の地獄】(2001/12/10)
夢野久作が「猟奇」昭和3年10月号発表の傑作短篇。瓶詰の地獄、それは神が与えた物にしてはあまりにも残酷すぎた。三本の麦酒瓶から見つかった手記。そこに書かれた内容の地獄の哀しさ。そして数行で構成された最後の瓶によってその意味を完全に悟らされた時、あまりもの悪魔の戦慄にタラタラ汗を流すのみなのだ。無人島に流され、十年程生活をしていた狂妄の男女二人はなぜ救いの船を目前に崖から飛び降りなければならなかったのか。その罪の狂気とは!? なお現在、創元推理文庫「夢野久作集」等で読める。

【焦点を合せる】(2002/7/6)
夢野久作、「文学時代」昭和7年4月号発表の短篇探偵小説。焦点はフオカスと読む。焦点を合わせた時、謎の暗雲に包まれていた事件の内面が見えたのだ。焦点が合わないとどうもいけない。ある国際船上でストーリーは展開。一人称だ。それで機関長らしき男が語り続けるのである。案内された客は機関室。そこで機関長の満点試験の話や速力アップの失敗談などを聞かされるのだが、そこにはある企みが内包していたのである。その企てとは!? なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能だ。

【幽霊と推進機】(2002/8/22)
夢野久作、「新青年」昭和7年10月号発表の短篇探偵小説。主人公が、水夫長を基に胡散臭い船に乗り込んだ事が怪体験の根本だった。水夫長が嫌っていた二人の水夫がチブスにかかったのだ。そして船尾で物理的に死亡しているのが発見された。その後確かに海に水葬にしたのだが、謎々な事件が起きるのだ。水夫長の廻りに二人の幽霊が現れ、そして水夫長はチブスになるという怪事件。目撃者多数のこの幽霊の怪奇。本篇はまさに面白い怪談と言えるだろう。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能だ。

【超人鬚野博士】(2003/9/25)
夢野久作、「講談雑誌」昭和10年6月号から11月号まで連載した中篇。鬚野博士の十四歳という少年期から現在の状況を描いた物で、「犬神博士」の生まれ変わり、或いは直系の作品だと云う事が出来るだろう。不幸を巻き起こす鬚野博士、犬を捕らえて医学士等に提供する世のため人のためになる事業であると自負している博士製造業を手がけているのだ。これがまた不幸の連鎖を生んだと思いきや意外な結末を迎えることになったのである。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集5」等で読む事が出来る。

【人間腸詰】(2003/9/25)
夢野久作、「新青年」昭和11年3月号発表の短篇。腸詰はそうせいじと読む。世界が丸いお陰で腸詰になり損なった話である。舞台は桑港、フラフラと女につられて付いていった主人公は腸詰になりかかったのである。というのも、そこの一団、主人公に仕掛けある箱を制作せよ、と云うのだ。何も知らずに反抗する主人公だったが、何という危機だったか、何という恐怖。肉挽機械に落とされたら、もはや最後だったのだ。そして後日談も恐怖。なお現在、ちくま文庫「夢野久作全集6」で読む事が可能だ。


横溝正史[よこみぞ・せいし]

【恐ろしき四月馬鹿】(2002/10/24)
横溝正史の処女作で、「新青年」大正10年4月号掲載された短篇。恐ろしきエイプリルフール、それはまさに裏の裏をついた恐ろしさだ。深夜に怪しい動きをしている所を目撃され、しかも翌朝に持ち上がった殺人事件。死体はないが部屋が恐ろしく荒らされているのだ。そして血…。中学の寮を舞台にした事件。四月馬鹿の遊戯のつもりが悪夢に悩まされてしまうと言う死体の発見の報。これは何かの罠だというのだろうか!? なお現在、気軽に読める本はないと思われる。

【鬼火】(2001/11/2)
「新青年」昭和10年2月3月に分載した横溝正史・才能の結晶。中篇の怪奇幻想小説である。まさに絶品であり、背後に流れるようなこの耽美溢れる美文には感激すら覚える。少年時代から陰惨なまでに相争う従兄弟同士、悪意満ちた陥穽を巡り合い、その結果の悪夢は、二人を抜き差しならぬまでに包み込み、そして底無しの地獄へ沈んでいく…。一枚の人獣相克の絵、その悪寒をも誘うような不可思議な絵から引き出された物語こそ、野獣の慟哭、揺さぶる病んだ魂の合作なのだ。なお、現在ちくま文庫「横溝正史集」で読む事が出来る。

【面影双紙】(2002/2/2)
横溝正史が「新青年」昭和8年1月号に発表した短篇。R・Oなる奇怪な人物が語る恐るべき話。母親は小町と呼ばれる程でありお嬢さま、そして手代の朴念仁の父親と結婚し生まれたのがR・O。その父親は商売繁盛には大いなる活躍を示すも…、妻を構い切る事は出来なかった…。さて、そこに役者が登場したのだが、主人公は一体何を感じたか!? そして母親の怖がる骨の人体模型の示す悪魔の復讐……。横正・耽美の嚆矢的作品で圧巻を最後まで感じさせるこの探偵小説! なお、現在ちくま文庫「横溝正史集」等で読む事が出来る。

【かいやぐら物語 】(2002/5/13)
横溝正史、「新青年」昭和11年1月号発表短篇。これも横正の耽美的代表作である。病気療養に来た主人公は奇譚を聞かされるのだ。死の影も恐れなければなならない療養者に語り手の美女は教訓を残して昇天する。まさに美事。浜辺の笛の音は貝殻の音響、その時点から既に主人公は幽玄界にさまよい出ていたのか、はては月光の魔術だったのか!? 主人公はその美しさに誘われるまま。そして若い男女の果てはあの虫の如く…だったのだ。なお現在、ちくま文庫「横溝正史集」等で読む事が可能である。

【首吊り三代記】(2002/7/3)
横溝正史、「探偵」昭和6年5月号発表短篇。忌むべき妄想。それを意識しだした時、主人公に残された運命は決定されていたのかも知れなかった。祖父と親父が首吊りで死亡しているという事実。不断の彼ならこのような事を気にするものではなかったが、妻の死等精神的に神経衰弱に陥っていた時に更に刺激的な新聞記事を目にしてしまい、とうとう悪魔は囁いてしまったのだ。悪い時には重なる物で、彼が上がる階段はまさに首吊りへ一直線だったのだろうか。なお、現在光文社文庫「『探偵』傑作選」で読む事が出来る。

【蔵の中】(2001/12/03)
横溝正史、「新青年」昭和10年8月号発表短篇。編集者の元に届いた小説原稿、それは現実と夢の境に描かれた耽美溢れる世界だった。蔵の中で美の世界を見出していた肺病患者の作者は編集者の内情を知り抜いていたのだ。と言うのも、蔵の悪魔遊戯を教えた聾唖の姉、彼女は死んだが、その残留副産物としては病気や趣向だけでなかった。読唇術。これが望遠鏡と結びついた時、妄想と幻想にも満ちた精神異常の物語が醸し出されたのである。まさにその効果、美事なる、だ。なお現在、ちくま文庫「横溝正史集」等で読める。

【建築家の死】(2003/9/25)
「探偵クラブ」昭和8年3月号掲載された、横溝正史の掌編。まさにコントに相応しい馬鹿馬鹿しいまでの真相。ある変わり者の建築家が建てたという奇妙過ぎる建築物。そこからすすり泣きの声が聞こえたという。入り口すらも見つけるのが困難すぎるという恐るべき建築物であり、すすり泣く建築家の元に辿り着くのは至難の業。何というナンセンスだろう。建築家がすすり泣いていた馬鹿馬鹿しき原因とは一体なんだと思います!? なお、現在光文社文庫「『探偵クラブ』傑作選」で読む事が出来る。

【三十の顔を持った男】(2003/9/25)
横溝正史、「新青年」昭和12年5月号発表の通俗短篇。帝都二大新聞は激しく相競い争っていたのだが、そんな中、一方の新聞社が考案したのが、人間カメレオン鮫島勘太による懸賞企画であり、その三十の顔を持った男を見つけだすという企画を立てたのだった。しかしその勘太が殺されるに及んで事件はややこしくなってくるのだ。更には誘拐事件の発生。思いっきり通俗的な筋であるし、話も大したものではない。なお現在、恐らくは読める本は無いと思われる。

【白蝋変化】(2003/9/25)
横溝正史、「講談倶楽部」昭和11年4月号から12月号まで連載の長篇。由利先生・三津木俊助シリーズ。死刑囚となった恋人を救わんと月代は作戦するも、よりも間違え、世紀の好色魔・白蝋三郎を救い出してしまう。その白蝋三郎を牢へ繋いだ異常な女がいるが、これの家牢に閉じこめられていた謎の美少年、狂的に月代を狙う医学博士なども登場し、まさに適当滅茶苦茶に掻き回していく。この訳分からない事件の真相は先を行く素晴らしさであったが、義漢、悪漢と執着との皮肉が心憎い作品にもなっている。

【焙烙の刑】(2003/9/25)
横溝正史、昭和12年1月の「サンデー毎日」に掲載短篇。由利先生、三津木俊助物である。映画俳優の主人公は顔馴染みの夫人に同情していた。と言うのもその夫が異常性格者であるからである。そしてその夫からと言う奇妙な手紙を受け取った主人公。そしてその奇怪な言いつけを守ると、たどり着いた場所ではその夫が脅迫の下に囚われていたのだが…、さて。この物語に潜む恐るべき嫉妬の炎の脅威とは!? なお現在読める本は、残念ながら無いと思われる。

【花髑髏】(2003/9/25)
横溝正史、「冨士」昭和12年6月増刊と7月号に分載の中篇。由利先生、三津木俊助物である。由利先生の元にやって来たるは挑戦状とも助けを求める手紙とも取れる怪奇な日時場所を指定した手紙。由利先生もこの迫力の前に出かける事にしたが、そこで遭遇する事になる悪夢の長持荷車、その中には妙齢の美女が入っているという奇怪。登場するは復讐、さて、この稀代の復讐鬼の物語は花髑髏が血を吸い取るかの如くなのだが、由利先生らの活躍は!? なお現在読める本は、残念ながら無いと思われる。


米田三星[よねだ・さんせい]

【告げ口心臓】(2003/9/25)
米田三星、「新青年」昭和6年9月号掲載の短篇。手紙形式で語られる本篇は、世界がグルリと展開する面白さを有している。盲目の友人が見た事から示されるに至った告げ口心臓、心臓は語ったのである。皮膚科権威の博士とある女に纏わる過去の秘密、それはあまりにも友人をも追いつめる恐るべき秘密。怨みは遙か次元を越えて、全ての事実を全面にさらけ出すというのだろうか!? それとも…。なお現在、角川ホラー文庫の新青年傑作選「ひとりで夜読むな」で読む事が可能だ。