西尾正[にしお・ただし]

【骸骨】(2001/11/11)
西尾正、「新青年」昭和9年11月に発表短篇。嵐の夜に暗海に昇天する骸骨の男! そこには如何なる決意があったというのだろうか。本作は作中で伏名ながらも梶井基次郎の傑作「Kの昇天」を引用するほどで、その姉妹編と言っても言い過ぎではないかも知れない。それほどの西尾正の美事なる怪奇の結晶なのだ。女に魂を救われた男は、結局、悦楽の果てに滅びていったのである。なお、現在、ハルキ文庫の「怪奇探偵小説集1」等で読む事が可能だ。
(修正:デビュー作と初版では書いたが、これは大間違い。それは『ぷろふいる』発表の「陳情書」である。)


延原謙[のぶはら・けん]

【氷を砕く】(2002/5/27)
延原謙、「新青年」昭和7年6月号発表の短篇。泥棒は入り込んだ家で死体を発見するという怪事件に出くわしてしまう。更には無気味なまでの氷を砕く音。看病にでも使うつもりだというのだろうか。多くの証言と展開から露見を余儀なくされたこの復讐事件。辛苦を分かち合った友人も、恋愛が絡むと悲惨だったのである。もっとも大した効果を上げているとも思えない作品だが、なお現在、光文社文庫「新青年傑作選」等で読む事が可能である。


野村胡堂[のむら・こどう]

【音波の殺人】(2002/5/27)
野村胡堂、「新青年」昭和11年12月号発表の本格科学探偵小説。人気歌手の女が銃殺された。しかし奇怪な事は、その女は科学者の夫と別居中であったにも関わらず、その夫が殺人音波で殺害したと訳の分からないことを言い出したのである。夫にはアリバイがあるし、他にも多く有力な嫌疑者がいるのでそれは狂人の戯言とされたのだが……、果たして音波の殺人のその真意はいったい如何なるものだったか!? なお現在、読める本は無いのではないかと思われる。